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第十六章 吸血鬼VS鬼 その3

16.6 吸血鬼VS鬼 試合模様その四 吸血鬼側


 鬼兄弟の動向をいぶかしげに観察していた吸血鬼が口を開いた。


「お前らも再生能力があるのか?」


「オレらは再生するのと違う」


 どうやら、斬首しても死なない怪奇現象の謎は秘密らしい。しかし、吸血鬼には思い当たる仮説がある。もっと情報がほしいところだ。


 吸血鬼は左腕傷口の凍りついた氷が溶けるのを待っていた。


 そろそろと思い、地上に急降下。右手の吸血鬼剣で赤鬼を狙う。


 青鬼が反応して、吸血鬼の正面に対峙した。


「かかったな!」


 吸血鬼は左腕傷口から血で造った鞭を伸ばし、青鬼を両腕ごと縛りつけた。


 『吸血鬼鞭』——血液で生成した真っ赤な鞭——は蛇のように自由自在に動き回る。手の平で触るのと同様、縛りつけることでエナジードレインできるのだ。


 吸血鬼鞭の中を吸収したエナジーの塊が走り、光ファイバーを通過する光さながら、次々と吸血鬼の左腕へ流れ込む。


 赤鬼が咄嗟とっさに吸血鬼鞭を掴み、ヒートハンドで溶かした。そのまま吸血鬼に掴みかかる赤鬼。


「馬鹿め!」


 その行動も読んでいた吸血鬼、左腕傷口から無数の吸血鬼峨嵋刺を飛ばす。胸板に血針が次々と刺さり、赤鬼の上半身が針山と化した。


 続けて吸血鬼剣で赤鬼に斬りかかろうとしたところを、青鬼がドロップキックでカット。


 転倒した吸血鬼。その隙に赤鬼は刺さった吸血鬼峨嵋刺を豪快に振り払い、青鬼と左右から挟み撃ち。両サイドから吸血鬼に飛びかかる。是が非でも肉弾戦に持ち込もうとする鬼兄弟。


 冷静に迎え撃つ吸血鬼。


 右手の吸血鬼剣で青鬼の胸を正面から貫く。肉体硬質化を避けていたことが裏目に出た。


 左腕傷口からは、血で造った巨大な棘が多数突き出し、剣山となって赤鬼の胸を貫いた。


 『吸血鬼剣山』——血液で生成した真っ赤で巨大な釘を束ねて造った剣山のような攻撃技——は傷口から伸び出る棘を直接突き刺すことで、もっとも効率のいいエナジードレインが可能なのだ。


