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第1話 ドラゴンを斬った女の初恋

初投稿です。温かく見守っていただけたら嬉しいです。

「やっと帰れますね。」


 ドラゴンの返り血で全身が赤黒く染まった女は、討ち取ったドラゴンの首を見下ろし、ため息を吐いた。


「帰る場所があるのか。」


 思わず溢れた言葉は、足元に積もる焦げついた枯葉の中に、落ちて埋もれた気がした。


 冷たい風が吹き、それはカサカサと音を立てた。


 ドラゴンの咆哮が止んだ森は静かで、葉が擦れる音と、小さな呻き声だけがポツポツと聞こえる。


 討伐隊は、壊滅状態だった。しかし、呻き声が聞こえるということは、生きてはいるのだろう。


 彼女もそう思っているのか、呑気に話を続けた。


「あなたに言ったのですよ、カイン王子。トラッド王国の民が、殿下の帰りを待ちわびているでしょう。」


 ドラゴンの首を携えて帰る王子を、祭りを開いて迎えるはずだと続ける。


(しかし、その場に君は居ないのだろう。)


 手にグッと力が入る。そのまま、ドラゴンの瞳に突き立てていた剣を引き抜いた。


 掲げると、刀身は黄色い光の粒子に包まれる。それは、ドラゴンの瞳の色だった。


「うつくしいですね。」


 彼女はマントで自分の顔を拭った。髪をかきあげると、こびりついた血の間からシルバーブロンドが覗く。


 肌は透き通るほど白く、淡い紫色の瞳は少し揺れて、こちらを見ていた。困った表情には、年相応のあどけなさが残る。


 これからもっと、綺麗になるだろう。


 二人は、十三歳だった。


「もしかして、帰りたくないのですか?」


 再び冷たい風が吹き、光の粒子は舞い上がった。陽が傾き、紅葉の森は橙を濃くしていく。


 彼女の銀髪は風に靡いた。夕陽を反射し、キラキラと輝く。


 言葉にはしないと、決めていたのに——


「君を連れて行くことが、出来たらよかったのだが。」


 綺麗になっていく姿を、近くで見られたなら——


 しかし、幼く力のない二人に、その決定権はなかった。


「私もこのまま、殿下の側にいられたらと思っておりましたよ。」


 頬が赤いのは、夕日のせいだろうか。


 どうか彼女も、この別れを惜しんでいて欲しいと願った。


読んでくださってありがとうございます。投稿練習もかねて更新しています。次話もすぐ投稿しますので、よろしければご覧ください。

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