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ドラゴンを斬った女の初恋  作者: 9iyus
第三章 記憶と絆
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第2話 銀髪の女剣士リリアーナ、夕暮れの執務室にて

 リリアーナは、イライラしていた。


(また、逃げられた。相当な手練れだ……。)


 エルネンの執務室の前に立つ。


(落ち着け、王子様に悟られる……。)


ガチャ——


「……どうも。」


 頭を下げた。出てきたのは、オズワルドと。


(テオール王子の補佐官だ。)


 第一王子は帰れない代わりに、補佐官だけよこしたらしい。


 昨年の建国祭は、テオールが取り仕切ったのだが、今は北部の残党を制圧するため、王都を不在にしている。


 今年は、エルネンがその代わりを務めるのだ。


 息を深く吸う。


コンコン——


「殿下、入りますよ。」


殿下じゃなくて——


「エルネン様、大丈夫ですか?」


 第二王子は、ソファにグッタリと身を沈めていた。慣れない執務に、疲れているのかもしれない。


 横からサッとアリストラが現れて、持っていたティーセットを奪われた。


「クッキーか。」


「アンタに持ってきたんじゃないよ。」


 魔法使いは、サッとそれを王子の口に差し込み、お茶を入れ始める。


 気を使わない雰囲気、部屋には私たちだけらしい。


「連日、忙しいですね。」


「兄上は北部で戦ったのだから、僕も、自分の役割を果たさないと。」


 エルネンは、クッキーを飲み込んで言った。身を起こし、紅茶に手を伸ばす。


 部屋の奥へ進み、窓を開けた。机の上に広がった紙類を、飛ばないようまとめる。


(二日目の凱旋……。)


「第一王子、返ってくるのですね。」


 戦勝の王子を、国民は次期国王に相応しいと迎えるだろう。


 開けた窓から、夕日と共に風が入り込む。


「二人とも、そんな複雑そうな顔をしないでよ。」


 王子は夕日が眩しいのか目を細め、言った。


「話があるんだ。」


 向かいのソファに促され、アリストラと並んで座った。肘で脇を小突かれる。


「私たちからも、お話ししたいことがあります。」


 肘で小突き返した。エルネンは私たちが睨み合うのを見て、本当に仲が良いなあと呟いた。


 吹き込む風に、カーテンが大きく揺れた。


「……僕は、この王位継承戦から身を引くよ。もともと、参加したかったわけでもないんだけど。」


 あはは、と笑った。相変わらず、笑顔は大人びていて、夕日を浴びた金髪が、美しくて。


「僕は、第一王子を支持する。それを、二人には知っておいて欲しくて。」


 協力してもらうことがあるかもしれないからね。と、静かに言った。


 三等分していた王候補の勢力は、テオールに傾く。王都で過ごすエルネンには、王女を支持する層からの妨害があるかもしれない。


 しかし、そんなことよりも。


「この祭事はエルネン様が準備するのに、テオール王子がおいしいところを持っていくってことですか。」


 アリストラは口を尖らせ、不満そうに言った。


 こんなに頑張ってるのに、報われないなんて。そんな、目先のことが気になった。


「いやかい?」


「いいえ、もちろん従います。」


 返事のない隣の男を、また小突いた。


「……俺も、従います。友達ですからね。」


 それを聞いて、エルネンは照れたように笑った。その笑顔には、少年らしさがあった。


 それが、可愛らしくて——


「ありがとう。二人は、僕になんの話が?」


「あ……。」


 目を、逸らしてしまった。


「言いづらい話なのかい。」


 アリストラはパッと席を立ち、ティーセットを片付けながら言った。


「急ぎの話ではありません。この話は、建国祭が終わってからにしましょう。」


 それを抱え、ヒラヒラと手を振り部屋を出ていった。交代の時間だ。


(逃げたな、アイツ……。)


「晩餐まで、まだ時間がある。」


 エルネンはあまり気にしてないのか、疲れが勝っているのかもしれない。


 フーと長く息を吐き、再びソファに身を沈めた。


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