これはあなたの罪です
ごめんなさい。
もうやめてください。
ゆるしてください。
わたしがわるかったです。
「他にレパートリーはないの?」
ごめんなさい。
「ごめんなさいじゃなくて聞いてるの」
聖女と呼ばれた一人の女性は問いを重ねる。
「他に表現の方法はないの? あなたは誰よりも人の苦しみを見てきたでしょう? もちろん、人の命乞いだって」
問いかけられている相手は最早、命の形をしていない。
それでも奇妙なことにそれは生きていた。
これもまた聖女の奇跡の成せる技か。
「ねえ、覚えてる?」
聖女はそう言って命に近いものに語りかける。
「あなた。私に言ったわよね。もっと真剣に、心から謝れって」
聖女が見ているのは命ではない。
過去の光景だ。
平和に暮らしていた頃。
突如現れた王宮の使者。
聖女への召喚命令だと使者は語った。
彼女は丁寧に断った。
彼女は聖女ではあったが、既に一人の女性として生きていたから。
拒絶を受けた王は彼女の村を焼いた。
謝罪を続ける彼女に突きつけたのだ。
『これはお前の罪だ』
王の理論は実に単純で即ち召喚に応じていたならば村は焼かれなかったと言うわけだ。
たったそれだけだ。
それだけで聖女を縛った。
全て、聖女さえも自らに仕えるという事実のために。
あれから数年。
聖女は今日も命の世話をする。
死んでいるはずなのに生きている奇妙な命の世話を。
「明日までに別の言葉を考えておいてね」
階段を登りながら聖女は表情を丁寧に変えた。
突如失踪した王の行方を探す責任者への顔へと。




