第6話 騎士団長エドワルドは、若い二人をスカウトしたい。
「君たちにはこれから三年間、王国の第二王子であるエルネン-ハイラル様の護衛を務めてもらうよ。」
オズワルドの言葉に、二人は呆気に取られポカンと口を開けた。
魔女の城から王城へ、二人を連れて帰る道中だった。
目の前に並んで座る二人とも、馬車は乗り慣れないのか、ソワソワと居心地が悪そうだった。
クレマチスは、外を馬で並走していた。窓から、いじめるんじゃないぞとでも言いたげな顔でこちらを見ている。
それを無視して、シャッとカーテンを閉めた。
足場が悪いのか、アリストラの黒い癖毛がフワフワと、リリアーナの銀髪はサラサラと、ガッタガッタという音と共に揺れていた。
(白黒コンビ……。フフッ。)
「荷物があると思って、馬車を用意したのに。」
荷物は、トランクひとつだけだった。
「三年も離れると、思っていなかったもので。」
何から質問していいか分からないのだろう。二人はちらちらと、目配せをし合っていた。
銀髪の方が、おずおずと口を開く。長い前髪で目が合っているのか分からない。
「王国には、直属の騎士団がいるはずでは?護衛などは、国に忠誠を誓った者の方が。」
信用できるはずだと言いたいのだろう。わざとらしく、ため息をついてみせた。
「それが、エルネン王子にも幼少から護衛騎士がいたのだけれど、二年ほど前に裏切られてね。」
「「ええ…。」」
「王子は何度も暗殺されかけているけれど、長い付き合いの護衛に斬りかかられて、流石にこたえたらしい。心を閉ざしてしまってね。」
「「ええ…。」」
「君たちの任務は、閉ざされた王子様の心を開くことだよ。」
「「ええ…。」」
この二人は、困ると顔を見合わせる癖があるらしい。それはかわいらしかったが、もう十五歳だ。
あの魔女にはでまかせに言ったことだったが、これは、この子たちにもきっといい経験になるはずだ。
「なぜ、僕たちを?」
アリストラは、赤い目をぱちくりと瞬きさせた。
「ドラゴン討伐隊だよ。」
二年前のドラゴン討伐は、トラッド王国の王子と
その従者。この国からは、第二騎士団が同行した。
「私たちは、ただの道案内でしたが。」
二つの国境を跨ぐ、その山に詳しいステラの傭兵団は、案内に二人の子供をつけたのだった。
「討伐隊にはあの後、騎士の位が与えられたんだ。見習いが何人かいただろう。私は今回、十五歳になった君たちが、この国の騎士になったことを伝えにきたんだよ。」
「「ええ…。」」
「そのついでに、王子の護衛騎士としてスカウトしてみようと思って。」
「「ええ…。」」
二人は最終的に、どんな表情をしていいのか分からなくなったようだ。顔が、引き攣っている。
「ステラは承諾したのですか?」
ステラの傭兵団は、特定の国に肩入れすることはない。この二人も、期限付きだ。
「王国の騎士にしたつもりはないと言われたよ。私は騎士としてではなく、ステラの傭兵団から君たちを雇ったんだ。金額は、一人分だったけど。」
「「ええ…。」」
「二人は半人前だから、一人分でいいってさ。」
「「ええ…。」」
ガタタンッ——
馬車が大きく揺れると、銀髪と黒髪は互いに頭をぶつけた。
二人はついでだの、半人前だのと言われて、肩の力が抜けたようだった。




