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精霊王の加護を受けし者  作者: 柊馨
渡り人 リョク ヤクモ
14/25

第十一話 三人娘

幕間を読んでからのほうがいいかと思われる話になります。

「ごちそうさまでした」


 身体強化の術を覚えた翌日の朝、久しぶりにまともに食事をとった気がする。なんか本当に食べなくても平気になっているな。どういうことなんだろうか。


「さて、今日は買い物に行こうかな」


 その前にギルドに寄ってみて、ライラがいるかどうか確認してからにしようか。もしいて、時間があるようであれば付き合ってもらいたい。俺じゃわからないことばっかりだし。


「あ、リョクさん! おはようございます! リョクさんも朝ご飯ですか?」


 と思ったら宿でライラに声をかけられた。そういえば同じ宿だったことを忘れていたな。


「おはようライラ。今さっき食べ終わったところだよ」


「そうですか。わたしはこれから食べるところなんですが、リョクさんはこれからギルドですか?」


 そのつもりではあったけど、ギルドへ行く目的はライラがいるかどうかの確認だけだったからな。


「いや、今日は装備とかを買いに行こうかと思ったんだけどさ。何も知らないから、ライラが良ければ付き合ってほしいと思うんだけど……どうかな?」


「えっと、本当であればぜひご一緒したいところなんですけど。この後パーティーメンバーで集まって依頼を受ける約束になってまして。でもそこで聞いてみますね! もしご一緒できなくても、仲間たちも紹介したいですし!」


 やっぱりいきなりは難しいか。無理だって確定したわけじゃないけど、厳しいよな。パーティーメンバー……そりゃ一人でやってるわけじゃないか。ただでさえ知り合いは全然いないんだし、大歓迎だな。


「あぁ、そういうことなら頼むよ。とりあえず俺はここで飲み物でも飲みながら待ってるからさ、食べ終わって、行けるようになったら声をかけてもらってもいい?」


「わかりました! 大急ぎで食べちゃいます!」


「いやいや! ゆっくりでいいから! 急がないから無理しなくてもいいって!」


 なぜか突然急ごうとしたライラを止める。急いで食べたら身体に悪いし、気を利かせちゃうのもな……


「そうですか? では食べ終わりましたら声かけますね!」


 とりあえずゆっくり食べてもらうとして……俺は俺で飲み物を頼み、少しゆっくりしている。ここは料理だけじゃなく、飲み物も美味いなぁ。


「お待たせしました! それじゃあ行きましょう!」


 そうこうしているうちにおそらく数十分くらいたったかな。ライラも準備ができたようで声をかけられた。


「あぁそれじゃ頼むよ」


 そしてライラと一緒にギルドに向かう。ライラのパーティーメンバーはほかに二人で、二人とも女性らしい。


 女性だけだと危なくないのかとも思うけど、この世界では男でも女でも強い人は強いし、そういった差別等はないらしい。


 ギルドに入る。うん、いつも通り。まぁ数日で何かが変わるわけないか。


「お、ライラー! やっときたかー、遅いぞー? ってさらに男連れかよー! 見せつけてるのか?」


「……なんと、独り身には辛い」


「だ、か、らー! そんなんじゃないって何回言ったらわかるの!」


 入ったらすぐに、二人の女性にライラが話しかけられていた。ははっ、元気な()たちだなぁ。それにしても、話だけ聞くと俺がライラの恋人だとでも思われているのかな? いや、冗談で言ってるだけっぽな。


「二人とも! この人が話してた渡り人のリョクさん!」


 そういえば二人に対しては敬語とかじゃなく、普通に話しているんだな。あとで俺に対しても普通でいいって言っておくかな?


「おーおー、あんたが噂のリョクさんか。あたしは短剣使いのクリス。一応このパーティーのリーダーってことになってるんだ、よろしくね!」


 先に挨拶してくれたのは腰に二本の短剣を差した女性。身長はライラより高い、というか俺と同じくらいかな。うん、ショートカットの髪が、なんか活発そうなイメージを抱くけど、言葉遣いもそれっぽいや。


「……ボクはノエル、弓使い。まだ十二歳だけど、冒険者」


 次に挨拶をしてくれたのは弓を抱えてる小さい女の子。十二歳……それでも冒険者になる人もいるのか。こっちはなんか大人しそうな感じのする子だな。……弓使いなのに矢を持っていないのはなんだ?


「クリスさんに、ノエルちゃんね。俺はリョク。なんか渡り人なんかっていうよくわからない存在で、冒険者駆け出しやってるよ。よろしく」


 俺も挨拶を済ませる。短剣、弓、魔術か。普通の剣士とかはいないんだなー。


「お、リョクさんってばあたしにさん付けはいらないよ? あたしもリョクって呼ばせてもらうことにしようと思ってるしね!」


「そうか? じゃあクリスって呼ぶよ。あとさ、ライラも俺に敬語いらないよ? もちろんノエルちゃんもね」


 クリスにそう言われて、丁度よかったのでライラにもそう言っておく。


「わ、わたしはなんか癖になってしまっていまして……とりあえずこのままでいいですか?」


「……ボクはもともと使ってない」


 ライラにはそう言われてしまったが、ノエルちゃんの言葉には思わず苦笑した。そういえばそうかも。でも最初の挨拶だけじゃわからないって。


「ライラがいいならそれでもいいけど……あ、俺がライラと一緒にギルドに来た理由なんだけどさ」


 このまま話しているとそれだけで時間が過ぎてしまいそうな気がしたので、話を先に進める。


「お、なんだい?」


「俺はまだこの世界に来てから日が浅くってさ。とりあえず装備もまともに整えていないから、ライラに買い物に付き合ってもらおうと思ったんだよ」


 じゃなきゃ何を買っていいかわからないし、変なものを買ってしまいそうだし。


「なーる。だけどあたしたちとの約束があったから一緒に来て確認しに来たってところかー。別にこっちはいいよ? 急ぎやしないし。というかむしろあたしたちも一緒に行くかな?」


 ……あれ、なんか断られるかと思っていたけど、すんなり了承されたぞ。


「……ライラだけだと、変なものまで買いそう、だし」


「ノエルちゃん!? わたしそんな変なもの買ったことないよね!?」


「……冗談」


 楽しそうだなぁ。やっぱり仲間っていうのはいいもんだな。女性同士ってのもあるんだろうけど。


「ま、デートの邪魔をしちゃうことになっちゃうけどね!」


「クリス! なんであなたはまたそういうこと言うの!」


 二人で出かけただけでデートになるものなんだろうか? よくわからないけど、クリスはそういった話が大好きみたいだな。女の子ってのはやっぱりそういうものなのかな。


「あはは! ごめんごめん! ついからかいたくなっちゃってさ! とりあえず依頼は後回しにして買い物に行こうよ」


「もうっ! 本当にクリスってば!」


「……れっつ、ごー」


「よろしく頼むよ」


 若干三人の……主に二人の元気に押されながらもギルドを後にした。

というわけで、幕間で登場したお二人が参加しました。ボクっ娘が大好物です。

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