第1話 魔法使いアリストラは、建国祭を楽しみたい
読んでいただきありがとうございます。第四章です。
今日は、建国祭の二日目だ。青空の下、人々は花びらを撒き、町中が黄色く色づく——
その中を、第二騎士団が凱旋する。
花吹雪を浴びて先頭を行くのは、第一王子テオール・ハイラル。戦争の英雄だ。
「かっこいいですねえ、第一王子。」
アリストラは思わず呟くと、その隣でエルネンが笑った。
「僕も、そう思うよ。」
二人は外壁の上から、それを見下ろしていた。
テオールは、不遇の王子だ。国王と、城のメイドとの間に生まれ、誕生と同時に母を失った王子は、王妃に疎まれながら幼少期を過ごしたという。
国王が病にかかり倒れた隙に、王妃は第一王子を、北部の戦争へと送った。
「戦況は悪かった。王妃は、兄上が生きて帰ってくるとは思わなかっただろうね。」
しかし、王子は勝利を手にし、舞い戻ってきた。
——ドドンッ、ドンッ、ドンッ
空に、花火が打ち上がった。青空に、次々とオレンジ色が弾ける。爆ぜる。弾ける。
「あれが妹。王妃の娘だよ。」
エルネンの、指刺す方向に視線を向ける。門の前だ。花火を打ち上げる、三人の魔法使いがいた。
王城の魔法使いと、その弟子。真ん中で、空に手のひらをかざすのが、王位継承戦候補の一人、アルビラ王女だ。
「……エルネン様に似ている。」
陽の光を受け、輝くブロンド。青空よりも透き通る、スカイブルーの瞳。降り注ぐ火の粉を気にもせず、こちらをニッと見上げた。
「不思議だろう、二人とも国王には似ていないのに。母親同士が似ているんだよ。父上の好みなんだろう。」
王子は目を細め、花火の打ち上がる空を見上げた。
王には、二人の女がいた。王妃と、王が侵略した国から連れてきた亡国の王女だ。二人は王の愛を取り合い、憎しみ合っていた。二人ずつ子供を産み、お互いの子供を殺し合った。
その後、片方の女は毒死した。自死なのか、他殺なのかはわからない。
「王妃は今年の祭りを、アルビラのお披露目に使いたかったようだけど、そうはいかない。」
町民たちは、城壁の上にいる第二王子の存在に気がついたようだ。歓声が上がる。
エルネンは、笑顔で手を振りそれに答えた。
「復讐のために、第一王子に手を貸すのですか。」
暖かい風が吹いて、黄色い花びらがこちらにも舞い上がった。火の粉がキラキラと、王子を演出する。
「さあ、どうかな。」
——ドオオオン、ドオオオン
その瞬間、先ほどとは比べ物にならないほどの爆音が響いた。祭りの規模を逸脱している。咄嗟に王子を庇い、覆い被さった。
——空か。眩しい。
エルネンが背中からモゾモゾと顔を出した。
「綺麗だ。」
目が、チカチカする。大きい、花火だ。それは次々と現れ、原色が空を覆い尽くした。
その美しさには、見覚えがあった。
「げっ。」
急いで城壁の下を見下ろした。町民たちで溢れかえっていたが、一目でその存在を確認できた。
その女も、こちらに気がつき手を振った。
「知り合いかい。」
王子はいつのまにか隣に来て、ニコニコと勝手に手を振りかえしている。
「……会ったことはなかったですね。あれが、ステラの傭兵団団長、ステラ・バインドラです。」
この大陸、最強の魔女だ。
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