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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第4章 忠星
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猛攻撃の水

祁盈きえい…………周王朝の血筋をしん国の重臣。

楊食我ようしょくが…………周王朝の血筋を汲む晋国の重臣。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者てだれ

藺離りんり…………槍の手練者。あやかしの火鼠かそしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

「ん……?」

 長髯ちょうぜん藺離りんりは、思わず首を傾げた。

 よく見れば、かれた水が地に吸い込まれていない。地に落ちるどころか、宙に浮いている。

 欧陽坎おうようかん虎髭とらひげが、奇妙に動いた。笑ったようだった。

 すると――。

 宙に浮いた水が、幾つかの拳大こぶしだいほどに結集すると、眼にも留まらぬ速さで藺離に飛来したのである。

「――――⁉」

 咄嗟とっさに身を伏せ、地を転がるようにして避けた藺離は、眼をいて振り返った。

 バキバキッ――。

 乾いた音が幾つも連なった。

 疾風はやての如く飛び去った水の塊は、触れた木々を削り、幹に穴を開けるほどの威力だった。

「おっ? 鬼弾きだんかわしやがった」

 驚きの形相ぎょうそうさらしたのは、欧陽坎おうようかんも同じだった。

「久し振りに手応えのある奴に出会えたって訳か」

 すぐさま上機嫌に一変した欧陽坎は、腰に結わえた瓢箪ひょうたんを立て続けにひっくり返して水を振り撒いた。宙に浮く水に斬撃を加えると、水の刃となり藺離を襲った。

「――――⁉」

 まとった道袍どうほうの端々が斬られている。藺離は、次々に飛来する水の斬撃をすんでのところでかわしているが、欧陽坎の猛攻に反撃の機を見出せずにいた。瞬時に悟ったこともあった。対峙する欧陽坎から感じられるのは、明らかな霊気だった。その霊気を練り、あやかしを操っているはずだった。

 飛ぶ水の斬撃が止んだ。藺離は、欧陽坎の姿を探した。前方に見当たらない。

 殺気だった。藺離は振り返り様、頭上から振り下ろされるほこの一閃を槍の柄で受け止めた。ずしりと重い一撃だった。柄で受けなければ、頭は割られていただろう。

「――――⁉」

 虎髭の面貌めんぼうに不敵な笑みが浮いている。その首元に巻き付いていたのは、全身を爽やかな青色の毛に覆われ、白いたてがみを備えたかわうそのような妖しだった。

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