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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第3章 義星
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孤高の名手

登場人物

藺石りんせき…………藺家の当主。槍の達人。八人の子息を持つ。

藺授りんじゅ…………藺家の長子。苛烈な槍の名手。

藺離りんり…………藺家の次子。槍の手練者てだれ。道徳的な思想を持つ。

藺翼りんよく…………藺家の三男。豪快な槍術の持ち主。

 勝負はあった。

 しかし、藺授りんじゅは、叩き伏せるような一撃を藺離りんりの背に打ち下ろした。

「――――⁉」

 藺離は、顔から地に倒れ伏していた。

「離兄――‼」

 地に伏した藺離の許に駈け寄ったのは、弟たちだった。

「また兄弟愛というやつか? お前らはそれだから羸弱るいじゃくだと云っているのだ」

 藺授は、弟たちを侮蔑ぶべつするような眼付きで北叟笑ほくそえんだ。

「くっ!」

 悔しげに歯軋はぎしりした三男の藺翼りんよくが、藺離をかばうようにして長兄の藺授をにらみ付けた。

「どうした、翼? 槍の才など微塵みじんもないお前が、何か俺に文句でもあるのか?」

 藺授は、藺翼を見下した。

 ごうを煮やした藺翼が眼の色を変え、藺授に打ち掛かろうとした、その時だった。

「――――⁉」

 藺翼の腕を強い力で掴んだ者がいた。

 はっとした藺翼は、振り返った。

 藺離だった。苦悶くもんの表情を浮かべている。

「……離兄」

「やめろ、翼……。一時いっときの怒りにはやるは、身を滅ぼすことになる……」

「ほう」

 藺授は、その遣り取りをあざけり笑った。

不憫ふびんなことだ。弱さゆえの兄弟愛だったか。藺家にはらぬものだ。ましてや、当主になる者には不要。違うと云うのであれば証明してやる。お前ら全員束になって掛かって来るがいい」

 そう云うと、藺授は身構えた。蛇のように冷たい瞳で口許に微笑を浮かべていた。

 六人の兄弟たちは、長兄の藺授を睨み返した。

めい!」

 良く通る声音こわねを放ったのは、父親の藺石りんせきだった。

 その声に反応した藺授は、肩の力を抜いた。すぐさまきびすを返して高台の父の許へ歩み寄った。

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