探索の妖し
登場人物
介象…………方士。干将、莫邪、眉間尺の三剣を佩びる。
元緒…………方士。介象の師であり、初代の介象。
巩岱…………細作。介象に仕える。
丘坤…………美質な弓の名手。妖しの狻猊を僕に持つ。
腰は曲がり、白髪白髭となった老父が、丘坤の手許に視線を送りながら出立の前にそう云った。老父の右手首の内側には、八つの角を持つ星型の多角形をした小さな薄い痣があった。歳を取るにつれ、その痣は徐々に薄くなっていた。
「丘家の誇りを胸に、しっかり務めを果たして参ります。父上におかれては、どうか永く健やかに」
静かに頷首した老父の眼には、涕が浮いていた。
微笑み返した丘坤は、佇立すると黒髪に飾った簪を意識し、霊気を練った。
すると――。
突如として獅子のような頭だけが宙に出現した。左右の眼には、瞳がそれぞれ三つある。狻猊という名の妖しだった。
丘坤は、首だけのような狻猊に命じた。
「極主さまを探し出して」
肯じた狻猊は、ふっとその姿を消した。
丘坤は、葦毛の馬に跨り丘邑を後にした。もう帰って来ることはないかもしれない。その想いより、己に課せられた使命を全うしようとする想いの方が強かった。
狻猊が発って、数日が経った頃だった。
「……見付けた」
馬上で独り言ちた丘坤の脳裏には、狻猊の視覚が共有されていた。
口伝通りの容姿だった。加えて、極主に相応しい霊気の持ち主だった。
幸いにも、遠くないところに極主はいた。
馬脚は自ずと速まった。手綱を握る手には力が入った。その右手首の内側には、八つの角を持つ星型の多角形をした小さな痣があった。どういう訳か、その八芒星の痣が日増しに濃くなっていた。
背後からの視線は相変わらずだった。
介象と元緒は、魯国の中核都市、防に辿り着こうとしていた。
左方より砂塵が見える。こちらに向かって疾駈している一騎があった。
その一騎が近付いて来るにつれ、馬上の者は、白の道袍を纏った美質な娘子であることが見て取れた。




