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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第7章 智星
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因縁の対手

登場人物

娄乾ろうかん…………剣の手練者てだれあやかしの虎憑耳こひょうじしもべに持つ。曳影えいえいの剣をびている。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

老母…………娄乾の母。右腕に消えかけた八芒星はちぼうせいあざが浮く。

介象かいしょう…………方士。干将かんしょう莫邪ばくや眉間尺みけんしゃくの三剣をびる。

藺離りんり…………槍の手練者てだれ。妖しの火鼠かそを僕に持つ。萬軍八極のひとり。

欧陽坎おうようかん…………矛の手練者。妖しの短狐たんこを僕に持つ。萬軍八極のひとり。


蒼頡そうけつ…………妖し。剣の手練者。蚩尤しゆうに仕える九黎きゅうれいのひとり。

此処ここは、御任せを」

 娄乾ろうかんは、剣を抜き放って歩み出た。奇妙にも黒い剣身だった。臆することなく、蒼頡そうけつに向かっている。

虎憑耳こひょうじ

 娄乾が呼ばわると、その肩越しには、不気味にも瞳が翡翠ひすい色に輝く、黒い虎のような頭が宙に出現した。左右の耳がそれぞれ三つあった。あやかしの虎憑耳だった。

「――――⁉」

 顔色を変えたのは、蒼頡だった。

 それを見て取った娄乾は、閃光の如く蒼頡に身を寄せると、矢継やつばやに剣撃を浴びせた。

 ギン、キン、ギン――。

 しかし、蒼頡は一歩たりとも後退することなく、娄乾の斬撃を長刀でしのいでいる。

 残響だけがあった。互いに繰り出す神速の妙技は、動いていないようにさえ見える。

「お、おお……」

「ほう」

 眼を見張った藺離りんり欧陽坎おうようかんが感嘆の声を上げると、介象かいしょうは不敵に笑った。

 刹那せつな――。

 蒼頡と娄乾は、互いに弾き合ったように数歩後退した。

曳影えいえいの剣に虎憑耳とは……。娄基ろうきの子孫だな?」

 眼前に剣を構えた蒼頡が、四つ眼を細めて娄乾に鋭い視線を投げた。

「その出で立ち、蒼頡だな? これは好都合。貴様をたおせば、我が始祖、娄基を超えられたことを証明できる。介象さまに、貴様の刃が届くことはない」

 娄乾の八字髭はちじひげが不気味に歪んだ。

「いけ好かない女だった。数多あまたの時を経て、再び曳影の剣とその妙技に相見あいまみえようとは。斬撃は強さを増している。だが、一閃のはやさは劣った」

 蒼頡は、肩の力を抜くと、長刀をさやへ収めた。

 同時に、はらりと地に落ちたのは、娄乾がまとった道袍どうほうすその切れ端だった。蒼頡に斬られていた。

「――――⁉」

 眼をき、絶句したのは娄乾だった。

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