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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第2章 礼星
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狙撃の天稟

登場人物

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

巩岱きょうたい…………細作しのびのもの。介象に仕える。

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。あやかしの狻猊さんげいしもべに持つ。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

娄乾ろうかん…………萬軍八極のひとりとおぼしき富豪。


蚩尤しゆう…………邪神。


九尾狐きゅうびこ…………白い毛並み。探索、索敵が得意な妖し。

金烏きんう…………黄金に輝く烏のような妖し。探索、索敵が得意。

 介象かいしょうはその弓で、びゅっと矢を放った。

「むむ……?」

 その矢は地に突き立つと、狙い定めた鳥は驚いたように空へ飛び去ってしまった。

 しっかり獲物に狙いを定めても、幾度も仕留め損なっている。介象は、その度に皮肉な笑みを浮かべ頭をいていた。

 介象にとって、弓術は不得手ではなかったが、際立って得意という訳でもなかった。

「またもや豪快に外しとるのう」

 丘坤きゅうこんの肩に乗った霊亀姿の元緒げんしょが、せせら笑っている。

 それに反し、真剣な眼差まなざしで介象の挙動に注視していたのは、丘坤だった。

 面目なさそうに元緒と丘坤の許へ戻って来る介象に、丘坤は柔らかな微笑を湛えた。

「介象さま」

「ん?」

「古来より弓という武器は、戦況を大きく覆すことがございます」

「…………」

 丘坤は、八芒星はちぼうせいの痣を見せるように右手を差し出して介象の弓を催促した。介象より弓を手渡された丘坤は、背にした箭嚢やのうから一矢抜き取りながら、ずいと踏み出した。

 すぐさま何かを察した元緒は、丘坤から介象の肩にひょいと飛び移った。

 丘坤は弓に矢をつがえると、空を旋回している一羽の鳥に狙いを定めた。

「介象さま、まずは必中を意識するのです。放った矢が狙い定めた獲物を貫く場面を頭の中に描く。そして、矢に気を乗せる……」

 丘坤から湧いた気が、膜のように全身を覆っているやに見えた。

 きりきりと弓がしなっている。

「それらが定まるとき、矢を放つ瞬間は自ずとからだが反応します」

 気が乗った矢が、びゅうっと放たれた。その矢は空を斬り、宙を舞う鳥に吸い込まれるように走った。

「――――⁉」

 空を旋回していた鳥が、矢に穿うがたれ地に落ちた。

 唖然あぜんとしたのは、介象と元緒だった。

 振り返った丘坤は、にこと微笑んだ。

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