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第二十三章 男性の口説き方 その2

23.1 男性の口説き方 後編


「先輩、せっかくなんで僕からもいろいろと質問させてください」


「はい、なんでしょうか」


「先輩って、つまりその……、超高性能ロボット、えーと」


「超高性能AGIアンドロイドです」


「そう、その超高性能ナニガシには感情があるんですか?」


「ナニガシではなくAGIアンドロイドです」


「エージーアイアンドロイド」


「さすがはアラトさん、御名答です」


「あのぉー、すんません、話すり替わってます。感情ってあるんですか?」


「その質問は非常にセンシティブな話題なのですが、いいでしょう、お答えいたします」


 アラトは女性型アンドロイドをマジマジと見る。


 口を半開きにし、瞬きを止めるロボット。


「駄目ですよ、フリーズしたフリしても。観念してください!」


「わかりました……。ズバリお答えしますと、人間と同じ概念でいうところの感情はありません」


「やっぱりそうなんだ……」


「わたくしたちが表面上示す喜怒哀楽は、基本、人間の行動を模倣もほうしているにすぎません。

 人間が感情を抱くであろう状況に接した時、普通の人間が抱く平均的な感情をデータベースとして最も適していると推測される感情をチョイス、そして人間を模倣した反応を演じます。これがわたくしたちのベーシックアルゴリズムです。ディープラーニングによって、反応パターンを増やすことができます」


「なんとなくわかった」


 話を続ける女性型アンドロイド。


「ですが! わたくしたちも喜びに類似する感覚を得ることはできます。

 それは与えられた任務を達成した時にシステム内で得られる電気的信号です。その電気信号を受信することで、埋められていない空白が埋められたような、そんな安心感を得られる仕組みになっています。

 またその感覚を得るために、任務遂行という判断を優先的に選択します。つまり行動の判断基準に『任務遂行が最優先』という枠組みを与えられ、フレーム問題を可能な限り回避しているのです」


 彼女の力説が終わり、しばらく沈黙が続いた。


「わかっていただけましたか、アラトさん?」


「よ、よくわかんないけど、僕には感情があるように見えます……」


 ギリコが優しくフワリとアラトに抱きついた。


「嬉しい……」


 彼女のたったひとことが、えらく色っぽく感じた。彼女の吐息を耳に感じる。アラトの心臓がバクバクと反応している。


 しかし、しかしだ。やっぱり彼女のお胸が硬い! そのことに意識が集中して、なんか全て台無しになる。


「そうだ先輩! さっきから耳にしているディープラーニング! これ活用しましょうよ!」


 義理子先輩は身体を離し、不思議そうにアラトの顔を見た。


「僕が好きなお薦めのラブコメアニメ教えますから、それから男子のハートを学んでください! 女子が男子を口説く方法もいろいろあるんじゃないですか?」


「それはいいアイディアですわ! ぜひ教えてください!」


「準備いーですか?」


「ご安心ください、暗記は得意です」


 アラト自身、テンションが上がりノリノリになって説明を始める。


「えーとですね、まずは、

 ラブコメの金字塔『東京メゾン物語』、

 笑えて泣ける名作『かずや君は浜辺で告りたい』、

 一番好きな原作者『思春期捜査官は一角獣の夢を見る』、

 キュンキュン度最高『あのオートマタは恋をするのか?』、

 ラノベの売上最強『転生したら五人姉妹の天使様が花嫁になっていた件』、

 今年のイチオシ『残念ヒロインの育ち方が早すぎる!』、

 泣きたい時に超オススメ『僕の妹ロボ奈は感傷的にならないわけがない―星のフローライト・メモリーズ―』、

 最後に念のため『本当にあったら読んでみたいタイトル目白押し!』、

 とかですね! 原作はラノベだったり漫画だったり、中には実写版の映画とかもありますよ!」


 義理子先輩は瞳を輝かせてアラトの説明を聞いていた。


「ありがとうございます、アラトさん。早速、今晩お勉強します!」


 興奮していたアラトも呼吸を落ち着かせた。


「最後にもう一つ質問なんですが……」


「はい、どうぞ、アラトさん」


「昨日、新任務の説明の時、先輩のほうから『結婚してください』なんて簡単に口走っていましたが、あれ嘘ですよね」


「嘘ではありません。結婚してしまえば任務完了です」


「それだけのことですか?」


「任務遂行以外に意味はありません」


 アラトはダァ~と溶けるようにソファに沈んでいった。


 突如ギリコが乙女のようにモジモジと身体を揺らし始める。


「今日もカチカチ山が痛かったですよね……。すみません、色気不足で」


「アハアハアハ、いやぁ~、そ、それは……」


「無理しなくてもいいです、アラトさん」


「はい……、もう何も申しません」



 §   §   §



23.2 大会十二日目の朝 アラトの部屋


 モーニングセットのコーヒーをすすりながら、アラトは今日の試合もワクワクしている。


 何と言っても、出場者が『オンライン対戦ゲーム世界チャンピオン』なのだ。ワクワクせずにはいられない。


「アラトさん、本音と違うことを考えないでください!」


「あれ、ギリコ、もう来てたんだ」


「女子高生のことばかり考えて! ムッツリ変態エロ野郎なんですから!」


「そんなに攻められる覚えはないんですが。もしかして昨日教えたラブコメアニメの影響っスか?」


「ウフフ、わかりますか?」


 いつも無表情だった超絶美人アンドロイドが楽しそうに微笑みながら会話している。『ウフフ』とか、今までに見たことが無いエンジョイぶり。ラブコメアニメのディープラーニング効果は絶大だ。


「アラトさんの想像通り、ラブコメアニメのディープラーニング効果は絶大ですわ。ウフフ」


「なんか怖い! 義理子先輩のマインドリーディング能力に磨きがかかってる!」


「これもディープラーニングの成果ですわ。これから毎晩、ラブコメ関連の映画、アニメ、漫画、小説を手当たりしだい漁っていく予定です!」


「そうですか。楽しみが増えてなによりです……」


 ギリコがニコニコ顔でアラトに詰め寄る。


「成人男性は皆さん、女子高生が大好きなようで」


「そそそ、そんなことないよぉ~! 僕、ロリコンじゃないもん!」


「そうですか。一応信じてあげます!」


 超絶美人アンドロイドがたった一晩で感情表現が豊かになった。これからいったいどう変化していくのか、楽しみができてしまう。


「さーて、どんな試合になるのかなぁ~」


「はい、おそらくは『おパンツ作戦』で間違いないかと……」



【ポイント評価のお願い】

 数ある作品群から選んでいただき、そして継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。

 誠に図々しいお願いとなりますが、お手間でなければ、ポイント評価をお願い申し上げます。

 どうも有難うございました。


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