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第十二章 勇者VSスライム その1

12.1 第一回戦第六試合 勇者VSスライム 対戦情報


 観戦モニターに表示された対戦情報より。


 闘技場は、これまでにない特殊ルールが存在するAタイプ。出場者双方に飛行能力がないことを想定した特別会場。


 闘技場全体は、野球のスタジアムもしくはローマのコロッセオのような巨大な円形闘技場。周囲は高さ100mを超える高い塀のような建築物に囲まれているが、観戦者は中に入れない。


 円形闘技場の中央に、縦横100mの正方形の舞台が設置されている。床の高さは地表から5mほどの位置。


 整然と並ぶ平坦な石畳だけの造りで、その舞台から外に押し出され落ちると負けという、相撲の土俵のような独自ルールがある。


 もちろん、戦闘継続不能状態や敗北宣言でも勝敗は決まる。


 勇者シン・ガイディーンについて。


 レベル999。


『勇者の鎧』、『勇者の剣』、『勇者の盾』を装備。


 スライムについて。


 正式名称は『アメスライバ』。


 スライムと人喰いアメーバを混ぜ合わせたような謎の生物。


 あらゆる生物を捕食する。一度捕獲した獲物は、絶対に逃がさない。



 §   §   §



12.2 勇者VSスライム 試合開始前 アラトの部屋


 今朝、ギリコはアラトの部屋に姿を現していない。大会が始まって以来、ギリコが一緒に観戦しないのは初めてのこと。


 自身の正体を明らかにし、アラトが不機嫌になるのは当然のことだが、ギリコが来ないとなるとアラトも不安になる。


 独り寂しく観戦するアラト、無言でモニターを眺める。


『シアイカイシ、3プンマエ』


 舞台の上で、剣と盾をたずさえ仁王立ちする勇者。


『勇者のよろい』:金メッキを施した装飾品のように、高貴な印象を与える西洋剣士ふうの勇ましい金色鎧が全身を覆い、漆黒のアンダーウェアを鎧の隙間からのぞかせる。また、艶光りする黒いケープが勇者であることを誇示している。


『勇者の剣』:幅広の両刃で全長120cm。片手で扱うにしては大剣の部類、並みの男性では重すぎて存分に扱えないだろう。その剣身は半透明な黄金色、まるで魂が宿るかの如く光の流体がうごめき、神秘的生命力がみなぎるる。なぜかさやを所持していない。


『勇者の盾』:鎧と同じく、金メッキを施した装飾品のような西洋ふう造形。盾の中央にある大き目のイエローサファイアのようなオーナメントが特徴的だ。


 鎧と同じゴールド、翼を広げた鳳凰のようなデザインのフェイスマスクを顔に装着。仮面舞踏会で素顔を隠すかのようだ。オールバックにした若々しい銀髪がまぶしい。


 一方のスライム『アメスライバ』。


 対戦開始前ということもあり、スライムは4機のドローンに吊るされた大きな水槽に閉じ込められている。


『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7、……3、2、1』


 『ゼロ』と同時に、水槽の底板が開放されスライムが舞台に落とされた。4機のドローンはそのまま去っていく。


 直径120cm、高さ60cmくらいの大きさ。


 全身は青みがかった深く冷たい海の色。中心がドス黒く、半透明の粘液ボディで内臓らしき部位はいっさい確認できない。


 あれに捉えられたら、骨まで消化され血肉が溶けていく様子が見えるに違いない。


「うげぇぇぇ~、キモッ!」


 アラトが変な想像をし、身震いした。



 §   §   §



12.3 勇者VSスライム 試合模様 勇者側 前編


 スライムは、勇者に向けウゾウゾとゆっくり進み始めた。動く物体は、全てえさとして認識しているのだろうか。


 石畳みの床を進む速度は、ゆっくり歩く人間程度。跳ねる様子はまったくなく、地上をうだけのようだ。


 目の前に迫ってくるスライムを真正面から見据え、独りごちる勇者。


「ふん、スライムだとぉ? カンスト済みのオレが、どれだけお前程度の小物を退治してきたか。百や二百じゃないぜ。超余裕!」


 右手の剣を携え走り出す勇者。スライムの手前で大ジャンプ。


「はぁぁぁー! これで終わりだぁ!」


 大きく振りかぶって唐竹割り、斬撃を振り下ろした。


 ドッカァーン、と石畳が縦に割れ、派手に破壊される轟音ごうおんが鳴り響いた。


 しかし、勇者の剣は粘液状のスライムボディを通過したのみ。床が割れる手応えしか感じなかった勇者は、危険を感じ咄嗟とっさに後方へと跳び退いた。


「なんだぁ!? こいつは! まるで斬った気がしねぇ!」


 勇者の言葉どおり、スライムには傷一つなく、何も変化は見られない。


「くっ、オレの剣撃は、一振り一振りの全てが必殺技。たった一度斬りつけるだけで、大概の魔物を滅殺する」


 勇者は攻撃時も剣の描く軌跡を最後まで観察していた。熟練した剣士の行動としては至極当然のこと。


 剣身がスライムの肉体を捉え通過した瞬間も、まるで水の中、いや、むしろいっさい抵抗のない空気を斬りつけたかのような感覚だった。文字通り空を切る。そして剣が床面に到達し、石畳を破壊した。さらに、スライムにはダメージをまったく与えていない。


「なんだってんだ、オレは素振り稽古けいこにきたわけじゃねぇ!」



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