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27 バナナのゆくえ

 そうそう、バナナの露店。


「あったあった、バナナ屋さん」

「おーほんとうだ、あったね!」


 二人でキャッキャと盛り上がる。

 王都に行けばバナナが売っているという情報は聞いていた。

 露店街の奥の方にひっそりと売っていたのだ。

 あまり流行っているようではない。


「値段がちょっと高いのかな」

「だろうねぇ。ヒューマンちゃんたちにはきついかもね」


 エルフは余裕の表情を見せる。


「んじゃ、テリアのおごりで買いますか」

「えっ、いやいやいや、アラリンお金余裕でしょ」

「余裕だけど、どやぁ」

「くぅ、ブルジョアめ。この人でなし!」

「人でなしではありません、ちゃんとヒューマンです」

「不老のくせにヒューマンの範囲なんですか!」

「そう言われるとちょっと困る」

「でしょ」


 口で負けたので俺が普通に買うことになった。


「まず一本、試食ぶんください」

「はいよ」


 バナナを普通に一本買ってテリアと分ける。

 甘い。普通に美味しい。

 なんというかコクがあって美味しい。こういうねっとりした果物は珍しいほうかもしれない。

 他にはアボカドとかドリアンとかがねっとり系だけど、どちらも南国仕様なので、見かけないのだ。


「えっと、そうだな、三十本くらいかな、ください」

「おおお、まいどありがとうございます」


 お店の人がさすがにびっくりする。

 まあこんなに大量に買っていく人は珍しいのだろう。

 こういうのは話のネタにもなるし、出して食べさせる喜びがあるからね。

 高いワインもそんな調子で買い込んだんだけど、正解だったし。


 ちょっとオマケまでしてもらった。

 お得お得。

 俺のアイテムボックスは腐らないから楽なのだ。


「さてバナナもゲットしたし、海見に行こうか」

「そうですね!」


 王都は港に面している。

 河口付近に広がっているからだ。

 立地としては東京、名古屋、大阪などと同じような感じだろうか。


 川の河口付近は周りよりちょっと深いので、船の往来の道になっている。

 それで河口すぐの横が港だった。


「おぉぉ船がいっぱいいる」

「すごいな、テリア見てみ」

「見てる。感動しちゃう」


 大型帆船が何隻も係留されていた。

 荷物を積み下ろししている船もある。

 それから中型の海獣を捕る捕獣船。

 魚を専門とする小型の漁船が並んでいる。


「えっとどこだろう」

「こっちだよ、アラリン」

「おう」


 確かに看板が出ていた。


「えっとサファマール島、定期便か」

「うむ」


 なぜかテリアがうなずく。

 ここからでも見えている。沖に離れ島があるのだ。

 それがサファマール島。

 観光名所でもあり、けっこう人気だ。


 さっそく船に乗り込む。

 午後の往復に間に合った。


「では出発します」


 帆を上げて海を進みだす。

 中型船だった。

 外洋用の大型船ほどではないが、そこそこ大きい。

 まあ近場だし、そこまで大型の船を使うまでもない航路ということなのだろう。

 中央には馬車を一台載せている。

 馬車は全部で三台がやっと載るくらいの大きさだろうか。


「げぷ」

「あぁちょっと酔いそうだ」

「エルフ特製、酔い止め飲んどくんだった」

「あるの?」

「あるよ!」


 ごくごくごく。

 気持ち悪いので戻しそうだが、必死にポーションをあおる。

 二人で酔い止めを飲んだ。


「ふぅ、死ぬかと思った」

「ねー」


 なにを船酔いぐらいでと思うかもしれないけど、ずっと揺れてるんだもん。

 これずっと続くとしたら厳しいよ。


「やっと着きそうだ」

「やー酷い目に遭った、あはははは」


 エルフちゃんは元気なもんだ。

 そういえば立ち直りが早いんだった。


 そうして村を歩く。

 広くも狭くもない。一般的な村だ。

 船からは生活物資を次々降ろしていく。

 ここでの暮らしは王都に頼る部分も多そうだ。


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