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第二十八章 魔法少女VSアンドロイド その2

28.5 魔法少女VSアンドロイド 試合模様その二


 魔法少女は何もしていないのにかかわらず、突如何もない空中にボッと炎が点火される。炎の中から一人の男が出現すると少女の右隣に降り立った。炎は一瞬で消滅した。


「冷静に、お嬢様。いつもの悪い癖が出てますぞ」


 さらに少女の左側で旋風が一瞬だけ巻き起こり、一人の女性が出現、少女の左隣に降り立った。


「カドリィちゃん、ヨダレ、ヨダレ」


 注意を受けた魔法少女は、ジュルっとよだれを拭き取った。


 一人目の男。見た目はアラブ系の男性。


 赤いアラビアンパンツに赤いターバン、上半身は裸で筋肉隆々。口、アゴ、頬に生えた黒ひげが凛々しく、彼の精悍せいかんな顔立ちを象徴している。口ぶりから執事といえなくもない。


 炎と赤、そして腰に巻いている赤い帯の中央に、太陽を模したデザインがあしらってある。間違いなく『火の精霊サラマンダー』だ。


 二人目の女性。こちらもアラビアンダンサーといった風貌。


 妖艶で美しい顔立ち、エメラルドグリーンの瞳とロングウェーブヘアーがセクシーさを倍増させる。


 全身が緑一色に統一されたダンサービキニに、個性的なデザインのダンサースカートは、両足がほとんど隠れていない。ベルトや髪飾り、イヤリング、ネックレス、ブレスレットなどはゴールドとエメラルドで派手に装飾してある。


