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第二十九章 義理子先輩のサポート その1

29.1 義理子先輩のサポート 前編


 第一回戦第十四試合終了。


 魔法少女の勝利。


 アラトは握った拳をワナワナと震わせていた。


「ギリコォォォ~、帰ってきたら、お父様の説教じゃぁぁぁ!」


 早速、ギリコの部屋を訪ねる。


 インターホンを鳴らすが、返事は無い。前回のおパンツ事件の反省から、無理に押しかけない。


 しばらくすると、ビショビショになった女スパイコスのままでギリコが戻ってきた。


「これはこれは、クレオパトラ・ヴィーナスさんではないですかぁ。ご機嫌麗しゅう~」


「オホホホ、おはようございます。アラトさんも、お元気そうで」


「お陰様で、メッチャ元気ですわ! ちなみにお父様の額から血が噴き出しないかのぉ~、ちょっと、見てくれ」


「ギリ、大丈夫です」


「大丈夫なもんかぁ! なんで大会に出ること内緒にしてたぁ!」


「だって、お父様、今みたいに怒っちゃうし……」


「まぁ、そうですけどぉ!」


 このAGIアンドロイドは、アラトが勝手に始めた二人の父娘設定を受け入れてくれたらしい。アラトと毎日一緒に行動することで、思考の柔軟性が向上している証拠だ。


「アラトさん、着替えたら、お部屋に行きますので待っていてください。ここ、通路ですから」


「うぅぅぅ~、仕方ない、部屋で待ってるぞぉ!」


 大股歩きで不機嫌をき散らしながら、アラトは部屋に戻った。



 ◆   ◆   ◆



 1時間後、アラトの部屋。


 例によって、ソファーの上に正座するギリコの姿があった。アラトは腕を組み、膨れっ面。説教タイムのスタートだ。


「さぁ、ギリコちゃん、いったいどういうことなんですか? ご説明を!」


 スクッっとソファーの上で立ち上がるギリコ。グラビアアイドルのようなセクシーポーズを決める。


「ある時は美人AIタレント、またある時はアパレル系美人社長、そして女スパイ、しかしてその正体は……キラリン! 超絶美人戦士ダイジョウ……」


 バチコォーン! 「止メレ!」


 アラトは手元にあった対戦表をまるめ、勢いよくギリコの脳天をジャンプぎみに叩いた。いい音が鳴り響いた。


「マジ止メレ! ディープラーニング、なんでもありか!」


「海より深く反省」


「ホンマかいな!」


 両手で脳天をさすり、痛かったとアピールするギリコ。演技と知りつつ、フェイク涙目がかわいい。


「さぁ、ギリコちゃん、まじめに答えてください!」


「はい」


 ソファーの上に正座で座り直すギリコ、しおらしく語り始める。


「アラトさんを優勝に導くためには、出場者の能力と弱点を考察するためのデータ収集が必須なのです。わたくしも出場して、その機会を広げる必要がありました」


「な、なるほど。いきなり納得できる言い訳だな」


「それに、わたくしはこの第一回戦で意図的に敗退することを、最初から決めていました。

 なぜなら、第一回戦が全て終了すれば全出場者の能力は明らかになり、データ収集がほぼ完了するからです。であれば、第二回戦以降は、アラトさんのバックアップに専念することができます」


「たしかに一理ある」


「しかもトーナメント勝ち残り組は、自分の世界へ行き来することが許可されていません。不正を防ぐためです。

 ところが、わたくしが敗退者になれば、元の現実世界へ行き来できるようになりますので、アラトさんをバックアップする活動範囲が広がり、断然有利になるのです」


「わ、わかりました。そこまで考えていたとは……。怒ってゴメンね、ギリコ」


「いえ、誤解が解けて良かったです。仲直りできたということでよろしいですか、お父様」


 アラトの顔を見つめ、ニコッと笑顔になるギリコ。


「う、うん」


「ではお父様、昨日の続きを。次はわたくしの番ですわ」


「な、なにを言うか! 父と娘がチューしたら近親相姦でしょ!」


 ソファーから立ち上がり、アラトの手を握るギリコ。


(いともあっさりスキンシップに慣れよってからに! 不得意なんちゃうんかい!)


「わかりました。では、一人の男性として見ている血のつながりのないアラトさん、今日はわたくしからチューさせていただきます」


 超絶美人アンドロイドがアラトに威圧的に迫ってくる。


「えーと、その前に教えてよ」


「はい、なんでしょうか?」


「き、昨日のチューの感想教えてよ……」


 ソッポ向いて照れながらボソボソ訊ねるアラト。声が段々と小さくなる。


「はい。アラトさんは十二分にわたくしの唇を堪能したものと認識しています。発汗量も多く、赤面し、脈拍も上がっていましたので」


 ダァァァ~と雪崩のように床に倒れ、ぬかるみのようにグシャと潰れるアラト。死に損ないのゾンビっぽい。


「は、恥ずかしいなぁ~、もうぉ! 僕でなくて、ギリコさん本人が感じたことです!」


「わたくしがですか? わたくしはアンドロイドです。世界一の超高性能ですが、性の快楽を認知する機能はありません。

 一応、触覚センサーで入手したアラトさんの唇に関する各種解析データを記憶しました。体温、硬度、肌の保湿状態などです。同年代の一般男性と同等であると判定しました。それでよろしいでしょうか?」


 床に寝転んでいたアラトが、浜辺に打ち上げられたクラゲのようにグニャグニャになった。もう単なる死体だ。



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