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第二十三章 男性の口説き方 その1

23.1 男性の口説き方 前編


 第一回戦第十一試合、文字通り『美女と野獣』の対戦が終わった。


 アラトは妖精の少女に感情移入してしまって胸が苦しかった。


「アラトさん、大丈夫ですか?」


「うん。なんだか、あの妖精が可哀そうになっちゃって……」


「アラトさん、お優しいのですね、女の子には」


「別に、女の子だけってことはないよ」


「人間の本質を知りたいと申しましょうか。興味本位でうかがいますが、第五試合で宇宙の帝王が悪魔に殺された時、泣きましたか?」


「そんな試合あったっけ? なんか覚えていないなぁ」


「そうですか。ともかくですね、アラトさん、気をつけてください。女の人の中には、色香を駆使して男をたぶらかす非道い悪女もいますから。

 アラトさん正直者で危なっかしいですから、とっても心配です。この大会でも女の人にだまされないでください」


「いや、ホント、小悪魔を超える性悪女って実在するよね」


 アラトはギリコにジトォーと流し目で視線を送る。


「オホホホ、そのとおりですよ、アラトさん」


「いや、まったく……」


 ソファに座っていたギリコが急に立ち上がり、ソファに座っているアラトの正面に立った。


「ときに、アラトさん」


「なに、なんか改まっちゃって」


「本日の業務です。このアンケートに答えていただきたいのですが」


 ギリコはジャケットの内側ポケットから一枚の紙を取り出した。


「なになに、やぶから棒に」


 A4サイズのペーパーには、『好きな女性のタイプアンケート』と書かれている。どうやらこれで、アラトの好きな女性のタイプを聞き出そうとしているらしい。


「なんとも古典的な。ある意味、理にかなってるけど」


 ギリコはニコッとして、ボールペンを手渡してきた。


「へぇーい、本日の業務なんスよねぇー」


 と、ぼやき気味にアンケートに記入するアラト。


 スラスラと記入を終え、はいどうぞ、とギリコに手渡した。


「ありがとうございます、アラトさん」


 義理子先輩は業務報告書をチェックするかのように、アンケートの内容をじっくりと確認する。


「これを読む限り、アラトさんの好みは美人でスタイル抜群、年下の女性ということになります」


「ん? 一つ抜けてない?」


「はい、それからある特定の部分が柔らかくないといけないようですね」


「うん、特定の二つの部分。複数形ね」


 アラトは右手でVサインを作り、数字の2を示した。


 義理子先輩の顔が引きつっているように見えるのは気のせいだろうか。


「でしたら、わたくしが該当する予定ですわ」


「そうなの?」


「はい。いずれ最高品質の柔らかさに改善される予定ですので」


「な、なるほど。ちなみにギリコって何歳?」


「わたくし、1歳未満の幼女ですから、間違いなくアラトさんより年下になりますわ」


「そうなんだ……。なんかメッチャ複雑なんですけど。自分が超絶ロリコンの変質者に思えてきたよ……」


「ご安心ください。誰にもわからないことですから」


「そうだといいけど……」


 義理子先輩が作り笑顔のままフリーズしているように見える。


 あんまり怒らせると、このアンドロイドは暴力に訴えるので要注意。


「義理子先輩」


「はい」


「えーと、昨日の話で、部下にも手伝ってほしい的なこと言ってましたよね?」


「はい。ご支援いただきたいと」


「自分の気持ちに関して助言てのもおかしな話だけど、僕からの提案としてですね……」


「はい」


「男性が女性にキュンとするようなことを、たくさんすればいいんじゃないですか?」


 先輩はしゃがみ込んで顔をアラトの顔に近づけると、それまで暗い印象だった作り笑顔が、パァァァっと輝くように明るい笑顔に変わった。


「もっと具体的に教えてください!」


「いーですよ。例えば……、『なんでやねん!』と真顔で言ってみてください」


「なんでやねん」


「あっ! それいい! 超真面目美人上司がむりやり職場で言わされる『なんでやねん』、そのギャップが超いい!」


「なんでやねん」


「あぁぁぁぁぁぁー、それっ、マジいいっス! もっと不思議そうな顔でお願いします! わけわかんない的な」


「なんでやねん」


「ぬぉぉぉー、ヤバい、なにかに目覚めちゃう……、それ以上は、僕が壊れちゃうので……」


「なんでやねん」


「うがぁー、僕を殺す気ですか、先輩! もうその破壊力マシマシ純真素朴系『なんでやねん』は終了です!」


「かしこまりました」


 しばらくソファーの上で悶絶していたアラトが、ぜぇぜぇと呼吸を整えつつ復活した。


「今のでキュンとしたのですか? どうしてアラトさんが身体をねじっていたのか理解不能です」


「はい、ちょっとツボにはまっただけです。キュンとは別物ですので封印してください」


「わかりました」


「では次に、『壊れちゃう』って恥ずかしそうに言ってみてください」


「なんでやねん」


「いや、そっちじゃなく、『壊れちゃう』って恥ずかしそうに! お願いします!」


「なんでやねん」


「あー、もう! こっちが、なんでやねん、だっちゅーに!」


「あの、そろそろわたくしで遊ぶのは止めてください」


「はい……。申し訳ありませんでした……」


 アラトは猿よりも深く反省した。


「もっと、実戦的なのをお願いします」


「じゃ、手を握るのはどうですか? なかなかの破壊力が期待できます。実践的ですよ!」


「はい。こうでよろしいですか?」


 女性型アンドロイドがアラトの両手を握った。ちょっと痛いのでアドバイスしたほうが良さそうだ。


「あぁ、それですよ、それ! と言っても、チカラ加減の調整が必要ですけどね。女性の柔らかい手で握られると、男性はキュンとしちゃいますよ。特に先輩のような超絶美人だったら」


「そうなんですね。でしたら、ちょうどいいチカラ加減を教えてください。わたくしのようなAGIアンドロイドは、このようなスキンシップにおける圧力の調整が大の苦手なのです。映像や文字だけのディープラーニングでは得られない情報ですから」


「その理屈よくわかる。じゃ、もう一度握ってみる?」


「はい!」


 超絶美人アンドロイドがアラトの助言に従って、スキンシップの特訓じみたことを一生懸命にしている。その懸命な姿がアラトの胸をキュンとさせた。


「でも先輩、前に先輩が優しく手を包んでくれた時は、いい感じのチカラ加減でしたけど」


「そうですか。わたくしには判断できないことですが、単なる偶然かもしれません。ですが、この訓練は本当に嬉しいです。とってもいいお勉強になります。ありがとうございます、アラトさん」


 女性型アンドロイドの笑顔がかわいかった。嘘偽りのない純粋な笑顔、まるで少女のあどけない笑顔。このアンドロイドから感情を感じてしまう。


 待て。ロボットに感情? 錯覚なのだろうか。



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