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第十六章 吸血鬼VS鬼 その1

16.1 第一回戦第八試合 吸血鬼VS鬼 対戦情報


 観戦モニターに表示されている対戦情報より。


 闘技場について。


 本日の闘技場はEタイプ。第二試合でドラゴンと恐竜が戦った屋外会場。


 直径1kmの半透明なドーム状バリアで隔離された空間。


 自然にあふれ、岩石地帯、森林地帯、湖などがある。ドームバリアは超強力な高電圧と熱エネルギーで形成され、接触すると相応のダメージを負う。


 吸血鬼について。


 名はキングクローフィ。


 太陽光線を克服した吸血鬼完全体。また、十字架、聖水、にんにくなどでダメージはない。


 蝙蝠こうもりの翼で飛行する。


 鬼について。


 名はジェミオスマン。


 超人的なパワーと耐久力を誇る4本腕の鬼。


 飛行能力はないが、跳躍力は高さ100mほど。


 武器:鬼獄器『火炎金棒』、鬼獄器『氷結鉄球鎖』



 §   §   §



16.2 吸血鬼VS鬼 試合開始前 闘技場


『シアイカイシ、1プンマエ』


 闘技場内に転送されてくる2体の影。およそ200mの距離を保ち、向かい合って対峙するように出現した。


 吸血鬼キングクローフィ。


 黒いレザーロングコート、黒いレザーパンツ、黒シャツ、黒くてトゲトゲしい革製腕防具。


 背には赤黒い蝙蝠の翼。翼を広げれば、吸血鬼の体躯たいくをまるごと包み込めそうな大きさ。


 黒髪のオールバック。細身の青年だが、顔の青白さが不健康そうな印象を与える。


 鬼ジェミオスマン。


 4本腕に四つの目、3本の大きな角のモンスター。筋骨隆々のパワーファイター。


 上半身裸で裸足、柔道着のように動きやすい黒いズボン。もっとも目を引く特徴は全身の右半分が赤く、左半分が青い、2色の体躯。


 ズバリ、2本角の赤鬼と1本角の青鬼が合体したようなデザインだ。


 2本ある右手側で火炎金棒を一つ、同様に左手側で氷結鉄球鎖を一つ携える。


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』



 §   §   §



16.3 吸血鬼VS鬼 試合模様その一 鬼側


『……3、2、1、ゼロ』


 試合開始の合図。


 吸血鬼は蝙蝠の翼を広げ、急上昇。突如方向転換し、鬼に向け急降下。


 吸血鬼の動向を目で追う鬼。何も握っていない2本の手を広げ、真正面から迎え撃つ。


 両手を突き出し正面から突進する吸血鬼。鬼は分厚い胸板で難なく受け止め、がっしり吸血鬼の胴体をつかんだ。そのまま地面へと叩きつける。砂煙が舞った。


「グゥハハハ、軟弱、軟弱、なんという弱さか!」


 わらう鬼。


 地面に伏す吸血鬼の頭部を蹴り上げ、その肉体を半回転させて仰向けに変えた。そのまま両足を掴み、2本腕でジャイアントスイング。凄まじい勢いで地面に激突し、何度も地面を跳ねゴロゴロと転がっていく。


 突如、4本腕の鬼が身体の中心線に沿って左右に割れていく。


 赤鬼と青鬼が半分ずつくっついたようなデザインの身体が、文字通り2本角の赤鬼と1本角の青鬼に分離した。4本腕はそれぞれ2本腕に分かれ、人間と同じ四肢体型の怪物2体へと変貌した。


 赤鬼は『火炎金棒』を右手に、青鬼は『氷結鉄球鎖』を左手に握る。


 観戦者からすれば、案の定だったかもしれない。


「ギャハハハ、自己紹介するぜ。俺たちは一つの身体を二つの魂が共有する双子の鬼だ! オレは赤鬼のギル!」


「クックックッ、オレは青鬼のデズ!」


「オレたちゃもともと一つの肉体、反則はしてねぇぜ!」


 遠くの地面に転がっている吸血鬼に聞こえたかどうかわからないが、赤鬼青鬼は観戦者にもアピールしている。


 吸血鬼は飛ばされた遠くでヨロヨロと立ち上がった。


「ギャハハハ、あいつは弱っちすぎるが、遊んでやるかぁ、弟よ!」


「クックックッ、あっさり殺すとおもしろくねぇぜ、兄者!」


 2体の鬼が勢いよく跳躍すると、一瞬で吸血鬼の眼前に着地した。


 赤鬼が所持する『火炎金棒』は、炎に包まれた真っ赤な金棒、殴った物を燃やす性質がある。


 青鬼が所持する『氷結鉄球鎖』は、トゲトゲの付いた青い鉄球を鎖で振り回す武器、叩きつけた物を凍結させる性質がある。


 火炎金棒と氷結鉄球鎖は『鬼獄器』と称され、鬼族に伝わる摩訶不思議な妖術『妖鬼術』によって、特殊な性質を付与されている。


「ケッ、飛べないようにしてやるぜ!」


 赤鬼は火炎金棒をフルスイングし、吸血鬼の翼をメッタ打ちし始めた。吸血鬼の蝙蝠の翼が燃える。穴だらけとなった蝙蝠の翼、おそらくもう飛べない。


 弟の青鬼も氷結鉄球鎖の鉄球を鎖でグルグルと回し、吸血鬼の両足を叩きつけた。


 吸血鬼の両足が凍り付いた。


 青鬼がもう一度、氷結鉄球鎖を叩きつけようと投じた刹那せつな、吸血鬼が辛うじて鉄球をかわす。すると、赤鬼が振り回していた火炎金棒と氷結鉄球鎖の鉄球がぶつかり合った。


