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22 神殿まわりと再出発

 神殿をあとにして、なんだか空気が違うことに気が付く。


「やっぱり神殿の空気感、すごかった」

「でしょう。精霊様があの奥に実際に住んでいるらしいんだから、そりゃね」

「だよなぁ」


 普段は姿を見せることはないという話ではある。

 でも過去はそうではなかったらしいとかで、熱心な信者はたくさんいるのだ。

 俺は転生者で世界の感じ方がちょっとずれているのはある。


「お水、飲んでいくでしょ」

「うんうん」


 拝殿以外にも、いくつかの建物があり、その一つが湧水だという「鏡の池」の水だ。

 柄杓で掬って飲む。


「美味しい。なんだか十歳ぐらい若返りそう」

「そんなにか? どれ。うんっ、お、本当だ。冷たくて美味しい」

「たっぷりの精霊力が含まれてるこの感じ、いいね」

「そうなんだ、これポーションとかには?」

「もちろん使えるけど、鮮度が命だから」

「そっか、そか」


 商売道具に一つ欲しい水だといっても、持ち運ぶのは面倒だ。


「この水があって、この領でポーション製作が盛んじゃないのが、逆に不思議なくらい」

「そんなにか」

「うん」


 本職の意見はまともなのだろう。


「まあ、水だけでも少し効果があるみたいだし?」

「ほーん」

「もしかしたら、水だけで治すのかもね」

「んなばかな」

「さぁね~~」


 はぐらかされたが、小さな傷ぐらいなら確かにあの水で治るかもしれない。

 なんともそれでポーション要らずとかだったらそれはそれですごい。


 そんなこんなで一泊してまた進む。

 王都まで行けば海に出る。王都メルリードはもうちょい先だ。

 国際貿易港だという話だが、本当だか目にしたことはない。

 西の国にも東の国それから、はるか南の国まで。

 海を渡ればもっと広い世界が俺たちを待っている。


 まあそこまで行くつもりはないが、王都につけば海外の情報も手に入りやすい。

 例えば道端でバナナを売っているという噂があった。

 南国と言えばバナナだ。うむ。

 コーヒーや紅茶、それから砂糖なども輸入している。


 いろいろな世界があるのだと、知識では知っていても見聞きするのとは、やはり感覚からして違うのだろう。


「んじゃ、出発」

「ほーい」


 呑気にエルフが応えてくれる。

 さて、俺たちはゆっくり歩いてきましょうかね。

 また朝早くの馬車が俺たちを横目に追い抜いていく。

 いいんだ。このエルフは気が長い。

 俺はもうそろそろ死んじまうかもしれんが、今のうちだと思っている。


「お馬さん、パカパカ」


 テリアが手で馬の真似をする。


「パカパカというか、バカバカって感じだな」

「え、なにそれ?」

「なんでもない」


 まあ分からんでもいい。エルフのテリアとは気が楽でいい。

 時間間隔がおかしいもの同士、仲良くやっていこう。


 川沿いにずっと道がある。

 河川敷は整備されていたり、なんとなく堤になっているところが多い。


 こういうのは労役といって、税金のほかに、労働でもって税金を払うというものがある。

 商人は金貨などで払うことが多いが、老民はもっぱら麦やこの労役で支払う。

 ただこの世界では、主に土魔法で護岸工事もするので、普通の重労働と同じかというと、雰囲気はだいぶ違うようだ。


 その堤の上にずっと道が整備されている。

 ただし橋はあまりない。


「お団子たべてこ、お団子」

「お、おう」


 途中に茶屋があった。

 街道沿いにはこういやってちょいちょち休憩所が出来ている。

 もともとは広場と水場があるだけで何もない休憩場所だったのだろう。

 そこに目を付けた人がこうして茶屋などを開くのだ。


「いらっしゃいませ~」

「お団子三つ~」

「はーい」

「二つ、食べるのか?」

「うんっ」


 まったく食いしん坊なエルフだ。

 まあ、なぜか食いしん坊な割には太らないし、いいんだけどね。

 ちょっとエルフのそういう生態はうらやましい。

 いや、俺も若い体のままなので、筋肉はつきやすいが贅肉はほとんどない。


「おいしぃ」

「あぁ、うまいな」


 お団子を食べて、ずずずとお茶を飲む。

 これはいわゆる高い紅茶とかではなく、その辺でとれる薬草茶だった。

 こういうものが民間には多い。


 さいわいその辺の山にたくさん生えているから自家製なのだろう。


「んじゃ、行くぞ」

「はーい。ごちそうさまでした」

「出発」

「しゅっっっぱっつー」


 またとぼとぼと歩き出す。

 俺たちの旅は続く。



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