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第三十章 宇宙人狼VS??? その2

30.3 宇宙人狼VS??? 観戦模様 アラトの部屋 中編


 突如、マネキンの全身がグニュグニュと変形し始める。


 真っ黒いアメーバと化してウニョウニョとうごめき、やがて、とある形状へ姿を整えていく。時間をかけゆっくりと。


 真っ黒い人影、足元は平べったい乗り物の形。


 ほかでもない、対戦中の宇宙人狼と全く同じ物体へと変貌した。ただし、全身は黒一色。狼の毛並も、グライダーのエンジン部分も、文字通り全てが黒で統一されている。


 上空でマネキンの様子を観察していた人狼ゼロがガルルとうなる。


 間髪入れず、再突撃。


 変身が完了した暗黒兵器、黒い人狼もグライダーのエンジンを全開させ急発進する。さらに二刀流シックルブレードも展開して構えた。


 空中で交差する人狼ゼロと暗黒人狼。高周波ブレード同士がぶつかり火花を散らす。凄まじい空中戦が繰り広げられるが、両者は完全に互角の実力。


 暗黒兵器は、姿、武器のコピーだけでなく、戦闘技術もコピーするようだ。


《や、やっぱりこうなったかぁ! と皆さん叫んでいることだろう! これはヤバイぞぉ! 敵をコピーして全く同じ性能、それでいて無敵の肉体! 究極兵器と呼んで差し支えないのかぁ!? 元祖ハテナキャラ、いきなりの優勝候補だ!》


 空中戦のさなか、人狼ゼロがグライダーの前面にある発射装置から、ボール状の物体を六つ続けて射出した。狼頭と同じくらいの大きさ、直径20cm程度。


 ボール状の物体は、人狼ゼロの頭上で正六角形を描くように整列する。ボールが浮遊する位置座標は、人狼ゼロの立ち位置を基軸として固定されており、グライダーがどのような飛行をしようとも、定位置を維持している。宙に浮かぶボール型ドローンのガーディアンと称すれば丁度いい。


 その6基のボール型ドローンからレーザー弾が発射され、暗黒人狼を狙い撃ちし始めた。


《ヨシ、新情報ゲット! たった今、ゼロ選手が攻撃している天使の輪的なボール兵器は、『オートップ』と呼ばれる自律式浮遊射撃兵器だ。レーザー弾を発射して敵を攻撃する優れモノだ! ゼロ選手の思考だけで操作できるらしいぜぇ!》


 暗黒人狼は、オートップのレーザー弾を避けるため、防戦一方となってしまった。


 暗黒人狼を追跡しながら、二本のシックルブレードをつなぎ合わせてS字ブーメランを作り出す人狼ゼロ。


 回避行動に専念する暗黒人狼に向け、全長160cmの巨大なブーメランを勢いよく投げつける。


 大きく弧を描いて飛翔するS字ブーメランは、途中で二つのブーメランに分離した。一つは暗黒人狼の左から、もう一つはS字状に軌道を描いて右から飛んでくる。


 左右から挟み撃ちとなった二つの高周波ブーメランは、見事、暗黒人狼を同時に捉えた。胴体とグライダーを切断、バラバラとなった暗黒人狼が地上へと落下する。


 が、分断された各パーツがアメーバのように変化しニュイッと伸びた。お互いをつなげて一瞬のうちに元の暗黒人狼を形成していく。


《これは、とんでもない驚異的な再生力だ!》


 二つのブーメランが人狼ゼロの手元に舞い戻る。


 暗黒人狼が元に戻る間に、オートップのレーザー弾が数発ヒットした。真っ黒い肉体の一部が吹っ飛びえぐれ、粉々になった破片はレーザーの高熱で溶けて消滅した。


 見たところ、ダメージは小さい。浮遊する小型兵器の破壊力はレーザーガンと同等レベルだ。生身の肉体がレーザーで焼かれるよりは、粘性合金の耐久力の方が高いと判断できる。


