表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

第8話 新人騎士リーバンスは、二年で身長が三十センチ伸びた。

「半人前ですが、足を引っ張らないように勉強させていただきます。」


 銀髪の見習い騎士は、少し俯きがちに挨拶した。アリストラと離され、心細いのだろう。人見知りが再発したようだ。


 リーバンスは、変わらない姿にホッとした。


 すでにガックリと肩を落とし、青白かった彼女の顔は、半日後にはさらに生気を失っていた。


「うう……。」


 騎士団の屈強な男たちに埋もれながら、走り込みと、素振り、打ち合いを終えたリリアーナは、訓練場の隅で膝をついて、吐き気に耐えているようだった。


 手も足もがくがくと震え、生まれたての子鹿のようだ。


「初日に第一騎士団の訓練についてこられるとは、さすがですね。午後からは、王城周辺の見廻りです。」


 さあ、馬を選びに行きましょうと手を差し伸べると、彼女は顔を上げ、自信なさげに言葉を発した。


「リーバンス?」


「忘れられたのかと思ったよ。」


 パァっと表情が明るくなった。顔つきは大人っぽくなったが、笑った顔は、あの時のままだった。


 第二騎士団は、討伐や戦争に出るため、王都ではあまり姿を見ない。知り合いに会うとは思わなかっただろう。


「あの後、見習いから騎士になりました。王城の警備に志願し、第一騎士団におります。」


 会うのは、ドラゴン討伐の旅以来二年ぶりだった。

 

「ステキな騎士様になりましたね。」


「リリアーナ嬢も、美しくなられて。」


「四つん這いでえずいていた女にそう言えるとは、騎士道精神もバッチリだね。」


 リリアーナはヨロヨロと歩き出し、話をするうちに顔色を取り戻し始めた。揺れる銀髪を見ると、二年前を思い出す。


「二人は、王子の元にいるのかと思っていたよ。」


 王子とは、エルネンのことではなく、トラッド王国のカイン王子のことだ。


 討伐までの山中、リリアーナとアリストラ、カイン王子と四人でよくいっしょに行動した。歳が近く、すぐに仲良くなった。


 短い間だったが、楽しい日々だった。


「さあ、あれ以来会っていないな。私たちは、ずっと戦場に駆り出されていて。」


 彼女は、首についている鎖を触って言った。


「ここよりずっと西にいたんだよ。やっと帰ってきたと思えば……。そっか、この国はトラッド王国に近いんだね。」


 この大陸には小さな国が多く存在し、そこかしこで戦争が起きている。中でもこの国、ハイラル王国と、トラッド王国は、領土合戦で国を大きくし続けていた。


「カイン王子の武勇は、この国にいても耳にするけれど。」


 負けのない黒い甲冑の王子は、戦場で恐れられていた。


「トラッド王国はまだこの国の友好国だから、エルネン王子の側にいれば、いずれまた会うことができるかもしれないね。」


 しかしどうだろう。戦争だらけのこの大陸で、その関係はいつまで続くのか。


「それは良いね。カイン王子にも、会いたいな。」


 彼女は明るく、無邪気に言った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