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第十八章 怪獣VS巨大ロボット その4

18.3 怪獣VS巨大ロボット 試合模様 巨大ロボット側 その4


 巨大ロボは海獣に向け突進。正面から体当たりすると、タコ足とクラゲ触手をからめ締めつけてきた。


「ヨシ、狙いどおり!」


 巨大ロボも海獣を両腕で抱えた。そのまま海獣を逃がさないようにしてジェット噴射でEタイプ闘技場を覆うドーム状バリアに向け上昇する。


 海獣は巻きつけたクラゲ触手で電撃を放つが、アズの機転で機体ダメージを無効化している。


 ケンシロウの狙いは、ドーム状バリアの超強力な高電圧と熱エネルギーだった。抱えた海獣をバリアに押しつけ、ジェット噴射を全開。そのままバリアに沿って飛行継続し、海獣にダメージを与え続ける。


 その高電圧と熱エネルギーは、海獣の肉を削り擦り減らす。間違いなくダメージは大きい。巨大ロボのパワーに負けじと、狂ったように暴れ抵抗する海獣。カニ爪で巨大ロボの首を挟み込み、もぎ取ろうと必死だ。


『ウォーニング。頭部が破壊されます』


「くっ、これまでか!」


 相応のダメージを与えたと判断したケンシロウは、会場内の湖から離れた場所へと向け下降する。が、絡みつく海獣を突き放すため、自身へのダメージも覚悟し、地面に激突するよう下方に向けてジョット噴射した。


 巨大ロボは頭を下に向け海獣ごと地面に衝突、粉塵を巻き上げ大地が揺れる。


 うまい具合に海獣がクッションになるような体勢で激突した巨大ロボは、思惑どおり、海獣を引きがすことに成功した。


 起き上がった巨大ロボは、距離を空けるためホバリングで後方移動。


「復活する暇を与えん! アレスマァァァーズ、ウイングミサイル、フルバァァァースト!」


 左右のメインウイング上面に、36連装小型ミサイルランチャーが内蔵されている。フルバーストで一斉発射する場合、左右合わせて72発のミサイル発射口ハッチが次々にオープンし、マシンガンのように射出されるのだ。


 1秒間に左右6発ずつ、6秒間で計72発のミサイル連射は圧巻の光景。


 上向きで連射された72発の小型ミサイルが弧を描きながら海獣を次々に襲撃、上空から狙う誘導性の高いミサイルは全弾命中した。


 全身の肉が裂け、タコ足もカニ爪もバラバラに分断される。それでも、損傷した箇所が休みなく再生されていくのが確認できた。


「まだまだ! アレスマァァァァーズ、ファイヤァァァァー、キャノン! 全弾発射!」


 アレスマーズファイヤーキャノンは弾倉式で左右12発ずつ装填されている。既に1回使用しているので、残りは11回発射可能。


 左右合計で22発の火球焼夷弾(しょういだん)を全弾連射、海獣を炎の海に沈め、火ダルマと化す。もはや、肉体が再生しているとは思えない激しい炎の渦。身動きしている様子もない。


 いったん静止した巨大ロボは、地上で4枚のウイング放電パネルを展開し、ファイナルスマッシュサンダーの発射態勢。30秒のエネルギー充填を終えた。


「トドメだ! アレスマァァーズ、ファイナル、スマッシュサンダァァァァー!」


 雷撃の奔流ほんりゅうが30秒間照射され、海獣の細胞を跡形もなく消滅させていく。


「これで倒せなければ、こちらの負けだ」


 ケンシロウは言葉どおり、背水の陣で最終攻撃に臨んでいた。アレスマーズロボのエネルギーはもう尽きかけている。


 大地が黒焦げになり焼夷弾の炎がようやく鎮火した。黒煙が漂い目視で確認しにくかった最終結果の全貌がいよいよ明らかになる。


 うごめく物体は見当たらない。焦げた大地に、海獣が燃え尽くして炭となった残滓ざんし以外はなさそうだ。しかし、


「なんだ、あれは……」


 ケンシロウは、空中に浮かぶ直径2mほどの球体を見つけた。


『対象の細胞ではありません。異なる物体です』


 球体は透明で、中に人型の影。


「アズ、警戒しながら近づいてくれ」


『コマンド、アクセプト』


 巨大ロボが浮かぶ球体に接近する。


 球体は水の玉だった。そして、水玉の中には気を失っていると思しき美しい人魚の姿があった。上半身が女性の身体、下半身が魚のそれ、神話など数多くの文化で伝承される架空の生物、あの人魚だ。


