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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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夢の中の怪

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれあやかしの短狐たんこしもべに持つ。

藺離りんり…………槍の手練者。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

じい…………欧陽坎の祖父。

あきない……?」

「最初はな。酒を売り、草履ぞうりも売ったと聞いておる。商売はそのうち屠殺とさつわざとなり、今に至っておる。世渡り下手の血は、お前の父親がしっかりと継いでな」

 祖父は、己が息子を嘲笑ちょうしょうした。

 ふと、欧陽坎おうようかんは祖父の手許が眼に付いた。ぬぐったはずの血が拭いきれていないところがあった。痣のようだった。

じい、そんなところに痣などあったか?」

 それは、薄いが八つの角を持った星型の多角形に見えた。

「ん? ああ、幼い頃はなかったが、お前くらいの歳に表れてのう。次第に濃くなったが、歳を取るにつれ、また色がめてきおったわい」

 祖父は、手首を何度も引っ繰り返すと、欧陽坎の右肩に眼を据えた。

「それよりも……」

 祖父が微笑を浮かせてつぶやいた。

納屋なやから連れ出したのは、ほこだけではなかったか」

「あん?」

 欧陽坎は、小首を傾げると怪訝けげんな顔をさらした。

 その夜、寝床に付いた欧陽坎は、うなされていた。

 幾つもの小さな水の玉が襲ってくる。その玉が勢い良くからだを貫いた。痛みはなく、血も噴出ふきだしていない。躰中を見回し、はっと顔を上げた欧陽坎の前にたたずんでいたのは、全身が青色の毛に覆われ、白いたてがみを備えたかわうそのような生き物だった。

 その生き物が、ひょっこりと二本脚で立つと、周囲に幾つもの水の玉が浮かんだ。それが一塊にまとまると、欧陽坎の許へ走り、その身を覆った。

 苦しくなって眼が覚めた。呼吸は荒い。全身が水で濡れたように汗まみれだった。

「な、何だってんだ……?」

 呼吸が落ち着いてきた欧陽坎は、独りちた。それから数日、毎夜同じ夢を見た。

「爺……」

「何じゃ?」

 欧陽坎は、店の裏で獣の血抜きをしている祖父に連夜見続ける夢の話を聞かせた。

「それは、短狐たんこ仕業しわざじゃな」

「短狐……?」

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