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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第四章 青春と剣
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第6話 第二王子エルネンは、第一王子を応援する

「そこだ!ここで必殺技だ!」


「ねえこれ、私が魔法でズルしてもいいの?」


 エルネンは、闘技場の端にテキパキと組み立てられる表彰台を横目に呟いた。


「良いわけないだろ。」


 護衛と、妹は、僕の両隣でやかましい。決勝戦はいまだ、決着がつかない。


——キィン、キィーン


 剣士の方は、なんとか防ぐに徹しているが、明らかに動きが鈍くなっていた。じきに勝敗は決するだろう。


(しかし……)


「……あの騎士、この国の者ではないよなあ。」


「え?」


 アルビラは、キョトンとした顔でこちらを見た。


 アリストラは、ご冗談をと笑って言った。


「あの、トサカがついたような冑は、第一騎士団のものでは?」


「鎧はそうだけど、剣術が。」


 謎の騎士だ。第一騎士団の剣術を真似ていたが、カイン王子と戦ったあたりから、余裕がないのか素が出てきた。


 のびのびと体を使った、自由で、軽やかな動き。


「……騎士というよりは、暗殺者かな。」


「あれは、お兄様を狙った刺客ってこと?」


「そうかもしれないね。」


 こんな場所を選ぶとは大胆だが、刺客をやり返して優勝するなど、まったくテオールらしいのではないか。


「大丈夫。兄上は、やられないよ。」


 世界が、彼の味方をする——


 アルビラは、客席をキョロキョロと回している。王妃の姿を探しているのだろう。今日、ここにはいないはずだった。


——キィンッ


 長引いてきた。テオールは、決めにかかったのだろう。大振りの一発だ。騎士は、それをサッと身を伏せてかわした。


 その低い位置から、剣を突き出す——


 アルビラは、バッとその手を向けた。


「……だめよ。お兄様が勝つんだから!」


 地面に、うっすらと。その騎士の、影のように現れる魔法陣。


 足は、止まった。しかしその突きは止まらない。さらに問題なのは、魔法陣に、テオールの片足が触れていることだ。


 王子は身を引くが、その足が地面から離れず——


「アリス!」


「あ、はい。」


 突きは当たらず、王子の目の前で防がれる。アリストラの魔法陣だ。


「アルビラ。まったく、何をしているんだ。」


 客席からは、二つの魔法陣は、よく見えなかったはずだ。突然、二人の動きが止まったように見えただろう。


 それも一瞬だった。大きな魔法陣が、パッ、パッと二重に現れ、闘場の地面全体を覆った。


(ん?)


 魔法禁止の魔法陣だ。二つ。ここに、他に二人の、強力な魔法使いがいる——


——パリン、パリンッ

 

 二人は、同時に体が動いた。


 騎士は、急に動き出した足と、勢いを失った剣の重さで、前のめりにバランスを崩す。


 王子は固まっていた片足が一歩後ろに引けると、その足で地面を蹴り出し、剣を振り下ろした——


 騎士は倒れずグッと堪えて、その刀身向かって剣先を突き上げる——


——パキィーッ


 テオールの剣は、真っ二つに折られた。


 先程の戦いも、まぐれではなかったらしい。刀身を折る技なのだろう。


 勝負はそこで決まったはずだが、騎士はそのまま柄の方にも一撃を決め、王子が倒れ込むのに、追い打ちをかける。


「まずいぞ。」


 アルビラは、口元を手で覆い固まった。


 アリストラは、何故かポカンと、動かない。


 うちの魔法使いたちは、役に立たない。


「……兄上!」


 この距離で叫んだところで、役に立たないのは自分も同じだった。


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