 暗黒人狼は、えぐれた肉体を黒い粘性合金で埋め、損傷個所が修復されていく。


《なるほど、まったくダメージを与えられないわけではない、ということだぁ! しかし、その再生能力はやっかい極まりない!》


 人狼ゼロが唸った。手応えを感じたのか、それとも手強てごわいと感じたのか。その両方かもしれない。


 完全復活を遂げた暗黒人狼も、真っ黒いオートップを六つ射出した。


 暗黒人狼の頭上をガーディアンのように浮遊しながら、レーザー弾を発射する。オリジナル人狼のオートップとまったく同じ性能のようだ。


「なんかスゴイことになってる……、ねぇ、ギリコ」


「たしかに、これは驚異のテクノロジーです。

 ナノテクノロジーで相手の姿を模倣するだけであれば、開発可能な技術。しかし見たものを、性能までコピーして攻撃手段として使用できるというのは、技術レベルが各段に高いことを意味します。

 わたくしのIQ10,000をもってしても、不可能な領域でしょう」


「そこだよ、そこ! いったいどこのどなた様が造ったねん!」


「残念ながらわかりません。

 ただ、一点だけ言えることがあります。相手の攻撃を食らうまでコピーできないというのが、弱点の一つではないしょうか」


「なるほど、言われてみれば……」


《う~む、先ほどからほとんど進展無し。お互いのレーザー弾が打ち消し合う状況がずっと続いているぜ!》


 双方の自律式兵器がまったくの同性能であるという証拠だ。


 そして、この狭い空間をお互い縦横無尽に飛翔しつつ、交錯する瞬間、斬撃を放つが双方無傷、格闘技術も互角なのだ。


 人狼ゼロのオートップが1基、唐突にその頭上を離れ、暗黒人狼に向け飛翔した。暗黒人狼の真正面まで直進し、突然自爆。爆発した空間に小さな渦が現れ、ものの数秒で直径2m程の暗黒の渦へと膨張した。


 暗黒の渦は周囲の空気を吸引している。咄嗟とっさに避けた暗黒人狼だが、バーニアフルパワーのはずのグライダーが動きを止め、暗黒の渦に吸い込まれないよう抵抗していることが見てとれる。


 なんとそこに、小型のブラックホールが出現したのだ。


《新情報キタァー! これは、ゼロ選手の必殺奥義、ミニブラックホールだぁ! あのオートップが自爆してブラックホールを科学的に生み出しているんだそうだぁ! これはスゴイぞ!

 ちなみに、ゼロ選手はエイリアンハンター業界で超有名人。いや、有名人狼。

 記録によりますと、これまでに宇宙を旅し続け、十万体以上の宇宙害獣を駆除しているぜ! おったまげのスゴ腕ハンターだ! それはなんと言っても、このミニブラックホールのおかげってわけさ! 無敵の必殺技だぜ!》


「ダメ、いや、それはダメよ、止めて!」


 急にギリコがソファーから立ち上がり、アラトの身体を揺さ振ってきた。


「これ、まぎらわしい声を出すんじゃない、義理子女史! 誤解されるがなぁ」


「誰からですかぁー、と突っ込みたいところですが、そこは我慢して。これはマズイです、アラトさん!」


「すでに言ってるがなぁー、と一応突っ込んで、なにがマズイィー?」


 アラトを揺さぶるスピードが加速していく。


「非科学技術による魔法攻撃のコピーはおそらく不可能領域! 

 ですが、科学技術で生み出す攻撃手段は全てコピーできるはずです! ブラックホールを生成する科学技術を、あのマネキンがコピーしちゃいます!」


「あうあうあうあう、やめ、あうあうあうあう」


「いや、ダメェ! そんなのアラトさんが喰らったら、跡形もなくこの世から消滅しちゃいます!」


 ますます加速。


「あうあうあうあう、くるし、あうあうあうあう」


「いやぁ! アラトさん、死なないでぇ!」


「ギリコだよ、殺すつもりなのは!」


 ギリコをむりやり突き放し、ようやく揺さ振り地獄から脱出したアラト。


 その後、ギリコの懸念は証明されることになる。



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