 右手に緑色の羽根扇子。魔法アイテムだろうか。


 こちらもその特徴から『風の精霊シルフ』で間違いない。


 新しいキャラクター二人の登場に、ギリコが口火を切った。


「邪魔してほしくないものですわ」


「うちのカドリィちゃんをたぶらかすのはお止めになってちょーだい!」


 風の精霊シルフがギリコに応えた。


 渦を巻くように羽根扇子を一回転させると旋風が発生、ジュラルミンケースの中のドル紙幣を巻き込んで吹き荒れる。数百枚のお札が所狭しと宙を舞い踊った。


 よく見ると、ケースの一番上の札束だけが本物で、その下にはマシンガンが2丁隠されている。


 ギリコはジュラルミンケースをから素早くマシンガン2丁を取り出した。


 危険を察知したシルフとサラマンダー。


「えいっ!」


 シルフは舞い散るドル紙幣を大量に風に乗せ、ギリコに向けて飛ばし視界をふさごうと試みた。


 その間にサラマンダーが呆然とする少女に後退を促す。


「お嬢様、今のうちに後ろへお下がりください!」


 ギリコは有無を言わさず精霊二人に向け銃撃。


 発砲の直前、少女から咄嗟とっさに離れるサラマンダー。


「きゃぁぁぁぁぁ~」


 魔法少女の悲鳴。


 闘技場の狭い舞台上に隠れる場所は無い。魔法少女は頭を両手でかばいながら床に身を伏せる。


 マシンガンから連射された数十発の弾丸群は、二人の精霊の身体を素通りした。彼らの肉体はアストラルボディ、実体はそこに存在しないのだ。


 サラマンダーが右手を正面にかざすと、何もない空中に反撃の火炎弾がいくつも出現した。出現と同時にギリコに向け次々と発射される。


 ギリコも俊敏に狭い舞台上を駆け抜け、前転と宙返りを織り交ぜ曲芸じみた動きで火炎弾をかわす。


 サラマンダーの攻撃を避けながら、マシンガンを魔法少女に向け発砲するギリコ。


「お嬢様!」「カドリィちゃん!」


 二人の精霊が叫ぶと同時に、床に伏せていた魔法少女の頭上、何もない空中に分厚い水の層が大きな盾となって出現した。


 盾のような水の塊は、文字通りバリアとなってマシンガンの弾丸を食い止める。水の層内で水流が渦を作り、受け止めた弾丸を巻き込んでその勢いを殺していた。


 空中には、水の層と同時に出現した別の水の塊が浮いている。風船のように大きく膨らんだ水塊の中に、水盾を生成した本人と思しき女性が出現し、地上に降り立った。


「ご無事ですか、カドリィさん」


「わぁぁぁ~ん、ウンディーネ、来てくれてありがとうぉ~、死にゅかと思ったのぉ~」


 魔法少女が泣きながら三人目の精霊にしがみつく。


 どうやら、魔法少女だけは精霊に触れることができるらしい。単に錯覚かもしれないが。


 三人目の精霊、『水の精霊ウンディーネ』。


 上品でお姫様のような印象の美しい顔立ち、碧眼へきがんにブルーの中華ふうツインお団子ヘアー。


 水色のロングドレスは両肩丸出しで胸の谷間が少し覗いているが、華奢きゃしゃで色白肌とのコントラストは、セクシーというより優雅なオーラを放つ。


 右手に大きめの水色水晶玉。南国リゾートビーチの浅瀬を想像させる透き通った水色が美しく、青い地球をボウリングボール大に縮小させたかのような神秘的な印象。これも魔法アイテムなのだろう。


 大活躍のウンディーネだが、表情は気怠けだるく眠そうだ。


 起き上がった魔法少女の前に、三人の精霊が立ち並ぶ。


 魔法少女と精霊たちとの関係は、ここまでのところ少女が精霊を使役するという主従関係に見えない。むしろ精霊が自発的に一人の少女を守護しているかのような印象だが、果たして。


 サラマンダー、シルフ、ウンディーネと対峙するギリコ。


 ギリコがマシンガン二丁を構える。が、無駄であることは既に承知だ。


「すぐに終わらせますわ」


 水の精霊ウンディーネがひとこと告げると、両手で水晶玉を目の前に差し出した。水晶玉の中で水色の光がまるで生命あふれる水龍のように渦を描いている。魔法が発動する兆候。


「はぁ!」


 ウンディーネの発声と同時に、蛇の形状をした水の塊が多数、次々と空中に出現する。


 浮遊する水蛇群が、空中をグルグルと回りながらギリコを囲い込む。やがて、ギリコを包み込むように大きな球形状の水塊ができあがる。宙に浮遊している水塊に、一瞬で捕獲されてしまった。


 ギリコは水中から脱出しようと試みるが、無重力の中で自由を奪われ、上下前後左右どの方向にも移動できない。


 水塊は空中でウネウネ、グネグネとまるで生き物のように動き、捉えた獲物を逃がさない。


 ギリコはそのうち脱出を諦め、水塊の中でグッタリと停止した。


 彼女はアンドロイドであるため、呼吸による酸素の供給を必要としていない。しかし人間の声帯機能を模倣するため、横隔膜の挙動による模擬的な呼吸動作を行っているのだ。


「シルフさん、お願いしますわ」


「はいはい! お姉さんの出番ですね~、お・ま・か・せ!」


 水の精霊ウンディーネの依頼により、風の精霊シルフが羽根扇子をグルグルと回転させ、風を起こした。空中に浮かぶ水塊は、風に乗ってギリコごと舞台の外へと移動していく。


 しばらくすると、ウンディーネが魔法を解除。ギリコは水の塊と一緒になってバシャっと勢いよく舞台の外へと落下した。


 ずぶ濡れのまま横たわるギリコ、床には水が広がっていく。


 縦横100mの正方形の舞台から落ちてしまうだけで負けのルール。


「カドリィさんの勝ちでよろしいのではないですか」


 ウンディーネが眠たそうに告げた。


 魔法少女がバンザイしながらピョンピョン跳ねて喜びを全身で表現する。子どもそのものだ。


「ワーイ! カドリィの勝ちなの! 嬉しいの!」


 シルフが呆れ顔で助言する。


「カドリィちゃん、いつもの決めポーズやらないの?」


 そうだったとばかりに、テヘッとベロを出す魔法少女。


 身体を勢いよく半回転させ、ギリコが落ちている方向に後姿を向ける。左手を腰に当てつつ上半身だけ振り返り、右手のマジカルステッキをマイクふうに口元に当てる。


「マジカルスピリットサマナー、カドリィがいつでもどこでも解決するの! 安心するの!」


 の! でウインクしてバッチリ決めた。ピンク色のハートマークが飛んでいったように見えた。


 魔法少女カドリィ・ジニーサ・マンサ、第二回戦進出!


 クレオパトラ・ヴィーナス、もとい、大丈夫義理子、第一回戦敗退!



 §   §   §



28.6 魔法少女VSアンドロイド 試合決着後 アラトの部屋


「…………(アラト談)」



【ポイント評価のお願い】

 数ある作品群から選んでいただき、そして継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。

 誠に図々しいお願いとなりますが、お手間でなければ、ポイント評価をお願い申し上げます。

 どうも有難うございました。


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