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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第3章 義星
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烈火の斬撃

登場人物

藺石りんせき…………藺家の当主。槍の達人。八人の子息を持つ。

藺授りんじゅ…………藺家の長子。苛烈かれつな槍の名手。

藺離りんり…………藺家の次子。槍の手練者てだれ。道徳的な思想を持つ。

藺翼りんよく…………藺家の三男。豪快な槍術の持ち主。

藺冑りんちゅう…………藺家の四男。鋭敏な槍術の持ち主。


火鼠かそ…………炎を自在にあやかし。

 圧倒的な藺授りんじゅの槍術に、藺離りんりは防戦一方に見えた。

「…………」

 高台から腕組みした藺石りんせきが、眼を細めて観戦している。

「これが、授兄の本域か……。あの離兄が手を出せないでいる……」

 拳には力が入る。固唾かたずを飲んだ藺翼りんよくが、試合から眼をらすことなく隣の藺冑りんちゅうつぶやいた。

「くっ! 離兄……」

 試合に眼を向けたままの藺冑のかんばせが、苦悶くもんの表情にゆがんだ。

 静かだった。試合の成り行きを見守る門弟たちは、どれも黙って見届けている。声援はなかった。

「――――⁉」

 藺授の鋭い一閃が藺離のほほかすめた。

 その一閃にひるむどころか、降り注ぐ斬風ざんぷうしのぐ度に藺離の眼光は冴えた。命の危機を感じ取るからだが、くすぶる力を開放したようだった。

 藺授が一歩下がった。

 その間隙かんげきを突き、追い払うように藺離は槍を斬り上げた。

 すると――。

 その斬撃には炎が渦巻き、ほむらほとばしった。

「――――⁉」

 眼をいた藺授は、身構えたまま動きが止まった。

 蝟集いしゅうした門弟たちもこぞって息を飲んだ。

「そうだ」

 不敵な笑みを浮かべたのは、高台から試合を眺める藺石だった。

 炎の斬撃を放った本人、藺離でさえ動きが止まり、驚愕きょうがくの表情を浮かべている。眼を泳がせると、何かを悟った。

「あ、あれは、父上と同じ……炎をまとう斬撃……」

「離兄が……」

 藺翼と藺冑は、ただ唖然あぜんとした。

 怒気を放ち、たちまち悪鬼の形相に変わったのは、藺授だった。雄叫おたけびを上げると、斬り込んだ。放ったのは、憤怒ふんぬ袈裟斬けさぎりだった。

 爽やかな微笑が浮いていた。藺離は、迫る藺授へ躰を向け仁王立った。

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