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第十五章 アラト専用秘密兵器 その1

15.1 アラト専用秘密兵器 前編


 第七試合を観戦し終えたのち、ギリコは夕方また戻ってくるとアラトに告げて部屋を去っていった。


 そしてアラトはソワソワ、ワクワクがと止まらない。


 忍者と女格闘家の対戦も興味深かったが、それ以上に楽しみにしているのだ。世紀末覇者ギリコが、自称IQ10,000の知力でいったいどんな兵器を開発しているのか。


 これぞ、男のロマン! と、ニヤケっぱなしだ。



 ◆   ◆   ◆



 その日の夕方、ようやっとギリコが姿を現す。


「アラトさん、お待たせいたしました。ようやっと届きましたので」


 アラトの部屋に入ってきたギリコの後ろに、運搬ロボットがゾロゾロとついてきた。


 一辺が1.5mほどもあるサイコロ状のコンテナが三つ並ぶ。

 ギリコが一つ目のコンテナから、プロテクターらしき黒いパーツを多数取り出した。


「さぁ、アラトさん、着てみてください」


 なるほど、アパレル関連の仕事というのは、こういう意味かと思いながら、装着を試みる。


 まず、防水性で厚めのズボンと長袖シャツに着替える。


 上半身には、モトクロスライダー、野球のキッチャーやアイスホッケーの選手が装備しそうなチェストプロテクターとショルダーパッド。


 脚部にスネ当てとなるレガース。腕部にガントレット。加えて、アゴが丸出しとなっているハーフヘルメットにゴーグル。シューズは、柔らかくて歩きやすいのに頑丈だ。なにか特殊な素材で造られているのだろう。


 全身がブラックをベースに、オレンジで特徴的なデザインをあしらったコーディネイト。


 全て装着してみると、なかなかの重量だ。


「重いね、これ」


 二つ目のコンテナから、50kgぐらいあるだろうか、かなり重いバックパック。ギリコにサポートしてもらい、座った姿勢で背負うが、立ち上がるのはとても無理。


 続いて、腕の甲側に装着する銃と思しき装備。


 そして、バックパックの右肩側に設置する予定のメカっぽい物体、テレビカメラを彷彿ほうふつさせるがおそらくバズーカの類だろう。相当な重量のため、とてもじゃないが装備できそうもない。


 そして三つ目のコンテナから、横幅0.6m、高さ1.2m程度の厚い鉄板、いわゆる手持ち式のシールドが出てくる。表面に『新人』と、白文字で大きくペイントされている。間違っちゃいないが、なんとも恥ずかしい。


