表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第四章 青春と剣
36/46

第2話 魔法使いアリストラは、思春期だ

 その魔女は、うやうやしくお辞儀をした。


 青空に似合わない、黒のローブに身を包む長身。身につける宝石が、その中で光る。白髪の混ざる癖のある赤髪、鋭い眼光。


「不出来な弟子たちが、世話になっております。王子様。」


「誰が不出来な弟子ですか。」


 アリストラは、すぐに言葉を返した。


 エルネンがいえいえと頭を下げるのも、なんだか気恥ずかしい。


「「「アリス、元気だった?」」」


 魔女は、三人の弟子を連れてきていた。幼い少女たちが飛びついてくる。


「チビたちも、いい子にしてたか。」


「「「まあまあだね。」」」


 生意気な後輩たちは、久々に会う自分より、キラキラした王子様に視線が釘付けだ。


「赤い瞳……。子うさぎみたいだ。」


「かわいいでしょう。性格は凶暴ですよ。」


 王子様には、猫を被るかもしれないが。


 昼下がり、城門の前だ。凱旋が終わった後のことだった。


 人混みの中にステラの姿を見つけた俺は、いったい何のつもりかと城を降りた。エルネンには、本当は付いて来て欲しくなかったのだが……。


「ステラ、何の様でいらっしゃったのですか。」


 人々は町に戻り、祭りの最中だろう。ここには、喧騒の気配だけが残る。


「何って、あんたたちの様子を見に来たのよ。」


「は?」


「リリアーナは、どうしたの。」


「あいつは、罰で謹慎中です。」


「は?」


 会話が止まり、お互いに不思議そうな顔で見つめ合う俺たちを、少女たちはケラケラと笑う。


「ステラが、心配だから見に行こうって。」「お祭りも見せてくれるからって。」「だから、ついて来たんだよ。」


 魔女は、眉間の皺をさすりながら言った。


「心配は、的中したようですね。何をしでかしたのかわかりませんが、ご迷惑をかけているようで。」


 エルネンはまた、いえいえと答えた。


「僕の不手際で、不名誉な思いをさせてしまったのです。」


「そんなこと……。」


 思わず呟いた。昨日、第五騎士団長に叱られたことを、まだ気にしているのではないか。


 魔女は、年相応の掠れ声だ。その風格ある声で、正しく、しかし優しく言った。


「王子様、この子たちに不名誉なことなどありませんよ。あなた様に仕えることが、素晴らしい名誉なのですから。」


 フフッと笑うその最恐の魔女を、王子は意外そうに見上げている。


「謙虚さを覚えるには、まだ若すぎます。もっと、ワガママにならないと。」


 うんうんと聞いていると、頭を引っ叩かれた。


「あんたたちはもっと謙虚になりなさい。責任感というものを知らないのかしら。」


 まったく、とため息を吐かれた。久々の感覚に頭をさすった。魔女のくせに、暴力とは。


「用は、それだけですか。」


 へばりついている子うさぎを下ろした。そろそろ行かないと。エルネン王子は、忙しいのだ。


「……いいえ。あんたたちに頼みがあったのだけど、三人だけで話せるかしら。」


 それは、傭兵団の仕事だろうか。三人とは、リリアーナと俺に伝えたいことがあるのだろう。


 無意識に、生唾を飲み込んだ。


 王妃に手を貸している魔法使いが、まだわからなかったからだ。


 風が止んで、静けさがその場の空気を固める。


 子うさぎたちは、俺の不安を感じ取ったようだ。ジッと静かに、その空気が動くのを待っている。


(……どうしよう。その時は、本当にステラと戦うのか。)


 固まってしまった弟子魔法使いを待たず、エルネンは、魔女をまっすぐに見据え、静かに沈黙を破った。


「……ステラ。二人は今は、僕の護衛です。お貸しすることはできません。」


 背中にツゥ——と、汗が流れる感覚がした。呼吸が浅くなる。王子は、どこまで知っているんだろうか。


 バサバサバサッと一羽、近くで鳥が飛び去った。


 一気に変わった空気に、ステラは首を傾げた。


「いや、大した話じゃなくて……。オリビアが、どうやらこの国にいるようなのよ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