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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第2章 礼星
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築造の妖し

登場人物

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

巩岱きょうたい…………細作しのびのもの。介象に仕える。

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。あやかしの狻猊さんげいしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

娄乾ろうかん…………萬軍八極のひとりとおぼしき富豪。


蚩尤しゆう…………邪神。


九尾狐きゅうびこ…………白い毛並み。探索、索敵が得意な妖し。

金烏きんう…………黄金に輝く烏のような妖し。探索、索敵が得意。

彭侯ほうこう…………木の精と呼ばれる妖し。寝床を作る業に長ける。

 尾のない犬のようなからだは、光沢を放った黒い毛に覆われている。よく見れば、人の顔に獅子のようなたてがみを備えているが、顔に掛からぬよう額の上で結っている。

 現れたのは、木の精とも呼ばれるあやかし、彭侯ほうこうだった。

「すまぬ、彭侯。今日も頼む」

 こくりとうなずいた彭侯は、近くの雑木林に向かった。登った木立から無数の糸を引き出すと、それを編み込むようにして、たちまちのうちに屋根を備えた寝床を作った。

 林立した木立の状況により、個別の寝床をこしらえることもあれば、大きな部屋のようにして、内部を仕切る壁を作ることもあった。これで夜露に濡れることも、害虫に襲われることもないばかりか、安眠による体力の回復と私的空間が担保される。

 これを一際喜んだのは、丘坤きゅうこんだった。

「いつもがとう、彭侯。これでゆっくり休めるわ。明日も先に進める」

 作業を終えた彭侯に、丘坤はにこやかな笑みで礼を云った。

 それに彭侯は、照れたような素振りで応じた。

 弓の使い方に眼覚めた介象かいしょうの活躍もあり、糧食には困らなかった。

 獲物の野鳥や野兎の肉、木の実や山菜、運が良ければ、行商人からべいなども手に入れることができた。それらを焚火で炙って糧食とすることが多かった。

 雨天のときは、焚火に蝟集いしゅうする介象らの頭上を覆うように、彭侯に屋根を張ってもらった。

 彭侯は、作業を終えるとすぐに消えてしまうこともあれば、糧食を貰い、腹を満たしてから消えることもあった。

 焚火に照らされた影が長く伸びている。既に陽は落ち、食事を摂って寝床に就くばかりだった。

すうまではもう少しです。あとは、娄乾ろうかんという人物が、萬軍八極ばんぐんはっきょくであることを自覚していれば良いのですが……」

 丘坤は、食べ終えた鳥の骨を焚火に放った。炎がパチリと音を立てた。隣に座り、鳥肉を頬張る彭侯の頭を撫でていた。

 丘坤の対面に胡座した介象が、はっとして返した。

「なるほど。丘家のように萬軍八極の役割と技を伝承しておれば良いが、長い時を経る間に、それが途絶えていることも考えられるか……」

「そのときは……萬軍八極がそろわずとも……蚩尤しゆうに立ち向かうしかないであろうのう」

 葉で作った小皿に注がれていたのは、行商人から買い取った酒だった。それを舐めるようにたしなんでいた霊亀姿の元緒げんしょが云った。

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