「どうですか、アラトさん。世界初、統一カラーコーディネイト、パワーアシストジャケット! 略してパワードジャケット!」


 と、鼻息荒く解説するギリコ。ちょっと美人が台無し。


「いろいろと突っ込みどころが……」


「なんでしょう」


「まず重い。すこぶる重い。バックパックだけでズッシリくるから、立ち上がれない」


「申し訳ありません。では、電源を」


 ギリコがバックパックのスイッチをオンにすると、ウィーン、と機械音が鳴り、起動するのがわかる。


「おっ? おっ? あっ、軽くなってく! おぉぉぉ~、嘘みたいに軽くなった!」


 スッと立ち上がるアラト。


「ですよねぇ~」


 と、ニコニコ顔のギリコ。


「どうですか、そうですか。セッティング調整とかいろいろできますが何かご注文はありますか?」


「う~ん、じゃ、痛いの嫌なので防御力全振りでお願いします」


「ダメです」


「えぇぇぇぇぇぇー、どうしてダメなんスかぁ~」


「防御力重視だと機動力が落ちます」


「じゃ、能力は平均値でお願いします」


「ダメです」


「えぇぇぇぇぇぇー、どうしてダメなんスかぁ~」


「最低限、攻撃力は平均値より上でないと勝負になりません」


「じゃ……」


「アラトさん、取りあえず、今のセッティングで頑張ってみてください」


「じゃ、痛いの嫌なので定時でおウチに帰ります」


「無理です」


「ですよねぇ~」


「アラトさん、ご満足ですか? 以上でよろしいですか?」


 ギリコの問い掛けに対し、口元に右手を添えて考えるアラト。


「ん~、そうね。チンガードが無いのがちょっと不安かな」


 ギリコが一瞬ピタッと動きを止めた。


「す、す、すみません、アラトさん! そ、そうですよね、やっぱりチンはガードしないといけませんわ」


 なぜかギリコは突っ立っているアラトの股間部分を凝視している。


「え~と、義理子先輩? チンガードのチンはアゴですよ。ヘルメット、どしてフルフェイスにしなかったんです?」


 超絶美人アンドロイドはゆっくりと視線を外すようにソッポを向いた。


「先輩、どうしました?」


 義理子先輩の顔をのぞき込む。すると、逆方向にソップを向いた。


「え~と……」


 アラトはポリポリとヘルメットの上から頭をかき、突如として浮上した疑問を確認したくなった。


「チン!」


 ビクッ、と跳び上がるように反応するアンドロイド。彼女は明らかに狼狽ろうばいしている。こんな反応を見るのは始めてだ。


「義理子先輩、チンが好きなんですか?」


 唐突に俊足で部屋を出ていくアンドロイド。どこまで行ったのか、しばらくしてから戻ってきた。シレッと何事もなかったかのような表情を浮かべている。


「取り乱してすみません、アラトさん。さぁ、装備確認を続けましょう」


 悪戯っぽくニヤっとするアラト。


「どうして取り乱したんですか、先輩?」


 無反応のアンドロイド。


「ねぇ、先輩? ねぇ、ねぇ」


 義理子先輩の顔がヒクつき、右手が震えているように見える。


「アラトさんのバカァァァ!!」


 と絶叫しながらストレートパンチをアラトに浴びせた。アラトはパワードジャケットを装着したまま、後方の壁まで素っ飛ばされた。


「イテテテ……」


「す、すみません、アラトさん」


 ギリコが慌てて駆け寄る。


「もう、意地悪止めて下さい!」


「いや、でも、全然痛くなかった。思い込みで『イテテテ』とか口走ったけど、そんなことない。このスーツ、凄いなぁ!」


「パワードジャケットです。スーツではありません」


「左様で……」


 アラトがぶつかった箇所を確認すると、壁がめり込み、見事に破壊されていた。


(ゲゲ、ギリコのパワースゲェじゃん。これ以上のおふざけはヤバいっす)


 アラトはなぜ彼女が『チン』という単語に思い入れがあるのか追求するのを止めることにした。幼稚園児が喜びそうな言葉だが。


「壊れた壁、大丈夫かな?」


「修繕依頼をかけておきます。ご安心ください」


「うん、わかった」


 二人ともようやく落ち着き、話を元に戻す。切り出すギリコ。


「アラトさん、ほかに感想はありますか?」


「見た目シブいと言えばシブいけど、世界初統一カラーコーディネイトってミーハーにしか受けないんじゃない?」


「それはスキーが爆発的に流行した90年代のスキーセットの話題です」


「そうなんだ」


「そうなんです」


「……」


「それと、昭和から使われている『シブい』は『イケテル』の意味ですが、令和の若者が使う『シブい』は『イケテナイ』に時折なります」


「そうなんだ」


「そうなんです」


「……」


「ちなみに、『ミーハー』はギリ大丈夫です、令和で使っても」


「ギリコって、何でも知ってるね」


「はい、何でも知っています」


「な、なるほど……。『何でも知っているわけではありません』というのが一般的ですが、なるほど……」


「ちなみに、アラトさん、本当に令和生まれですか?」


「そだよ」


「そうなんですか」


「……」


 突然、ギリコがパン、と軽く両手を叩き空気を変える。


「さぁさぁ、武器の解説をしましょう、アラトさん!」


「そだね」


 二人ともニコニコし始め、変な空気は無かったことにした。



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