 青鬼はコールドハンドで吸血鬼剣を凍らせて破壊、赤鬼はヒートハンドで吸血鬼剣山を溶かす。


 しかし、相当量の生命エナジーを搾取さくしゅされ、同時に倒れ込む鬼兄弟。


「フフフ、これだけ吸収すればもう十分だ」


 吸血鬼はちぎれた左腕を拾い、左肘につなげて元に戻した。途轍とてつもない修復力。


 上空へと舞い上がる吸血鬼。地上から距離をとり、ドーム頂点近くまで上昇した。


「ハァァァァァァァァァァァァー」


 最初の変身よりも激しい気合い。


 気勢とともに上半身の筋肉が膨れ上がる。分厚くなっていく大胸筋と上腕二頭筋。上半身の黒いレザーロングコートと黒シャツがちぎれて落下していった。


 裸となった上半身に入れ墨のような模様が浮かび上がってくる。額の肉が割れると、真紅のルビーと思しきものが出現した。


 三つ目の魔眼のようにも見えるが、ガラスのような物体だ。

 そして、蝙蝠の翼は4枚に増えた。


 全身にみなぎるエナジー、全身からほとばしるパワーが目に見えるオーラとなって顕現する。


 4枚の翼を大きく広げ、威風堂々と構える吸血鬼。双眸そうぼう耀かがやく。これまでの印象をいっきに消し去り、畏怖いふの念を抱かせる。


「最終形態変身完了!」


 吸血鬼キングクローフィは、二段階でパワーアップする変身型モンスターだったのだ。



 §   §   §



16.7 吸血鬼VS鬼 試合模様その五 鬼側


「デズ、大丈夫か……」


「兄者、一度合体しようぜ……」


「仕方ない……」


 いいように生命エナジーを奪われた鬼兄弟は、地面を這っていた。かろうじて起き上がる両者。


 最初に分裂した時と逆の工程。横に並んで密着すると、鬼兄弟は合体して4本腕の鬼ジェミオスマンに戻った。


 鬼ジェミオスマンが赤鬼ギルと青鬼デズに分裂すると、生命力の分散で各個体はむしろ弱体化してしまう。つまり、赤鬼青鬼の生命エナジー合計値よりも、元の鬼ジェミオスマン単体の生命エナジー方が高いのだ。


 しかし、赤鬼青鬼に分裂するのは大きな利点がある。


 鬼ジェミオスマンは一つの肉体を二つの魂が共有している。


 2体に分裂し個別に活動した場合、片方が受けたダメージは、鬼ジェミオスマン単体で見た場合の半分しか影響がない。


 つまり、赤鬼青鬼の双方が同時に全く同じ斬首された場合だけ、斬首が成立し死んでしまう。しかし、斬首箇所が異なれば斬首は成立せず死なない。それどころか、首をつなげて素早い復活が可能だ。


 これこそが、首を斬られた赤鬼が死ななかった理由なのだ。


 鬼ジェミオスマンの合体が終えた頃、吸血鬼キングクローフィの最終形態変身が完了していた。


 急降下で突進してくる吸血鬼。


 4本腕の鬼も正面から迎撃、激しく衝突した。


 一方的に吹っ飛ばされる鬼、明らかなパワーダウンは否めない。


「フフフ、どうした鬼よ、もう降参したほうがいいのではないのか?」


「ぐぬぅ~、おのれぇ~」


 吸血鬼が激しく攻め立て、鬼は防戦一方。


 パワーもスピ―ドも、明らかに最終形態の吸血鬼が圧倒している。


「あれを狙うしかねぇ!」


 鬼が独りごちると、後方へ大きく跳躍し距離を取る。一瞬の隙をついて、再び赤鬼青鬼に分裂した。


「兄者!」


「おう、あれをやるぞ、デズ!」


 首肯する青鬼。


 突如、成長し始める青鬼デズ。グングンと大きくなり見る見る巨大化、およそ体長20mまで膨れ上がった。


 鬼兄弟が共有する三つ目の最強妖鬼術。


 青鬼は巨大化能力、そして赤鬼は縮小化能力。他の共有妖鬼術と同様に、巨大化と縮小化は同時に行う必要がある。


 青鬼の巨大化は最大で体長およそ20m、赤鬼の縮小化は最小で体長およそ2mm。


 それぞれの拡大比率と縮小比率がマッチしていないが、能力を個別に最大限まで発揮した結果に過ぎない。


 巨大化した肉体で吸血鬼を襲撃する青鬼。巨大化した体躯は、重力の影響が大きいせいで、動きが遅くなりそうなものだが、青鬼のスピードは素早い。


 その隙に赤鬼はあることを模索する。



 §   §   §



16.8 吸血鬼VS鬼 試合模様その六 吸血鬼側


 さすがに吸血鬼も一瞬動揺した。


 しかし、巨大鬼はただ殴りかかってくるだけの攻撃、見切るのは容易だ。4枚の翼で縦横無尽に飛翔する吸血鬼は、青鬼の素早い攻撃を難なくかわす。


 ただし、状況の打開策は見当たらない。攻めあぐねる吸血鬼。


 吸血鬼は飛び回るうち、ふと赤鬼がどこにもいないことに気づいた。一瞬、空中で停止して周囲を見渡す。が、油断したため、巨大鬼に捕まってしまった。


 両手で潰しにかかる巨大鬼。フルパワーで抵抗する吸血鬼、なんとか危機を脱出。


「なるほど、そういうわけか」


 あることに気づいた吸血鬼、なぜかほくそ笑む。



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