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第二十章 教祖VSエルフ その1

20.1 第一回戦第十試合 教祖VSエルフ 対戦情報


 観戦モニターに表示されている対戦情報より。


 闘技場について。


 本日の闘技場はBタイプ。第一試合と同じ会場。


 円柱状の閉鎖された密閉空間。直径500m、高さ10m。


 クロス・フィンガー教祖について。


 天冥真理教の教祖。


 天冥真理教:『全ての生物には、己自身の生死の時期を決める権利がある』という思想を宗教理念としている。


 魔導剣士ミラージュについて。


 魔術と剣術に優れるエルフ族最強の戦士。



 §   §   §



20.2 教祖VSエルフ 試合開始前 闘技場


『シアイカイシ、1プンマエ』


 いつもどおりの選手登場シーン。


 円形の会場床面中央付近に直径2mほどの穴が2つ出現し、床下より『迫り』が上がってくる。それぞれの穴から人影が一人ずつ出現した。


 2者間の距離はおよそ200m。


 一人は中年男性。その服装から一目で教祖とわかる。


 教皇様が身にまといそうな格調高いアルバ——足元を隠すほど長いローブとマントを組み合わせたような独特の衣装——は艶々しい白と黒のデザインで、金の刺繡ししゅうが高級感を漂わせる。


 頭の司教冠——司教が被る帽子のようなもの——は黒ベースに金のデザイン。


 頬ヒゲとつながっている口ヒゲ、首が隠れるほどりっぱなアゴヒゲは若々しく黒光りする。


 十字架杖——杖の先に巨大な十字架が付いている金色の物体——を右手にたずさえる。それは身長と変わらない長さの巨斧きょふに見えるが、斧の代わりに巨大な金色の十字架が付いているのだ。


 もう一人は大剣を握る女性。


 足元が隠れる漆黒のワンピースに真紅のフード付きロングコートを羽織っている。胸の膨らみから女性とわかる。


 コートのフードを頭に被り顔を隠しているが、天然パーマの赤毛をのぞかせる。


 対戦情報から、彼女がエルフの魔導剣士ミラージュだと推察できる。


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』



 §   §   §



20.3 教祖VSエルフ 試合模様その一 エルフ側


『……3、2、1、ゼロ』


 ゼロと同時に走り出す教祖。


 エルフに背を見せ、逃走するように離れていく。『走る』といってもすこぶる遅い。全速力かもしれないがすでに息絶え絶えの様子で、中年オヤジであることを如実に示している。長すぎるローブとマントを踏んでしまいそうだ。


 教祖は走りながら、ブツブツと呪文かお経でも唱えているようだ。


「ふん、ただ逃げるだけか。秒殺してやる!」


 赤毛の女エルフがつぶやいた。


 エルフは飛行魔法で宙に浮きながら、右手の大剣を掲げる。


 ディメンションスネークソード。


 エルフが握る両刃剣は、剣身がノコギリ刃のようにギザギザになっている。全長110cmで『勇者の剣』よりやや短い。


 剣の名称のとおり、空間を切断できる特殊な魔剣。この世に斬れないものはないという魔剣は、最高位に分類される最強魔剣の一つだ。


 魔法使いや魔族がバリアを張ったとしても、空間切断の特殊能力で空間ごとぶった斬り、バリアの防御効果を無効にしてしまう恐ろしい剣なのだ。


 まさしく魔導剣士の名に恥じぬ名剣。


 エルフの飛行魔法は人が全力で走る速度と同じくらいだが、中年オヤジに追いつくには十分。開幕早々逃げ出した中年男を眼前に捉えた。


 エルフが魔剣を振り上げると、勢い余った教祖がつんのめって転んでしまった。うつ伏せに転んだ教祖は寝転んだまま仰向けになる。命乞いでもしているのか、ギュッと両目をつむって十字架杖を前にかざした。


「ふん、我が魔剣ディメンションスネークソードからは逃れられん!」


 振り下ろした魔剣が教祖の胴体を真っ二つ! と、エルフは思った。が、


「なにっ!?」


 なぜか空振りしているエルフ。愕然がくぜんとした表情。


 振り下ろした剣筋は間違いなく教祖の胸部を狙っていたにもかかわらず、闘技場の床を叩きつけていた。


 教祖がバリアを張って防御していたのか。いや、バリアをも切断する魔剣だからありえない。


 むしろ振り下ろした魔剣が、見えない力であらぬ方向に押し出されたような、教祖の肉体と剣とが磁石のN極同士で反発したような、そんな感覚だった。


「絶対防御魔法!? いや違う! オレ様の攻撃を防ぐ方法は存在しない!」


 かつてない経験。エルフは震えながら語気を強めた。


 なぜなら、魔剣ディメンションスネークソードは絶対防御魔法ですら防御できない究極の武器。


 ふと気づくと、倒れている教祖の頭上に浮かぶ物体がある。いや、生き物がいる。


「これは……」


 宙にフワフワと浮かぶ生き物は天使の姿をしていた。


 背の低いかわいらしい少女。


 真っ白の短めワンピースと真っ白い靴。


 碧い瞳、白銀のロングウェーブヘアーに生花の髪飾り。


 そして神々しい天使の翼と天使の輪。


「天使……なのか……?」


 かわいらしい天使をいぶかしげに観察するエルフ。


 天使はひとことも語らず、ただニコニコと微笑むだけ。


 すると、教祖が汚れた衣装を叩き、ほこりを落としながら立ち上がった。


「ふぅ~、やれやれ、ぎりぎり間に合いましたな」


「ぬぅ~、貴様! 何をした!?」


 冷や汗を垂らしながら命乞いでもしそうだった教祖の顔が、いつのまにか余裕の表情に変わっている。


「ホホホホホ、うら若き乙女よ、どうか安心なされ。もう余が負けることはなくなり申した」


 聖職者気取りで作り笑顔をする教祖。


「どういう意味だ!」


「そこにおわすは、余を守る絶対守護神、エンジェルちゃんですぞ。今日もかわいいお姿で、ありがたやぁ~、ありがたやぁ~」


 教祖が十字架杖を手にしたままお祈りのポーズ。無言で笑顔の天使少女、その反応が嫌がっているように見えなくもない。


「絶対防御魔法を超える能力だというのか……」


 エルフは話を聞きながら、あからさまに嫌悪感を顔に出す。


「ふん、ならば、これでどうだ!」


 エルフは躊躇ちゅうちょなく、いきなり天使を一文字斬り。


 しかし天使に実体ななく、魔剣が空を切るだけだった。


「ホホホホホ、無駄ですぞ! エンジェルちゃんは神様と同じ存在。姿は見えど触ることまかりならぬ」


 教祖の説明は、天使がアストラル体だと言いたいわけだ。それはエルフの想像どおりでもあった。


「そして、エンジェルちゃんの御加護がある限り、決して余に危害を加えることかなわぬ、というわけですぞ。これぞ天冥真理教の極意、教祖である余だけがなせる神のわざ

 迷える子羊よ、どうか諦めなされ」


 エルフは教祖の言葉を無視し、幾度となく教祖を斬りつけた。魔剣を縦に振り下ろし、横にぐが、教祖の言うとおり、どうあっても太刀筋の軌道が変わり空を切るのだ。


 空間を切断する魔剣であっても、空振りするのであれば斬ることかなわぬ。これこそが『天使の御加護』の御業みわざ、理屈も剣術も関係ない。


「おのれぇ~」



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