第10話 ドラゴンを斬った思い出
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三十三人のドラゴン討伐隊は、三手に分かれて山を彷徨っていた。山に入って、もう一ヶ月ほどになる。
「この山には、二体のドラゴンが住んでいるはずなのですが。」
アリストラはため息を吐きながら言った。仲の良くなった友人たちとの散策は楽しいが、この旅の案内人としての責任を感じているのだろう。
みんな、そろそろ木の根を枕にした野宿には嫌気がさし、ベッドが恋しくなっていた。
「そのドラゴンは、重力を操るんだろう。不思議だなあ。」
リーバンスは、ブンブンと木の枝を振り回しながら言った。小柄ながら、この四人の子供たちの中で最も体力があった。干し肉を頬張りながら、先頭を歩く。
「リリー、そろそろ起きろよ。」
子供の魔法使いは、せめて自分たちのせいで迷惑はかけまいと、声をかける。
「疲れているのだろう。寝かせてやればいい。」
馬に乗ったカイン王子が、後ろから返事をする。リリアーナは、その背中にもたれてのんきに眠っていた。
第二騎士団の騎士たちは、子供たちの後ろを、見守りながらゆっくりとついていく。
「ですが、カイン様。翼が風を切る音がしたのです。」
アリストラは、耳が良い。しかし、この翼の音はこの一ヶ月で何度も聞いたものだった。
「アリス、王子様、あそこの丘の上まで競争しよう。」
「リーバンス、僕の話を聞いていたか。」
やんちゃな二人は、走り出す。カインは、リリアーナを起こさないようそのまま静かに後を追う。
「——ドラゴンだ。」
全員が丘に追いついた、その時だ。先にいたアリストラとリーバンスは、突然現れたドラゴンを、ポカンと見上げていた。
バサバサと上空から現れたドラゴンは、大きな翼を仰ぎ、子供二人を軽々と吹き飛ばした。
リリアーナはいつの間に起きていたのか、カインを引っ張り、素早く木の上に登った。
騎士たちは、ドラゴンの前に出る。手前にいた二人は、ドラゴンの尻尾で吹っ飛ばされた。
「アリス、目を貫け。」
リリアーナは、叫んだ。しかし、弓の名手の返事はない。
見習い魔法使いと、見習い騎士は、木に叩きつけられて伸びていた。
そうこうしているうちに、ドラゴンはドンと片足を踏み出した。その周りに大きな魔法陣が現れる。
「構えろ。」
騎士の誰かが声を張り上げた。
避けるには、その魔法陣は大きすぎた。騎士たちは剣を地面に突き刺した。
山に入った猟師からの話だった。巻き込まれると、視界が反転し空に吸い込まれる。重量が反転するのだそうだ。
騎士たちは、地面にしがみつく——
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