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第二十七章 恋愛シミュレーション その1

27.1 恋愛シミュレーション 前編


 第一回戦第十三試合が終わった。


 推しキャラよう子ちゃん勝利で、笑顔のアラト。


 機嫌がいいので、ついでにお願い事をギリコに切り出す。


「ギリコ、ちょっとお願いがあるんだけど」


「そうか、邪魔になったアヤツを殺せと申すか、フフフ、苺屋、お主も悪よのぉ」


 急にギリコが時代劇っぽいしゃべりで、何かを言いだした。


「えーい、控え、控え! こちらにおわす御方をどなたと心得る! 角さん、飛車さん、やっておしまい!」


「なんか、いろんなもん混ざってるよね。また、どっかからネタ仕入れちゃって。ディープラーニングやり過ぎぃ!」


「カァ、カァ、カァ、拙者これにて、ゴメン!」


「こらこら、ハルシネーションじゃ済まされんちゅーに! そもそも、苺屋じゃなくって越後屋! 角と飛車は将棋の駒! 『やっておしまい』は悪役ヒロイン! 拙者は忍者!」


「だって、アラトさんがいつもいつも『お願い』って、意地悪するんですものぉ~、ギリコ、まいっちゃう!」


 とか言いながら、両腕で胸を隠しつつアニメでよく見るキュートなポーズをして魅せた。


 口をあんぐりと開け、フリーズするアラト。


(ちょっと、かわいい……)


「何かおっしゃいました? 何かボソっと、ねぇ、アラトさん? アラトさん?」


 もう答えてくださぁーい、などと言いつつ、アラトの身体をポカポカ叩く。かわいこぶりっ子のお約束アクションだが、ちょっとチカラ加減が強い。


「義理子先輩、ディープラーニングで学んだことを試すのはいいんですが、叩くときは優しくしてね」


「えっ、痛かったのですか?」


 ギリコは叩くのを止め、正面から抱きつかんばかりの距離で身を寄せる。上目遣いでアラトと視線を合わせた。キラキラした瞳、眉をハの字にして心配そうな表情、憂いを秘めた美少女の悲しい顔。


「お願い、ギリコを嫌いにならないで……」


 オグッ! 心臓に矢が刺さるような破壊力抜群の演技。


「はぁはぁはぁ……、そ、そんな感じで、が、がんばってください……」


「はい、ギリコがんばります!」


 と言って、アラトに飛びつきながら腕組みをした。カチカチ山がムギュっと二の腕に当たる。


 アラトは笑顔でギリコの腕を離す。実際、カチカチ山が肉に食い込んで痛い。


「と、とにかく、お願いというのはですね、例の違約金10億円という契約は無しにしてほしいんです」


「どうしてですか?」


「条件付きという話ですけどね。僕が、その、ギリコさんを本気に好きになった場合の話です。ほら、僕がギリコに本気で惚れたら、もう違約金の罰則とかなくても必死になって優勝目指すよね!」


「なるほど」


「しかも、ギリコの最優先任務『ギリコが僕を口説き落とす』も完了するわけでしょ。だったら、お互いウィン・ウィンの関係になって、世界最幸カップル誕生! ってなことになるわけです。アンダスターンドゥ?」


「理屈はわかりました。しかしです、優勝を目指し最後まで戦うということであれば、罰則ルールが残っていても害は一切無いと判断しますが」


「いや、だからモチベーションが変わるって寸法さ! しかもポジティブに! 借金10億円回避のためじゃなく、惚れた女のためにがんばるって、全然違うでしょ? ねぇ?」


「全くわかりません。何が違うのですか?」


「そうきたか……、ん~」


 アラトは額から脂汗をかきながら、なんとかこの頑固ロボットを説得しようと考えた。


「ウヌ……、ヌググ……」


 アラトの顔が考えすぎで真っ赤になる。


「仕方ありません。それで結構です」


 ギリコは嘆息気味に答えた。


「ホント?」


「はい。その代わりですが、本当にアラトさんがわたくしに恋心を抱いたのかどうかを、きっちりとジャッジさせていただきます。よろしいですか?」


「そりゃ、もちろんだよ! そうでないとフェアじゃないよね!」


「はい、では、アラトさんがわたくしに惚れたら、違約金10億円ルールを解除するという約束にします」


「うん! だったら僕もギリコに惚れやすくなるしねぇ!」


「で、今現在はどうなのですか?」


「うっ……、するどい突っ込み……。いや、まぁ、お互いゆっくりやっていこうよ」


「取りあえず、テストさせてください」


「えっ、どうすんの?」


 いつもパチッとはっきり見開いているギリコの目が、トロ~ンと細目になる。眉の角度がフンワリと柔らかくなり、いつものかすかな口元の微笑みがより鮮明になる。頬の赤みが増すと、本格的な超絶美人ハニートラップモード発動だ。わかりやすい。


「アラトさん……」


 甘ったるい声音で色気が増す。ユラユラと揺れる腰つき、全身からフェロモンを発していると錯覚する。


(たしか、ロボットでしたよね?)


 ギリコがアラトのアゴに優しく右手を添え、唇をアラトの口元に寄せてきた。


「キスの仕方、教えてください」


 アラトは腰が抜けたように膝から崩れ、床に座り込んだ。


 それでもアラトのアゴから手を離さず、上から見下ろす。


「逃げちゃ、ダメ……」


「ギ、ギリコさん……、 き、昨日、ハ、ハレンチ行為禁止の話をしたばかりですが……」


「どこまでがハレンチ行為ですか?」


「そ、それはですね……」


 アラトの目線に合わせギリコがしゃがみ込んだ。

 目前に迫る美女はナチュラルメイクなのかスッピンなのか区別がつかないほど完璧な女神の肌。紅く光沢のある唇だけ口紅を薄っすら塗っているらしい。見るからに柔らかそうな唇がアラトの男性ホルモンを刺激する。


 彼女の唇がアラトの唇に接触寸前、彼女の甘い吐息がアラトの鼻をくすぐる。呼吸するたびにわずかに震える魅惑的な唇が、ウの発音形でちょっとだけ尖った。



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