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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第2章 礼星
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探索の妖し

登場人物

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。

元緒げんしょ…………方士。介象の師であり、初代の介象。

巩岱きょうたい…………細作しのびのもの。介象に仕える。

丘坤きゅうこん…………美質な弓の名手。あやかしの狻猊さんげいしもべに持つ。

 腰は曲がり、白髪白髭となった老父が、丘坤きゅうこんの手許に視線を送りながら出立の前にそう云った。老父の右手首の内側には、八つの角を持つ星型の多角形をした小さな薄い痣があった。歳を取るにつれ、その痣は徐々に薄くなっていた。

「丘家の誇りを胸に、しっかり務めを果たして参ります。父上におかれては、どうか永く健やかに」

 静かに頷首がんしゅした老父の眼には、なみだが浮いていた。

 微笑み返した丘坤は、佇立ちょりつすると黒髪に飾ったかんざしを意識し、霊気を練った。

 すると――。

 突如として獅子のような頭だけが宙に出現した。左右の眼には、瞳がそれぞれ三つある。狻猊さんげいという名のあやかしだった。

 丘坤は、首だけのような狻猊に命じた。

「極主さまを探し出して」

 がえんじた狻猊は、ふっとその姿を消した。

 丘坤は、葦毛あしげの馬に跨り丘邑きゅうゆうを後にした。もう帰って来ることはないかもしれない。その想いより、己に課せられた使命を全うしようとする想いの方が強かった。

 狻猊が発って、数日が経った頃だった。

「……見付けた」

 馬上で独りちた丘坤の脳裏には、狻猊の視覚が共有されていた。

 口伝通りの容姿だった。加えて、極主に相応しい霊気の持ち主だった。

 幸いにも、遠くないところに極主はいた。

 馬脚は自ずと速まった。手綱を握る手には力が入った。その右手首の内側には、八つの角を持つ星型の多角形をした小さな痣があった。どういう訳か、その八芒星の痣が日増しに濃くなっていた。


 背後からの視線は相変わらずだった。

 介象かいしょう元緒げんしょは、魯国ろこくの中核都市、ぼう辿たどり着こうとしていた。

 左方より砂塵さじんが見える。こちらに向かって疾駈しっくしている一騎があった。

 その一騎が近付いて来るにつれ、馬上の者は、白の道袍どうほうまとった美質な娘子であることが見て取れた。


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