第12話 魔法使いアリストラは、魔女を見送る
読んでいただきありがとうございます。今話で四章最終話です。
祭りが終わって数日後のことだった。魔女ステラと三人の弟子たちは、観光を堪能したようだった。
「「「アリスとリリーは、帰らないの?」」」
「……うっ。」
元気よく飛びついてきた妹弟子たちを、受け止めた。
天気の良い昼下がり、馬車を手配した城の前だ。
アリストラは、エルネンとリリアーナと三人で、ステラたちの見送りに来ていた。
「二人はまだお仕事よ。ほら、わがまま言わないの。」
魔女は弟子たちを引き剥がそうとするが、少女たちはイヤイヤと抵抗する。
「そういえば、オリビアは見つかりましたか。」
「こんな状態で、探せるわけがないでしょう。それにリリアーナ、あんたねえ。」
魔女は、リリアーナのあっけからんとした態度にため息を吐きながら、泣き出した少女を一人抱っこし、呟いた。
「どうして私の子達は、言うことを聞かないのかしら。」
それは、大陸一の魔法使いとは思えない悩みだった。
「これ、なんですか。」
差し出された紙袋。中には、赤いマフラーが三本入っていた。
まだ、温かいのに。ステラは、魔法で何かを見たに違いなかった。
「僕にもいただけるのですか。ありがとうございます。」
王子は、少女を抱き上げていた。その子は、一番チビのルルだ。白い肌に赤い瞳。
「エルネン王子。私から見れば、貴方様もかわいい子うさぎの一羽です。」
エルネンは驚いて俺の方を見た。首を横に振る。心を読む魔法などない。
「あんたたち、また何か企んでいるようね。」
しかし、勘が良いのだ。正直に、言ってしまおうか。口を開けた時だった。
「王子様。この子達を、どこに連れて行っても構いません。きっと、役に立つことがあるでしょう。」
それは二年前、ドラゴン討伐に送り出された時と、同じ言葉だった。
「後悔をしないように、全力を尽くしなさい。」
少女三人をなんとか抱え、馬車に押し込み、魔女は、東の山へ帰って行った。
エルネンはそれに手を振りながら、すでにマフラーを巻いていた。
「やっぱり、良い人じゃないか。」
「まだ、暑くないですかそれ。」
「なんで、エルネン様には優しいんだろうね?」
リリアーナは、マフラーをぶんぶん振り回している。
(なんで、ね。)
厚い灰色の雲が、山の方から迫っていた。
「なんだか、雨になりそうだね。」
それは、この王子を待つ運命に、同情しているのではないか?
リリアーナは、真剣な顔をして言った。
「……これ、もしかして。エルネン様とお揃いのマフラーってこと?」
「……俺ともお揃いだよ。」
「それをよこせ。」
「嫌だよ。三人にくれたんだから。」
「二人とも、雨が降る前に城に戻るよ。」
ホラホラと、王子に背中を押される。
俺たちは、その雲に背を向け、足を進めた。
読んでいただきありがとうございました。まだ続きますので、よろしければ五章もお願いいたします。




