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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第四章 青春と剣
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第11話 第二王子エルネンは、銀髪の女剣士と踊る

「すると騎士たちは、仲間同士で斬り合いを始めたのです。あれにはびっくりしましたね、殿下。」


「話が下手だな、リリーは。時間になってしまったじゃないか。」


 アリストラが呆れて言った。四人は、舞踏場に戻って来ていた。


 次が、最後の曲だった。


「私が手にしたドラゴンの能力は、操舵の魔法だったのです。」


 カイン王子はやや焦りながらそう言うと、周りをキョロキョロと見回した。


「あとは、リリアに聞いてください。では、また。お前たちも。」


 パッと手を振り、行ってしまった。


 向こうで、王女の手を取りダンスに誘っているのが見える。


 女騎士がそれを、名残惜しそうに見ていた。


「お嬢様、私と一曲いかがですか。」


 リーバンスはその前に立ち、手を取る。


「おいおい、お嬢様だって。王国一の騎士様、宜しければ私と。」


 アリストラは少しおどけて、大袈裟に跪く。


「私と、踊っていただけますか。」


 第一王子エルネンは、ソッと手を差し出した。


「光栄です。」


 彼女ははにかみ、僕の手を取った。ホールの中央に、音楽の中へ、手を引かれる——


「王子様には敵わないな。アリス、俺の応援はしてくれないのか。」


「なんだよ、リーバンス。エスコートしていた女性はどうしたんだ。」


「あれは、妹だよ。」


「なんだ、妹か。」


 アリストラは、嬉しそうにリーバンスの背中をバシバシ叩いた。


 その手を振り上げると、小さな魔法陣がそこかしこに現れ、舞踏場が、輝きを増す——


 そのキラキラを纏い、リリアーナは銀髪を揺らして、クルッとターンした。


「上手だね。」


「エルネン様に褒めていただけるとは。練習した甲斐がありました。」


 こんなに無防備な笑顔は珍しい。酒を、少しでも飲んだのだろうか。それとも、この舞台に浮かれているのだろうか。


「三人の中で、誰が一番良かった?」


 それとも、初恋の相手と再会して、感情が抑えられないのだろうか。


「良かったとは。ダンスの良し悪しは、私にはよくわかりません。そんなことより……」


 ゆったりとしたテンポ。騎士は斜め上を見ながら、器用にステップを踏む。


「ドラゴンの能力は、知っているものでしたか?東の森にはもういません。カイン王子の時は……。」


「今は、ダンスに集中して。」


 グッと、手に力を込めた。足を揃えてターンだ。多少強引だったが、彼女はしっかりついてきた。


「……兄上とは、なぜパートナーに。」


「大会の後、誘われたのです。剣の腕を、気に入っていただいたようで。」


「ダンスは、どこで。」


「第一王子と踊ることになったものですから、昨日の晩、急いでリーバンスに教わって。」


「この傷は、ドラゴンの爪痕なの。」


 彼女のドレスは、背中が大きく開いたデザインだ。引き締まった筋肉質な背中に、大きな三本の傷跡が刻まれていた。


「ダンスに集中しろと仰ったではありませんか。質問ばかりして。くすぐったいです、エルネン様。」


 傷跡は抉れていて、ザラザラしている。周りの皮膚は、傷に沿って少しひきつっていて、その部分だけプニプニしていて柔らかい。


 そのプニプニを、指でなぞった。

 

「ヒヒッ。」


 ずっと、こそばゆいのを我慢していたんだろう。彼女はとうとう身を捩って、口元を押さえた。


 目に涙が溜まっている。それが、キラキラと光を映して——


「あ、ごめん。」


 動揺して、ステップを踏み間違った。僕たちは、足を引っ掛け、倒れ込む——


 音楽は終了した。この舞踏会も、今年の祭りも。


「……上手いと言ったのは嘘だよ。今度は、僕がダンスを教えるから。」


 なんとか床に両手をついた。すぐ目の前で、淡い紫色の瞳が、パチパチと瞬きをした。


「光栄です。」


 今のは絶対、僕のミスだったけれど。


 彼女は嬉しそうに、その目を細めた。

 


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