古代の騒乱
登場人物
介象…………方士。干将、莫邪、眉間尺の三剣を佩びる。
元緒…………方士。介象の師であり、初代の介象。
巩岱…………細作。介象に仕える。
丘坤…………美質な弓の名手。妖しの狻猊を僕に持つ。萬軍八極のひとり。
蚩尤…………邪神。
「一体、何がどうなっている?」
「ぐむむ。邪な気が大気に満ち始めたのも頷ける……」
元緒は、古に起きたあるひとつの騒乱、その経緯を切々と語り出した。
かつて――。
人と妖しが互いに干渉できぬよう、天が陽と陰に世を分かち、重ね合わせた。
それに抗う一体の妖しがいた。人の魂を喰らい、恐れる人々から邪神と崇められ、性悪の人が蔓延ることを愉悦とする。
蚩尤――。
天の采配に激怒した蚩尤は、魑魅魍魎の如き数多の妖しを率い、暴風、雷雨、火災、水害、濃霧、煙幕などを巻き起こし、思うがまま人と大地を蹂躙し始めた。
その蚩尤の暴走を阻止すべく立ったのが、元緒、つまりは初代介象だった。
介象は、己が育てた徒弟八人を主要として軍勢を率いると、妖しの軍勢と干戈を交えた。
劣勢を強いられた介象軍だったが、天より賜った含光、承影、宵練の三剣により、蚩尤を初めとする妖しを封印するに至った。
しかし、蚩尤が滅した訳ではない。
蚩尤復活を懸念した介象に、徒弟の八人は方術の技を己の子孫に伝えることとし、蚩尤復活の際に再び介象の許に集うことを誓った。
そして、未来の介象が徒弟の子孫だと判別できるよう、標としてそれぞれの右腕に八芒星の墨を入れ、子孫代々へ痣が浮き出るよう方術を施した。
それから、五百年ばかりの時が流れた。
時代は移り変わり、遂にその日が訪れていたのである。
「萬軍八極とは何だ?」
介象が、肩に鎮座した元緒に尋ねた。
「古の徒弟、八人のことじゃ。ひとりが萬の兵に匹敵するほど極めた力を持っておった。故に、萬軍八極と謳われた」
「蚩尤……。当時の介象ひとりでは敵わなかったということか?」
元緒は、呟くように返した。
「敵わぬ。儂の右足も蚩尤との戦で失った。蚩尤に従う配下の妖しも強大。其奴らも復活しておるとなると厄介じゃ。儂らも萬軍八極、八人の徒弟の子孫を集めねば、とても太刀打ちできん。それに……」
「何だ?」
云い淀んだ元緒に、介象と丘坤は首を傾げた。




