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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第1章 邪神
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不屈の将校

登場人物

昭公しょうこう…………国の第二十五代君主。三公により魯国を追放される。

季平きへい…………魯国の司徒しと。三公のひとり。三桓氏さんかんしと呼ばれる。

叔孫豹じょそんひょう…………魯国の司馬しば。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

孟献もうけん…………魯国の司空しくう。三公のひとり。三桓氏と呼ばれる。

王子喬おうしきょう…………冥界より派遣された方士。

蚩尤しゆう…………邪神。

陽虎ようこ…………三公に仕える魯国の若き重臣。

裴巽はいそん…………魯国の若き将校。


かん…………狸に似た隻眼せきがんあやかし。

鐸飛たくひ…………怪鳥の妖し。人面で一足。

飛廉ひれん…………風を自在に操る妖し。

 裴巽はいそんげきやいば飛廉ひれんに届く、その間際だった。

 飛廉は、左手で担ぎ持っている白い布袋の口を眼前の裴巽に向けて緩めた。

「――――⁉」

 裴巽のからだが、何かに弾き返されたように後方へ吹き飛んだ。その身は、陽虎ようこの足許まで転がっていた。

 飛廉が抱えた白い布袋から飛び出したのは、一陣の突風だった。

「良い余興だ。飛廉を斬ることができたならば、褒美を取らせる」

 蚩尤しゆうは、吹き飛ばされた裴巽に激励の声を浴びせた。

「ひとつでも飛廉に傷を与えろ。同時に己のしもべとなるよう念じてみるがいい。そうすれば、飛廉は消え、貴様の僕となる」

「…………」

 裴巽の身を案じた陽虎が駈け寄った。その身を起こそうと、陽虎は裴巽の肩に手を掛けた。

「だ、大丈夫か、裴巽……?」

 裴巽は、片膝を突いて身を起こした。炎が灯ったような双眼は、飛廉に据えられている。

「陽虎……人の身を案じていないで、さっさと三公さまをお連れし、ここから逃げろ」

「あれは……一体、何なのだ?」

「……知るか」

 裴巽の口辺から血が垂れている。口の中を切ったようだった。その血をぞんざいに拭うと、再び勢いよく飛廉に突進した。今度は息弾に狙われぬよう蛇行して馳せた。

 飛廉が繰り出す舞爪ぶそうが、兵たちを斬り刻んでいる。

 阿鼻叫喚あびきょうかんが響き渡る玉座の間で、肩肘を突いた蚩尤は、三公に聞こえるように声を張り上げた。

「国の重臣ともあろう者が、余興に甘んじ、民をないがしろにしておって良いのか? 城郭まちには、既に我が配下が民草を狩っておるぞ」

「――――⁉」

 蚩尤の声に、三公と陽虎は眼をいた。

「どうなさいますか……?」

 顔色を変え、眼を泳がせた陽虎は、季平きへい叔孫豹じょそんひょう孟献もうけん誰人だれへともなく尋ねた。


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