第6話 第二王子エルネンは、第一王子を応援する
「そこだ!ここで必殺技だ!」
「ねえこれ、私が魔法でズルしてもいいの?」
エルネンは、闘技場の端にテキパキと組み立てられる表彰台を横目に呟いた。
「良いわけないだろ。」
護衛と、妹は、僕の両隣でやかましい。決勝戦はいまだ、決着がつかない。
——キィン、キィーン
剣士の方は、なんとか防ぐに徹しているが、明らかに動きが鈍くなっていた。じきに勝敗は決するだろう。
(しかし……)
「……あの騎士、この国の者ではないよなあ。」
「え?」
アルビラは、キョトンとした顔でこちらを見た。
アリストラは、ご冗談をと笑って言った。
「あの、トサカがついたような冑は、第一騎士団のものでは?」
「鎧はそうだけど、剣術が。」
謎の騎士だ。第一騎士団の剣術を真似ていたが、カイン王子と戦ったあたりから、余裕がないのか素が出てきた。
のびのびと体を使った、自由で、軽やかな動き。
「……騎士というよりは、暗殺者かな。」
「あれは、お兄様を狙った刺客ってこと?」
「そうかもしれないね。」
こんな場所を選ぶとは大胆だが、刺客をやり返して優勝するなど、まったくテオールらしいのではないか。
「大丈夫。兄上は、やられないよ。」
世界が、彼の味方をする——
アルビラは、客席をキョロキョロと回している。王妃の姿を探しているのだろう。今日、ここにはいないはずだった。
——キィンッ
長引いてきた。テオールは、決めにかかったのだろう。大振りの一発だ。騎士は、それをサッと身を伏せてかわした。
その低い位置から、剣を突き出す——
アルビラは、バッとその手を向けた。
「……だめよ。お兄様が勝つんだから!」
地面に、うっすらと。その騎士の、影のように現れる魔法陣。
足は、止まった。しかしその突きは止まらない。さらに問題なのは、魔法陣に、テオールの片足が触れていることだ。
王子は身を引くが、その足が地面から離れず——
「アリス!」
「あ、はい。」
突きは当たらず、王子の目の前で防がれる。アリストラの魔法陣だ。
「アルビラ。まったく、何をしているんだ。」
客席からは、二つの魔法陣は、よく見えなかったはずだ。突然、二人の動きが止まったように見えただろう。
それも一瞬だった。大きな魔法陣が、パッ、パッと二重に現れ、闘場の地面全体を覆った。
(ん?)
魔法禁止の魔法陣だ。二つ。ここに、他に二人の、強力な魔法使いがいる——
——パリン、パリンッ
二人は、同時に体が動いた。
騎士は、急に動き出した足と、勢いを失った剣の重さで、前のめりにバランスを崩す。
王子は固まっていた片足が一歩後ろに引けると、その足で地面を蹴り出し、剣を振り下ろした——
騎士は倒れずグッと堪えて、その刀身向かって剣先を突き上げる——
——パキィーッ
テオールの剣は、真っ二つに折られた。
先程の戦いも、まぐれではなかったらしい。刀身を折る技なのだろう。
勝負はそこで決まったはずだが、騎士はそのまま柄の方にも一撃を決め、王子が倒れ込むのに、追い打ちをかける。
「まずいぞ。」
アルビラは、口元を手で覆い固まった。
アリストラは、何故かポカンと、動かない。
うちの魔法使いたちは、役に立たない。
「……兄上!」
この距離で叫んだところで、役に立たないのは自分も同じだった。




