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第二十二章 妖精VS謎の玉 その2

22.4 妖精VS謎の玉 試合模様その一 妖精側


 妖精は、種子をいていた。


 妖精は巧みに銀ボールのタックルをかわしながら、会場内を飛び回り、文字通り種子をばら蒔いているのだ。


 妖精の蒔く種子は、理屈で説明しきれない尋常ならざる速度で急成長する。会場一面に草木が育ち、花を咲かせ、大木すらも生えグングンと伸びていく。樹木と草原と花畑とが会場を埋め尽くさんと範囲を広げて、侵食されている。


 銀ボールはお構いなしだった。


 次に次に成長する草木を球状の巨体で圧し潰しながら疾走、自ら道を作り出す。子供が豊かな自然をそんなふうに踏み潰して破壊したなら、両親はしかり飛ばすことだろう。


「さぁ、パパ、ママ、元気に育って、ですわぁ~。早くリリィを守ってほしいですわ~!」


 妖精の言葉を受けて、繁茂はんもする草木の中にパパとママらしき怪物が姿を現す。妖精のく種子は、『ガイアナ』と呼ばれる植物モンスターなのだ。


 植物モンスターガイアナの父『ダダモン』。


 全長10mほどの巨木に手が生え、頭もある。鋭く威嚇いかくする双眸そうぼうに無数の牙をのぞかせる口。頭髪部分が緑の葉で生い茂る。巨躯きょくではあるが、動けない。


 植物モンスターガイアナの母『リリモン』。


 全長50cmほどの小さなモンスター。腹部に怪物の面貌めんぼう、頭部に大きな花、両肩に百合を咲かせている。やせ細った手足があり、草木の中を彷徨さまよいながら新たに種子を蒔く。リリモンが種子を蒔くと、さらに別のモンスターが育ち始めた。


 ひまわりモンスター『フラモン』。


 リリモンが生み出す一つ目のモンスター。


 全長3mほどの怪物。植物でありながら見た目はゴリラのような体躯たいくで、筋肉質な両腕を振り回すパワー型モンスター。頭部に大きな花、腹部に一輪のひまわりが咲き、鬼面のように恐ろしい顔がある。


 バラのモンスター『ロズモン』。


 リリモンが生み出す二つ目のモンスター。


 体長2mほどの怪物。頭部は三つのバラ、腹部にある花には猛獣のような大口があり牙を見せる。両肩から背中にかけて、トゲトゲしいつるが無数に伸び、むちのようにうごめく。


 全身に生えるとげが、バラ系統のモンスターだと告げている。


 そして、リリモンがく種子からは、新たにリリモン自体も生み出している。種子を蒔く行為が役目のリリモンは、直接戦うことはなく、戦場を彷徨さまよいながら無限増殖を実行するのだ。



 §   §   §



22.5 妖精VS謎の玉 観戦模様その二 アラトの部屋


《これは、とんでもないことになってきたぞ! お察しのとおり、リリィちゃんは植物モンスターを無限に生み出す能力があるってわけだ! さぁさぁ、どうやって戦う、銀の玉?》


 いち早く完全体として成長したロズモン4体が、銀ボールに攻撃を仕掛ける。銀ボールがいったん止まり、向かってくるそれらと対峙した。


 無数の棘鞭とげむちを高速で振り回し、銀ボールの鏡面を連続で叩きつける。しかし、全長2m程度の体格では、直径5mの球体にパワー負けしてしまい、ボーリングのピンのように弾き飛ばされた。


 続いて成長したフラモン3体。


 悪戦苦闘するロズモンの背後から飛び出し、ゴリラの剛腕で銀ボールを殴りつけた。銀ボールのサイズに臆せず果敢かかんに挑む3体のフラモン。豪快な拳でも真球にダメージはなさそうだ。


《強い、強いぞ、銀の玉! ドデカいボールは頑丈だぁ! しかし、両者お互いに致命的なダメージを与えている様子がないぞぉ! これじゃ、次々に生まれてくる植物モンスターの群れに囲まれて、不利になるのは銀ボールのほうじゃないのかぁ?》


 テレオの指摘通り、銀ボールの防御力がいかに高かろうとも、ただ体当たりをしているだけでは、植物モンスターを倒せない。


《うぉ! なんだなんだ、銀の玉、予感が無かったと言えばウソになるが、急に変形し始めた! まさかまさかの、いや、案の定、観戦者の誰もが予想していた展開!