 激しい衝撃とともに衝突してしまった二つの鬼獄器は、真っ白く変色し崩壊寸前のガラス細工のようにひび割れてしまう。


 炎と氷という異なる性質同士を相殺し、双方の妖鬼術を消失させてしまったようだ。


 鬼兄弟は、せっかくの武器を投げ捨てた。


「チチッ、デズ、あれだけ気をつけろといつも言ってるじゃないか!」


「すまねぇ、兄者」


 フラフラの吸血鬼は、両足の氷で辛うじて立っている。


「デズ、いつものフルコースだ!」


「クックックッ、待ってました、兄者!」


 吸血鬼を前後から挟むように立つ赤鬼と青鬼。


 2体の鬼はそれぞれ前後から助走し、同時にドロップキック!


『サンドイッチ・ドロップキック』炸裂!


 着地と同時に続けて前後からタックル!


『サンドイッチ・デーモンタックル』炸裂!


 吸血鬼の足元の氷は、衝撃で粉砕されてしまった。


 悶絶し前屈みに倒れそうになった吸血鬼の正面両サイドに立ち並ぶ赤鬼と青鬼、吸血鬼の頭を脇の下に抱え込む。2体の鬼がそろって吸血鬼を真上に持ち上げ、背中側へと勢いよく落下! 


『ツープラトン・ブレーンバスター』炸裂!


「ギャハハハ、まだまだ終わんねぇぜ!」


 赤鬼が倒れ込んだ吸血鬼を引き起こし、むりやり前屈みの体勢へ。吸血鬼の身体を背中側から抱え込み、頭を両太腿で挟み込む。真上に持ち上げて脳天落としの準備完了。


 そこへ青鬼が跳躍し、天に向かって立てられた吸血鬼の両足裏に着地。吸血鬼の脳天が勢いよく地面に叩きつけられた!


『ツープラトン・パイルドライバー』炸裂!


「クックックッ、最後の総仕上げだぁ。死んじまったらすまねぇな」


 青鬼が自身の両足で、うつ伏せになった吸血鬼の両足を挟むようにからめる。吸血鬼の両手を背後から掴み、自身は背中側に倒れ込むと、吸血鬼を仰向けでエビ反りになるように吊り上げた。


 これぞロメロスペシャル!


 そこへ、赤鬼が真上に高く跳躍し、空中で倒立するように反転した。両腕を組み、全身をドリルのように回転させ落下。大きな二つの角がミキサーのように回転し、エビ反り状態の吸血鬼の腹部へ直撃!


『デーモンヘルクラッシュ』炸裂!


 赤鬼の角は、吸血鬼の腹を抉り穿つ。


 青鬼はロメロスペシャルの体勢を解き、吸血鬼を地面に転がした。


「どうした吸血鬼、もう降参したほうがいいんじゃねぇか? ギャハハハ」


「クックックッ」


 うつ伏せに倒れた込んだ吸血鬼の引き裂かれた腹から、ドクドクと血が流れ出る。


 吸血鬼を間近で見下ろし、対戦者の敗北宣言を待っている鬼兄弟。鮮血が鬼の足元まで広がり、赤肌の素足と青肌の素足を濡らしている。


「グッ、兄者……」


「ぬぅ、お前もか、デズ」


 突如、2体の鬼は同時にめまいを感じ、ふらついた。


「その血から離れろ、デズ」


 赤鬼は青鬼に声をかけつつ、自身も吸血鬼の鮮血から離れる。


 うつ伏せだった吸血鬼が、突如身体を起こし、えぐれた腹を鬼兄弟に向けた。


 鮮血で真っ赤に塗られた傷口から、無数の赤いとげが顔を出す。その棘がニューッと伸び、真っ赤な血液が液体から個体に変化、次々と長い針へ変化していく。


 まるで威嚇いかくするヤマアラシの背中のように無数の針が突き出し、一斉に2体の鬼に向け発射された。次々に鬼の肉体に突き刺さる真っ赤な針。


 赤鬼と青鬼には、共有する『妖鬼術』がある。


 赤鬼は握った物質を加熱する『ヒートハンド』。


 青鬼は握った物質を冷却する『コールドハンド』。


 しかし、鬼兄弟が一つの肉体を共有する関係で、加熱能力と冷却能力は一心同体なのだ。温度変化の絶対量が一致するわけではないが、大雑把な理屈としては熱量を足せば常温になるという具合だ。


 つまり、どちらかが能力を発動すると、一方も勝手に能力が発動するという扱いにくさがある。


 赤鬼は突き刺さった血液針をヒートハンドで蒸発させる。


 青鬼はコールドハンドで血液針を凍らせ、抜き取っていく。


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