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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第三章 記憶と絆
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第7話 銀髪の女剣士リリアーナは、初めての祭りを楽しみたい

「リリーは、よく食べるねえ。」


「……エルネン様に、身長が追いつかれそうなので。」


 リリアーナは口の端を舐めた。甘ったるくて、菓子屋に行く気が失せてきた。


 二人は露店で寄り道をしながら、ゆっくりと目的地に向かっていた。


「僕は、小さい方がいいの?」


「……張り合う相手がいた方が、いいかと思って。」


 適当に返事を返して先へ進む。その店は閉まっていたが、前に屋台が出ていた。


 オレンジに、チョコレートがかかったものが並んでいる。


(あれ?)


「……逆では?」


 エルネンが、屋台を覗き込んだ。


「そういえば、ここの店主はさっきの果物屋の店主と兄弟で。だから、果物の味をしたチョコレートが売りなのだと……。」


 ヌッと屋台の奥から、イチゴの刺さった棒を二本差し出される。それには、白いチョコレートがかかっていた。


「そうです、お嬢さん。こちらは新作です。どうぞ。」


 人の良さそうな店主だ。大柄で、菓子屋よりは、酒屋のほうが似合いそうだ。


 大きな身を縮めて、コソッと言った。


「エルネン王子様、お久しぶりですね。少し見ないうちに、ずいぶん大きくなって。」


 チラッと私の方を見て言った。


「いつもの騎士様は、いらしてないのですか。」


 それは、イリヤ・エリオールのことだろうか。


「彼女は騎士団を移ったから、もう王都にはいないんだ。」


「そうですか。もし会いしましたら、またお立ち寄りくださいと伝えていただけますか。」


「うん。わかったよ。」

 

 エルネンは、答え慣れているのかスラスラと嘘をついた。


 いつもの、大人びた笑顔だ。相変わらず、美しくて。それが、晴れ渡る青空に似合わなくて——


 その口に、イチゴの刺さった棒を突っ込んだ。


「私が後任の騎士なのです。チョコレート、また買いに来てもいいですか。」


 店主は、笑顔で言った。


「もちろんです。また、二人でいらしてくださいね。」


(はああああ……。)


 気持ちを切り替えたくて、大きくため息を吐いた。


 王子は川沿いに露店が並ぶ、もう一本奥の通りに案内してくれた。


 ご機嫌だ。ケラケラと、ずっと笑っている。


「あの店主、驚いていたよ。君が騎士には見えなかったんだろうね。」


 それだ。私にはこだわりがあって。


「ああ……。騎士って言ってしまった。私は騎士ではないのに。」


「そんなことが、重要なのかい。」


「騎士の方が、格好良くはないですか。やっぱり、騎士の位を貰い受けるべきだった。」


「そのことを気にしているとは、知らなかったよ。」


「私がイリヤ・エリオールに劣っているのは、それと、身長だから。」


(……しまった。)


 必死に冷静を装った。川が光を受けて、いつもより輝いて見えた。


「……大きい女性の方が、好まれるかと思って。一般的に。」


「一般的に。」


 俯いて、王子の隣を歩いた。足元で揺れるワンピースの裾を見て、余計に恥ずかしくなった。


(何をやっているんだ私は……。)


「……チョコレートは、いかがでしたか。」


 エルネンは笑った。爽やかな青空に、無邪気な笑顔がよく似合う。


「実は、苦味のある味は苦手なんだ。」


「オレンジの方ですか。思い出の味なのに。」


「こっちの方が、好きかもしれない。」


「イチゴか。酸っぱいのは苦手です。」


「甘酸っぱいって言うんだよ。」


 私には、どちらも大人な味に感じた。


「口直しにしましょう。」


「リリーは、よく食べるねえ。」


 それは、貴方様の思い出の女を、超えたいからだ。


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