第十八章 怪獣VS巨大ロボット その2
18.3 怪獣VS巨大ロボット 試合模様 巨大ロボット側 その2
先制するケンシロウ。
「アズ、正攻法でいく! このまま上空から攻撃するぞ!」
『イエス、ケンシロウ』
「アレスマァァァァーズ、ハンド、ビイィィィィーム!」
両手を前に突き出し、手の平を海獣に向ける巨大ロボ。開いた手の平中央のビーム発射口にエネルギーが集約すると、黄色い閃光が照射された。海獣を捉える二筋のハンドビーム。
ビームの超高熱が海獣の胴体を焼く。焼け焦げ箇所が抉れ、ブスブスと白煙が立ちのぼった。
『対象にダメージあり』
戦闘AIから状況報告。
「ヨシ、上空からウイングミサイル、続けざまにファイヤーキャノン、ファイナルスマッシュサンダーでトドメを刺す」
『お待ちください、ケンシロウ。対象に変化あり』
「詳細をくれ!」
『対象がハンドビームのダメージを一瞬で修復しました』
「なに!?」
『言葉どおりです。一瞬で治癒完了。高い再生能力があるようです』
「不死身というわけか……?」
『アファーマティブ』
「くっ……」
『弱点解析のため、攻撃継続を推奨!』
「了解した! アレスマァァァァーズ、パァァァァーンチ! 奴の脳天を狙え!」
『コマンド、アクセプト』
アレスマーズパンチは前腕部が切り離され、ジェットエンジンで推進、飛行するパンチ系兵器。
射出された前腕部は、縦横無尽に動く破壊不能な非物質系光ファイバーによって上腕部の分離面とつながっている。四つのメインバーニアと四つの制御系スラスターで高い機動性を誇り、戦略の幅を広げる飛行兵器。
両手から放たれたアレスマーズパンチが、海獣の頭部を狙って飛び交う。海獣は避けるという芸当が苦手なのか、ジェット噴射の強力なパンチが続けざまに頭部にヒットした。
『ケンシロウ、大きなダメージを期待できません』
役目を終えたアレスマーズパンチが元の位置に戻る。
「タフな奴め! ならば、 アレスマァァァァーズ、ファイヤァァァァー、キャノン!」
バックパックバーニア機構の両肩部分にあるハッチがオープンすると、それぞれ砲身が顔を出し、アレスマーズファイヤーキャノンを発射した。
ヒートエネルギーが二発の火球焼夷弾となって、海獣の胴体に直撃。火球が衝撃で肉を抉り、損傷個所を焼夷弾が燃やすという二重の破棄力を発揮する。
海獣は海洋生物の合成獣。案の定、火に弱い肉体には効果てき面だ。ウニュウニュとうごめくタコ足の移動速度が増した。巨大ロボを正面に見据えながら後方の湖へと後退する海獣。
「逃がすか! アレスマァァァァーズ、ハンド、ビイィィィィーム!」
ハンドビームで追い討ちをかけながら、海獣に急接近する巨大ロボ。
「パワー比べだ! アズ、奴を湖に逃がすな!」
『コマンド、アクセプト』
巨大ロボは海獣に正面から突撃、その巨躯に体当たりした。両者は正面から掴み合い、がっぷり四つの様相。海獣はカニの巨大バサミで機体を挟み込もうと暴れ、タコ足で巨大ロボの胴体を縛りつけた。
巨大ロボも大地を踏みしめパワー全開、力ずくでカニ腕をもぎ取る。
「奴の口からハンドビームを撃ち込む。頭をまるごと破壊するんだ!」
『コマンド、アクセプト』
巨大ロボはサメ頭の鼻先と下アゴを両手で掴み、むりやり口をこじ開ける。そのまま口の中に腕を突っ込もうとした刹那、その喉奥からウツボの頭が二つ出現し、巨大ロボの頭に咬みついた。
サメの口からウツボが2匹、上半身だけ這い出てウニョウニョと暴れているという異様な光景。
「ぬっ、なんと奇怪な! キメラは何でもありか!」
間髪入れず、2匹のウツボが口から黄土色のガスを吐き出し、巨大ロボの顔に吹き掛けた。
『成分分析。対生物神経麻痺性ガスです。機体には無害です』
「了解だ!」
ウツボの存在のため、結果的にサメの口が半開きになっている。
「チャンス! アレスマァァァァーズ、ハンド、ビイィィィィーム!」
ケンシロウの思惑どおり、サメの口腔からウツボごと頭部を右腕ビーム攻撃で破壊した。サメ頭が吹っ飛び、海獣は首無しとなった。
しかし海獣はいっこうに怯まない。巨大ロボの胴体を締めつけるタコ足の圧力は増し、機体が軋む。
「おのれ! こいつに弱点はないのか!」
先ほどの火球焼夷弾で与えたダメージも徐々に修復し始めていた。
「アズ、いったん上空で態勢を立て直す! アレスマァァァァーズ、ジェット、ウイィィィィング!」
ジェットエンジンを再び稼働させる。
すると、海獣がクラゲの触手をバックパックとウイングにからめてきた。そのまま高電圧の電気ショック攻撃。
アレスマーズロボのコックピットは人命保護能力の高い構造設計で、高電圧の電気ショックでパイロットがダメージを受けることはない。
しかし、ジェットエンジンのブレイカー装置が作動し、エンジンが停止する。
『ケンシロウ、敵の電気攻撃でジェットエンジンに不具合発生。修理が必要です』
「了解。至急修理を!」
『コマンド、アクセプト』
アレスマーズロボが超高性能近代兵器である理由の一つ。
機械の巨体内部に独立稼働する修理用メカが多数常駐し、自己修復が可能なのだ。その意味では、アンデッドと変わらないのかもしれない。
「しかし、電気クラゲの攻撃方法は単なる毒針だ、電気攻撃はできないはずだが、アズ?」
『自然界の電気クラゲに発電機能はありません。代わりに、電気ウナギなど発電生物の発電機構に類似する機能を備えているものと想定できます』
「なるほど、了解した」
次の戦術を思考するケンシロウ。
「アズ、サブウイングでホバー移動できるか?」
『ポシブル』
「ヨシ! アレスマァァァァーズ、ハンド、ビイィィィィーム!」
巨大ロボをからめているタコ足とクラゲ触手を、ビーム攻撃で焼き切り、捕縛から脱出。そのままホバー移動で後退し距離を稼ぐ。
首無し海獣は湖に向け移動を始めた。いまだに肉体のあちこちが焼けただれ、損傷が激しい。が、破壊された頭部も徐々に再生しつつある。
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