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報仇の剣 -萬軍八極編-  作者: 熊谷 柿
第7章 智星
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万端の母子

登場人物

娄乾ろうかん…………剣の手練者てだれあやかしの虎憑耳こひょうじしもべに持つ。曳影えいえいの剣をびている。萬軍八極ばんぐんはっきょくのひとり。

老母…………娄乾の母。右腕に消えかけた八芒星はちぼうせいあざが浮く。

「…………」

 娄乾ろうかんは微笑を湛えたまま、曳影えいえいの剣をさやへ収めた。

「知ってのとおり、介象かいしょうさまの八徒弟のうち、その伝承が確認されているのは、我が娄家を含める五家。残りの三家は、その家系が続いているのかさえ確認できておりませぬ」

 はだけたほうを着直すと、娄乾は一息吐くように老母の隣へ腰を下ろした。

「確か、介象さまは、再び萬軍八極ばんぐんはっきょくが集った時、何らかの術が作動するよう仕掛けておるのでしたな」

 老母は、静かに頷首がんしゅした。

 娄乾は、思いを馳せるように虚空を見上げた。

「我ら娄家は、長い年月を掛け、やれることをやってきました。それに、智謀を備えるのも娄家の慣わし。八人が集わずとも、勝算がない訳ではありませぬ」

 娄乾は、老母に顔を向けると続けた。冴えた眼差しだった。

「御安心召され、母上。きっと、介象さまが再び蚩尤しゆうを封印してくれましょう。私はそれを全力で支援するのみ」

 娄乾は、おもむろに腰を上げると声を張った。

「さあ、そろそろ介象さまを迎える準備を致しましょう」

 振り返った娄乾は、老母に破顔を向けた。

 老母もそれに微笑み返すと、静かにうなずいた。


 魁偉かいい風貌ふうぼうの一行だった。

 従者のひとりは、へそまで達するほどの長髯ちょうぜんだった。白頭巾しろずきんを被り、道袍どうほうまとい、その上から胸背を保護する胴巻きを備えている。刃を穂鞘に包んだ柄が朱色の長柄を肩に掛け、葦毛あしげの駒を曳いていた。

 もうひとりの従者は、黒幘こくさくを被り、虎のような髭を蓄えていた。胸板は厚く、黒のじゅに白のを纏い、胸背を保護するような胴巻きを備え、奇妙なことに、腰には大小幾つもの瓢箪ひょうたんをぶら下げている。柄は紺色だった。先端を穂鞘に包んだ矛を掲げていた。

 そして、葦毛の駒にその身を預けた者は、漆黒の襤褸ぼろを纏っている。壮室の頃も半ばを過ぎているだろうか。無造作な黒髪は肩まで伸び、眉はがり、鼻梁びりょう高く、首は太い。眼を開けばらんと輝く精悍せいかん偉丈夫いじょうぶは、腰に三振りの剣をびていた。

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