28 干物
「見てみて」
「おぉぉ」
テリアが指さすので見てみる。
すごい。一面に干物が干してあった。
よく見ると、アジとサバがある。
それとは別にピンク色の絨毯みたいになっているのがある。
小エビだった。
「何だろうと思ったけど、一面エビなんだねぇ」
「これ、これほしい」
「いうと思った」
さっそくお店の直売所で干物のアジ、サバ、エビを購入する。
「へへへへ」
俺はホクホク顔だ。
干物といっても俺の家のある田舎まで持ってくることが難しいのだ。
そのためこういう海産物は入手しにくい。
せっかく海に来たんだから、買いまくるに限る。
ここに来る前にワイバーンの魔石だとされる大型魔石を一つ売り払った。
これでかなりの金額になったのだ。
前、物珍しさで買ったんだけど、大型の魔石は需要のわりにだんだん取れなくなっていて、最近値段が上がりまくっていたので、高値で売れた。
「アジ、サバ、それにエビだぜ」
「あ、うん」
「テリアはあんまり魚より肉か?」
「いやぁ、そうでもないけど、そこまでして欲しいほどなのかと思って」
「まあな、ちょっと前世では魚に思い入れがあって」
「あーなるほど」
一応理解してくれたようだ。
エビとか乾燥してても、めっちゃいい匂いする。
これ、色々な料理に入れたら化けるぞ。
こういう食材、探してたのだ。
干物の話は聞いていたし、実は少量でも入手していたのだけど、小エビはそこまでメジャーじゃないのか情報を入手していなかったのだ。
こういう新しい発見もあるのが、旅は素晴らしい。
さて帰りの便で戻ろう。
船を見ると、干物が詰まってる箱だという荷物を満載していた。
なるほど、息は生活物資、帰りは干物と。
ちゃんと復路でも荷物があるんだね。
「しゅっぱつしまーす」
「はーい」
岸を離れていく。
しばらく順調に進んだ。
「アラリン、見てみて」
「なんだろう」
「イルカ、イルカがいる」
「ほんとだ」
船と平行にイルカの群れが泳いでいた。
三角の背びれが水面から飛び出ている。
たまに体ごと、ぴょんぴょんとジャンプしているのも見える。
しばらく一緒に泳いでいたけれど、そのうちどこかへと消えていった。
「おい、見てみろ、シーサーペントだ」
「あれが」
船員が右の方へ指さしているので、よく見てみる。
なるほど? ウミヘビの巨大な感じのものが遠くの水面付近を泳いでいる。
かなりでかい。
「あんなの、危なくないんですか?」
「そりゃ、危ないよ」
「危ないんだ……」
海はなかなかハードだった。
剣や魔法も使えるとはいえ、さすがに怖い。
「戻ってきた」
「王都だね」
町が見えていてどんどん大きくなってくる。
そしてそのまま港に到着した。
「はい、到着」
「さきに酔い止め飲んでおいたから、平気だったね」
「だな」
やっぱり魔法薬は素晴らしい。
こうして離島、サファマール島への旅は終わった。
また、マルスのお昼寝時に戻る。
「やっぱここが落ち着くわね」
「そうだね」
二人してホテルでのんびり夜を過ごすのだった。




