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第二十八章 魔法少女VSアンドロイド その1

28.1 第一回戦第十四試合 魔法少女VSアンドロイド 対戦情報


 観戦モニターの対戦情報より。


 闘技場について。


 闘技場は、勇者とスライムが対戦した会場と同じAタイプ。


 ローマのコロッセオのような円形闘技場の中央に、縦横100m正方形の石畳式舞台があり、押し出されて場外になると負けという追加ルールがある。舞台の床面は地表から5mほどの高さ。


 勇者対スライム戦において、勇者が故意に舞台を完全破壊したが、同じタイプの会場が多数準備されているということなのだろう。


 魔法少女カドリィ・ジニーサ・マンサについて。


 マジカルスピリットサマナー:精霊魔法使い。


 四大精霊、火・風・水・土の四人の精霊を使役する。


 火の精霊:サラマンダー

 風の精霊:シルフ

 水の精霊:ウンディーネ

 土の精霊:ノーム


 クレオパトラ・ヴィーナスについて。


 武器:各種重火器



 §   §   §



28.2 魔法少女VSアンドロイド 試合開始前 アラトの部屋


「先輩、なにやっとんねん……」


 アラトは観戦モニターの対戦情報を見ながら、コーヒーまみれとなった顔をタオルで拭き取る。


 『シアイカイシ、3プンマエ』


 アナウンスが終わると、観戦モニターの画面外から少女一人と女性一人、それぞれ左右の両端から中央に向け歩いてきた。


 二人が小さな階段を上り舞台の床に立つと、階段は舞台の中へと収納されていく。


 魔法少女カドリィ。


 その容姿は、中学生くらいを思わせるかわいらしい女の子、背格好が140cmをちょっと超えるくらいの文字通り少女だ。


 若々しいつやのあるピンクのロール系ツインテール、当然のようにかわいらしくあしらったリボン。クリクリと丸っこい大きな瞳は光沢のあるピンクオパール色。


 自称魔法少女なのだろうが、ピンクのコスチュームはまさにそれ、裾が広がっているミニのフープスカート、胸元と腰には大きなピンクリボン。


 当然のごとく、長さ40cmほどのマジカルステッキが右手に握られている。精霊を召喚、使役するためのアイテムであろう。


 クレオパトラ・ヴィーナス。


 全身タイツのようにぴったりフィットしたボディスーツは、光沢のあるワインレッドカラーで統一、胸元だけが広くカットされセクシーさを強調している。柔軟性が高く格闘戦にも向いた戦闘服だ。


 マジかぁ~、と騒ぎたくなるほどのビューティフルフェイス、わずかな風になびくブロンドヘアー、ボディスーツに合わせた赤色系のサングラス、眼光が鋭く、それがまたエロカッコいい!


 映画やアニメに登場する女スパイもしくは泥棒ヒロインを彷彿させる。


 もし彼女がアメリカ人であるなら、アラトも学校で学んだ英語を必死になってスピーキングにしていることだろう。


「Wow! You’re the most beautiful lady I’ve ever seen!」


 てなかんじで。


 この美しい女性のスパイコスチュームを見るのは初めてなのだが、アラトは彼女の正体をわかっている。


 断言できる! 彼女は大丈夫義理子、その人だ!


 なぜ、アラトは彼女の正体を見破ったのか。


 大丈夫義理子は茶髪で金髪じゃない。要するに、金髪のカツラとサングラスで変装している。戦闘が始まる直前のシリアスな顔つきは、ふだんギリコが見せない表情だから随分と印象は違っているし、おそらく厚めの化粧で顔を変えている。


 それでも、『クレオパトラ・ヴィーナス=大丈夫義理子』という方程式は成り立っているのだ。


 なぜなら……。


 『クレオパトラ・ヴィーナス』は動画生成AIで超有名なAIタレントの名称だ。実際、アラトもふだんの生活の中で、彼女の顔をよく見かける。一番多いのはテレビのCMだろうか。


 そのテレビで見かける『クレオパトラ・ヴィーナス』の顔は、大丈夫義理子にそっくりなのだ。


 ギリコと出会った初日、アラトがギリコに『どこかで見たことがあるような気がするが、テレビのCMとかに出演したことはあるか?』という類の質問をして、『無い』という回答だったが……。