 巨大ロボが両手で水玉を優しく包み込もうとしたが割れてしまった。流れ落ちる水、手の平の中で横たわる人魚。


 巨大ロボの頭部が浮き上がり、コックピットのハッチが開く。ケンシロウは手の平に降り立ち、人魚の生死を確認した。


 息がある。


 ヒップまで届くマリンブルーのロングヘアーは、南国の海に注ぎ込む清流のごとく美しく輝く。上半身は貝デザインのビキニ。アクアマリンのティアラ、ネックレスにブレスレット。まるで物語に登場するお姫様。


 ケンシロウは、美しき人魚に魂を奪われていた。この世のものと思えぬほどの美貌。


 しばらく呆然と眺めていると、人魚の目が薄っすらと開く。


「大丈夫か? オレはケンシロウ、綾乃光寺剣志狼だ。」


 ケンシロウは腰を落とし、顔をのぞかせ語りかけた。


 美しき人魚は状況を理解できていないのか、しばらくケンシロウの顔を見つめる。


「わたしは……、わたしは助かったのですか? シーギメラスはどこへ?」


「あの海獣はオレが倒した。キミはあの海獣とどういう関係なんだ?」


「では、あなた様がわたしを解放してくれたのですね」


「解放? どういう意味だ?」


「わたしは人魚の国の姫。わたしが住む人魚の国は魔物の群れに襲われました。その時、人魚の国を守護する海神の魔法によって、姫であるわたしはネクロマンサーになったのです。

 そのネクロマンサーの力で、シーギメラスを誕生させ国を救うことができました」


「キミがネクロマンサー? それじゃ、シーギメラスというのは……」


「はい、アンデッドの怪物です。わたしが死霊魔術を使い、死した海の生き物の力を借りて誕生させたキメラなのです。

 しかし不幸なことに……、シーギメラスが国を救ったのち、魔物をたくさん殺した反動で悪霊となってしまいました。

 そして、逆にわたしを支配したのです。わたしはシーギメラスの邪悪な精神攻撃に耐え切れず……、死に至りました」


「しかし、キミはこうして生きているように見えるが」


「わたしは自らの死霊魔術で、無意識に自分自身をアンデッドとして蘇らせたのです。肉体は蘇ったのですが、シーギメラスの精神支配は解けず、ずっとシーギメラスの中に閉じ込められていました」


「オレが奴を倒すことで、キミは解放されというわけか」


「はい。あなた様がわたしを救ってくれたのです」


「なるほど、よくわかった。さて人魚姫、名前を教えてくれないか」


「あっ、失礼しました。わたしはパメラ・マリンと申します。お礼を言わせてください。ありがとうございます、えっと……」


「ケンシロウ、綾乃光寺剣志狼」


「ケンシロウ様、ありがとうございました」


 ケンシロウは、人魚をお姫様抱っこで持ち上げた。


「あっ……」


 顔を赤くする人魚。


「とにかく試合は終わった。キミを送ってあげよう」


「はい、ありがとうございます、ケンシロウ様」


 アレスマーズロボ、第二回戦進出!



 §   §   §



18.4 海獣シーギメラス&人魚パメラ・マリン


 人魚パメラ・マリンは、並行世界の地球の海洋に存在する人魚の国の姫だ。


 人魚の国が深海に巣くう異形の魔物軍団に襲撃された際、彼女は国を守るため、人魚の国を守護する海神の魔法によってネクロマンサー——海の生物限定の死霊魔術師——になった。人魚の国を愛するがゆえの自己犠牲的な決断だ。


 そのネクロマンサーの死霊魔術によって、海洋生物の死骸をアンデッドモンスターとして合成し、全長23mの海獣シーギメラスを誕生させている。


 ところが、不死海獣は魔物をたくさん殺した反動で悪霊となってしまう。さらに、もともと主であった人魚姫をも精神攻撃で殺してしまったのだ。


 もともと心の優しい性格で戦闘に向かない若き姫であるがゆえに、抵抗はかなく無情の死に至る。しかし奇跡的にも、人魚姫自らが死霊魔術によってアンデッドとして蘇ることができた。


 そして不死海獣がアレスマーズロボに倒され、内部で束縛されていた人魚姫がついに救い出されたのだ。


 海獣シーギメラスの大会参戦は、人魚姫の意志によるものではない。巨大なアンデッドモンスターの存在は脅威だが、大会運営が参戦に関与しているのだろう、とだけ述べておく。



【ポイント評価のお願い】

 数ある作品群から選んでいただき、そして継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。

 誠に図々しいお願いとなりますが、お手間でなければ、ポイント評価をお願い申し上げます。

 どうも有難うございました。


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