 銀の玉が、人型ロボットに変形したぞぉ! う~む、正確には猛獣型と言うべきか。ライオンの頭にグリズリーの胴体。全身は銀色のマシンのような、アーマーのようなデザインだ!》


「うぉりゃ~、変形キタァァァ~! やっぱりアレやぁ~!」


 右手を高々と上げ、叫ぶアラト。


「アラトさん、お静かに!」


 大興奮をさえぎられ、アラトはシュンとした。


《たった今、運営から情報ゲット! 彼の名は『クーゲルビースト』! なになに、どうやら機械生命体という存在らしい。もともと合成獣型可変ロボットとして製造された機械に、どういうわけか魂が宿ったんだと!》


 クーゲルビーストは有機化合物の細胞と無機化合物の機械とが融合しているように見える。


 ライオン頭はまるごと生きた動物のそれ、全身を覆う機械的装甲の隙間を熊の毛で埋めてある。


 ただし、ボール形態からビースト形態への変形過程から想像すると、あくまでも体内は機械仕掛けらしい。


 変形により生み出された銀のサークルシールドを片手に、2足で仁王立ちする機械合成獣が咆哮ほうこうした。ライオンのようなヒグマのような響き、その獰猛どうもうさでもって威嚇いかくするプレデター。


 変形することで、直径5mのボールが全長8mのビーストに変貌している。フラモンの倍以上ある体躯たいくとグルズリーの鋭い爪で、植物モンスターの肉を易々と引き裂き、次々と薙ぎ倒す。



 §   §   §



22.6 妖精VS謎の玉 試合模様その二 妖精側


「あ~ん、もう、何よアレ! 絶対許さない、ですわぁ~!」


 妖精が声に出して悔しがる。


 一方、その間に巨木モンスターダダモン3体の成長が完了していた。植物モンスターガイアナの父であるダダモンは、4種類の植物モンスターを生み出すのだ。


 一つ目、ハエトリグサモンスター『ハエトリモン』。


 ダダモンの胴体である幹の木片が変化して生み出される。


 全長2.5mの四足獣型モンスター。全体は狼のようなシルエット、獣の頭部とは別に、身体左右の側面に三つずつ獰猛どうもうな狼の口が突き出している。攻撃手段は七つある口の牙で咬みつくだけだが、その強力なアゴで人間が襲われたらひとたまりもない。


 二つ目、ドリアンモンスター『ドリアモン』。


 ダダモンの全身から芽が出るように生み出される。


 全長50cmの小さな爆弾型モンスター。


 名前のとおり、ドリアンの実のようにトゲトゲとしたボール形状の胴体、全体像はハリネズミのように頭と手足がある。


 動きは速く全身のトゲを飛ばして攻撃しながら、アルマジロのように身体を丸めて体当たりしてくる。時間が経過すると体当たりで自爆する。一体当たりの爆発威力は低いが、大量に生み出し群れとなって襲う。


 三つ目、ひょうたんモンスター『パンプモン』。


 ダダモンの口から吐き出すように生まれる。


 全長1.5m。全体シルエットはひょうたんの胴体に、細い手足を生やしたモンスターだが、ひょうたんの上半分はカボチャ頭になっている。ハロウィン系ホラーで見かける典型的な悪魔顔のパンプキン。


 その悪魔顔のクチから金属腐食液を吐き出す。金属をサビつかせ、腐らせる。


 肉体は非常にもろく、殴るだけであっさり潰せるが、ひょうたんの胴体を潰すと金属腐食液が飛び散るので危険。動きは速くないが、怒ると走って追いかけてくる。


 四つ目、キノコモンスター『マシュモン』。


 ダダモンの口から吐き出すように生まれる。


 全長1mと小柄で、キノコに手足が生えたモンスター。頭が大きなキノコかさ、キノコの柄部分が胴体で、そこにギョロっとした不気味な目がある。


 キノコ笠からカビ菌を振り撒き、それを吸い込むと肺に致死性のカビを発生させる。普通の生物はこれを吸い込むだけで死に至る。


 やっかいな能力だが、動きがのろくて非常に弱いので倒しやすい。


「パパ、みんなのカタキをとって、ですわぁ~」


 草原の中にそびえ立つ3体の巨木モンスターダダモンは言葉を発するわけではないが、妖精の要請に従うかのごとく、うめき声を発した。


 ダダモンの幹が裂け樹皮が割れると、その割れ目からハエトリモンが次々に生み出され出現する。それが終わると全身から芽が出てドリアモンが生み出される。


 数体のハエトリモンが狼の群れのように合成獣に襲いかかる。次々に飛びかかっては、全身に備える口で咬みつく四足獣。


 グリズリーの爪を振り回し豪快に暴れる機械合成獣は、むしろ二足歩行で縦横無尽に跳ね回る軽快なゴリラのようでもある。パワーとスピードを併せ持つ万能戦士だ。


 そこへ多数のドリアモンが駆け寄り、全身のトゲを飛ばしながら体当たり攻撃、ときおり自爆特攻を仕掛ける。


 機械合成獣本体も頑丈だが、サークルシールドが優秀な盾として存分に機能していた。


「まだまだこんなもんじゃないですわぁ~! パパ、ママ、お願い! がんばって!」



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