 そう、彼女は嘘をついていた。


 連想ゲームは単純明快だ。


 『クレオパトラ・ヴィーナス』という名前の試合出場者が観戦モニターに映っている。


 今朝、大丈夫義理子がアラトの部屋に来ていない。


 大丈夫義理子の顔は、あの有名な『クレオパトラ・ヴィーナス』に似ている。


『クレオパトラ・ヴィーナス=大丈夫義理子』以外、考えられない。


 観戦モニターに映る女スパイは、体型や身長など見た目の雰囲気で大丈夫義理子が変装しているとはっきりわかる。


 どうしてかって、あまり話題にすべきことではないのだが……。


 出場者のある特定の部位に注目すれば、大丈夫義理子の特筆すべき個性に一致すると、ズバン、ドカンとわかっちゃうのだ。


 アラトはずっと毎日一緒に過ごしてきたのだから。


「なんか急に腹立ってきた……

 ウソばっか。自分が出場するなら先に教えといてよ、心配するじゃん。それに自分はAIタレントじゃないとかウソついて、そのまんまじゃんかぁ!

 ギリコ、マジに愛は……、じゃなくて、マジにAIじゃんかぁぁぁ~」


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』


 アラト自身も彼女の戦闘能力を詳しく知らないが、なぜか彼女はかなり大きめのジュラルミンケースを手に提げている。女性が一人で持ち運ぶにしては大きすぎ、見た目のバランスが非常に悪く重々しい。


 が、それでもギリコのスパイコスチューム、もしくは泥棒ヒロイン系コスチュームと妙にマッチしていると感じるのは、果たしてアラトだけだろうか。



 §   §   §



28.3 魔法少女VSアンドロイド 試合模様その一


『……3、2、1、ゼロ』


 魔法少女が一歩前に出て軽くジャンプ、全身を水平方向にクルッと一回転させ着地、続けて右手のマジカルステッキを正面にかざし相手に向けて大きく円を描く。最後の決めポーズは左手を腰に当て、マジカルステッキの先端を相手に向ける。


「マジカルスピリットサマナー、カドリィが相手なの! ヨロシクお願いするの!」


 妙に子どもっぽかった。人間の子どもがテレビの魔法少女を見て『魔法少女ゴッコ』をしている感がとても強かった。


 明らかに普通の人間ぽい挙動から、彼女は空も飛べないと容易に想像できる。


 一方のクレオパトラ・ヴィーナス、もといギリコは、無防備にもジュラルミンケースを手に提げたまま魔法少女に向かって堂々と歩き出した。


 魔法少女の表情に緊迫感が宿る。


「よろしくお願いします、カドリィさん。さて……」


 コホンと咳払いしつつ、ジュラルミンケースをドスンと床に寝かせ中身を開示するギリコ。


「これだけ贈呈しますので、お姉さんに勝ちを譲ってもらえないですか?」


 その中身はぎっしりと詰まったアメリカドルの札束だった。


 ケースの厚みから想定すると、額にしておよそ一千万ドルくらいだろうか。


 魔法少女の表情が一瞬で変わった……。


 ピンクオパールの瞳がキラキラ輝き始め、全身がハッピーオーラに包まれる。まるで光が周囲を侵食していると錯覚しそうなほどだ。


「いかがですか、お嬢さん」


 どうだとばかりにウインクするギリコ。


「しゅ、しゅごいの……」



 §   §   §



28.4 魔法少女VSアンドロイド 観戦模様その一 アラトの部屋


 アラトはモニター越しにこの光景を見ながら、ソファーからズリ落ち、素でズッコケていた。なんなら、フローリングの上で、アホちゃうかぁ~、という具合に悶絶もした。


 そして真剣に考える。


(今のズッコケはインパクトが弱すぎる……。飛行能力さえあれば、宇宙の果てまで飛んでいけるのに……。

 そうだ! パワードジャケットで空飛べるようにしてもらおう! それがいい! 先輩にお願いしよう!)



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