第十六章 吸血鬼VS鬼 その4
16.9 吸血鬼VS鬼 試合模様その七 鬼側
「ギャハハハ、吸血鬼め、目に物見せてくれるわ!」
先ほど青鬼が吸血鬼を捕まえた時、体長2mmまで縮小していた赤鬼が、吸血鬼の耳から頭の中へと侵入していた。
赤鬼青鬼が同時に元のサイズに戻れば、当然、吸血鬼の頭蓋骨と脳は破壊できる。アンデッドといえども脳の破壊は致命的だ。
縮小化を解除しようとしたその矢先だった。
赤鬼が潜む吸血鬼の耳の中で、吸血鬼剣山が360度全周から無数に出現、急速に伸張する。どうやら、吸血鬼の体内では毛細血管を破って、そのような芸当が可能なようだ。
全身をくまなく剣山で突き刺され、まったく身動きができなくなった赤鬼。そのまま吸血鬼剣山のエナジードレインで生命エナジーを根こそぎ吸い取られ、失神寸前に陥った。
青鬼が異変に気づいた。兄である赤鬼が窮地に陥っているのは、共有感覚で伝わるのだ。
「兄者、今巨大化を解除するぜ!」
青鬼が元のサイズへと収縮し始めた。同時に元のサイズに拡大し始める赤鬼。吸血鬼の頭の中で大きくなっていく。
吸血鬼の頭が破裂して、中から赤鬼が姿を現した。そのまま元のサイズへと戻り地面に落下。
頭の半分を失った吸血鬼も、同様に地面へと落下した。
「兄者、大丈夫か!」
「デズ、ヘヘ、なんとか奴をやったか」
「あぁ、奴は頭を失って倒れたぜ」
「そうか」
生命エナジーを極限まで失った瀕死の赤鬼を助けるべく、元の鬼ジェミオスマンに合体する鬼兄弟。
その直後。
鬼ジェミオスマンの首が赤いレーザー光線で切断された。
§ § §
16.10 吸血鬼VS鬼 試合模様その八 吸血鬼側
「残念だったな。オレ様は不死身だ。頭を失ってもな」
首を切断された状態で棒立ちしている鬼の背後に、吸血鬼が勝利を確認すべく近寄ってきた。
破壊されたはずの吸血鬼の頭部が、いつの間にか再生されている。最強の最終形態では、脳が破壊されても再生復活が可能だったのだ。
そして最終形態となった吸血鬼のもう一つの特殊能力がレーザー光線。
最終形態へと成長した吸血鬼は、額にある真紅のルビーから赤いレーザーカッター光線を発射可能になるのだ。その鋭い切れ味から逃れるのは困難を極める。
しかしジェミオスマンを倒すためには、分裂した赤鬼青鬼のままでは簡単に殺せない。なんとか油断させ、元のジェミオスマンに戻るのを待つ必要があった。
やがて、無言となった鬼の首が胴体から離れて落ちる。続けて、その胴体も横に倒れた。
吸血鬼の思惑どおり、2体の鬼が合体し元の1体に戻ったところで斬首が成功したわけだ。
最初から最後まで熾烈な攻防ではあったが、最後に笑ったのは吸血鬼だった。
吸血鬼キングクローフィ、第二回戦進出!
§ § §
16.11 鬼ジェミオスマン
4本腕、四ツ目、3本角の鬼、ジェミオスマンは並行世界の地球に棲みついた異星人である。人間を遥かに凌ぐ強靭な肉体とパワー、そして特殊能力がある異星超人と呼ぶべきだろう。
およそ500年前、並行世界に存在する天の川銀河のとある惑星から、彼ら鬼種族が地球にやって来た。
なぜならば、500年以上前に、彼ら鬼種族が生息していた母なる惑星に巨大な隕石群が降り注ぎ、あらゆる生物が絶滅の危機に瀕したからだ。
彼らの生き残りが宇宙船で惑星を脱出、そのうち100名にも満たない鬼種族が数十年の時を経て、命からがら地球に辿り着くことができた。
燃料の少なかった宇宙船は無事不時着できたものの、再度、地球から離脱するための飛行機能を完全に喪失してしまった。
やがて鬼種族は地球に棲みつくことを決意する。
地球の原住民、人間の存在を知っており、現地の文明と衝突しないよう身を隠し、人里離れた山奥に住み着いた。
人間と同じように食料を自給自足、なんとか生き延びて平和に生活を送ってきた。
長い年月の間に、現地の人間に姿を見られてしまうこともあり、頭に角を生やす風貌を『鬼』と名付けられ、伝記としてその存在が語り継がれた。
鬼種族とは、人間が勝手につけた名称であって、彼らが自ら名乗っていたわけではない。
頑丈な肉体ではあったが、地球現地の病原菌に対する免疫がないことで多くが命を絶やしてしまう。
そして双子の鬼、ギルとデズが最後の鬼種族として地球に生き残った。デズが死にかけた時、デズの魂をギルの肉体に宿らせ、二つの魂が一つの肉体を共有する鬼種族の秘術を施し合体に成功する。
ジェミオスマンが大会に参加した理由は、優勝して、地球以外に逃げ延びたであろう同種族の仲間を見つけ合流するという夢を叶えるためだった。
彼が息絶えれば、地球上でもう生き残りはいない。
異星から逃げ延びてきた鬼種族は、そんな苛酷な運命に翻弄され続けた悲しき存在なのだ。
願わくば、他の惑星で彼ら種族が元気に生存していて欲しいものだ。
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