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第十章 帝王VS悪魔 その3

10.6 帝王VS悪魔 試合模様その三 悪魔側


 数分前に起きていた悪魔と帝王の攻防にさかのぼる。


 悪魔クロノスサタンは、帝王が手に握る巨斧を見てニヤリと安堵した。これで探していた『魔宝玉』も『刀剣破壊斧』も回収できる。


 いきなり殺されるという紆余曲折うよきょくせつはあったが、悪魔は帝王を殺すための算段を開始することにした。結果として目的は果たせる。


 悪魔クロノスサタンの別称は『時の悪魔』、ズバリ時を操る悪魔だ。


 時間停止は殺し合いに向かない。不都合な条件が多すぎる。


 時の悪魔は、時間停止よりも暗殺に向く別の能力があるのだ。


 それは『時間進行速度の変換移動』。両手でそれぞれ別々の物質または人物を10秒間触り、時間進行速度の変換移動ができる能力。


 右手で触った物を時間加速させ、同時に左手で触った物を時間減速させるという時間操作魔法。


 時間操作の第一段階目は、右手で10秒間握ると対象物の時間進行が10倍になり、同時に左手で10秒間握った対象物の時間進行が10分の1になる。


 第二段階目で同じことを繰り返すと、トータルで100倍加速、100分の1減速となり、10倍ずつ変化する。


 第四段階までいくと左手の減速効果はほぼ時間停止に近い状態になり、破壊が困難になるため実行したくはない。


 また、右手の時間加速で敵だけがスピードアップしてしまうと、断然敵が優位になってしまう。


 さらに時間加速をやりすぎてしまうと、対象物は短時間で老朽化し物質も生物も塵と化してしまうので、悪魔自身の時間加速はほどほどにしておきたいと考えている。


 バランスよく時間操作を実行する必要があるのだ。


 そして悪魔が多数所持する小さな六角柱状水晶は、『時間進行速度の変換移動』に適したアイテムだ。


 例えば、右手で悪魔自身の肉体を10秒間触り、左手で六角柱状水晶を10秒間握る。時間経過後に『時間進行速度の変換移動』を発動すると、悪魔の行動は周囲よりも10倍速くなり、六角柱状水晶だけが時間減速となる。


 逆に、右手で六角柱状水晶を握り、左手で敵の肉体を触り、10秒間経過して『時間進行速度の変換移動』を発動すると、敵の動きが10分の1に減速される。スローになった敵からすれば、周囲のあらゆる事象が10倍の速度で変化する。


 負け確定と言っても過言ではない。


「やはりお持ちでしたか、その『刀剣破壊斧』。物質界に存在するありとあらゆる伝説的な武器を破壊できる、魔宝玉に付属する唯一の秘宝。それも探していたのですよ」


 この時、悪魔は既に六角柱状水晶を左手に握り、自身の10倍加速を実行していた。


「ハハハハハハ、バカめぇ! すぐに殺してくれる!」


 巨斧を地面に突き刺し、手放す帝王。


「「「「「「マリオネット・バインド!」」」」」」


 パァン、と1クラップするが、傀儡くぐつの束縛魔法発動は失敗。


 悪魔は自身の10倍加速と時間停止を組合せ、見事詠唱の邪魔を成功させていた。帝王の思惑どおり、両者の距離が十分離れていたにもかかわらず。


「なにっ!」


 帝王が戸惑っている隙に、『刀剣破壊斧』を手にした悪魔。

 帝王の正面に移動して背後への警戒を削ぎ、そのタイミングで背中側に回り込んだ。


「貴様ぁ!」


 ケープ越しに帝王の背中に左手で触れる悪魔。右手には六角柱状水晶を握り10秒経過を待つ。


「どこだ!?」


 帝王が首を左右に振り周囲を確認、真後ろにいる悪魔に気づいた時点で、帝王に対する10分の1減速は完了していた。


「ようやく決着ですな」


 悪魔は勝利を絶対的に確定させるため、帝王の身体にもう一度触れ、100分の1減速まで実行した。


「今しばらくお待ちください。わたし自身を正常に戻しますので」


 悪魔はそう伝えると、右手で六角柱状水晶を握り、10倍加速していた自身の肉体を10分の1減速させた。これでプラマイゼロ。


 自身の10倍加速を放置すると、憑依ひょういしている人間の肉体が早くちてしまうので、正常の時間速度に戻したのだ。


 100分の1時間減速となった帝王を殺すのは、赤子の手をひねるようなもの。


 悪魔の表情はあくまでも冷静だった。


 手にしている巨斧を両手で握り直し、無言で帝王の首を切断する。ゆっくりとじっくりと。帝王の肉体を1秒間切断するのには、時間減速のため100秒かかってしまうのだ。


 帝王の断末魔は音声をスロー再生するかのごとく、不気味な響きに変化している。生物の発するうなり声とは思えない。


 およそ10分後、帝王の首が斬り落とされ、ゴロンと地面に転がる。続けて肉体が倒れた。ようやっと帝王の公開斬首刑が終了した。


 続けて、倒れた帝王の胸板から七色のガラス玉をえぐり取り、回収した。


 安堵の表情を浮かべる悪魔。


「銀河の帝王よ、あなたのおかげで助かりました。これでわたしも、ようやっと上級悪魔に虐められなくなります。フフフ」


 時の悪魔クロノスサタン、第二回戦進出!



 §   §   §



10.7 魔宝玉『七つの大罪』


 帝王ガリュウザが所有していた魔宝玉『七つの大罪』は、七人の上級悪魔『傲慢ごうまん、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰』が、はるか昔に共同で創造した悪魔の秘宝だ。


 魔宝玉は、テニスボールサイズの透明なガラス玉のようなもの。


 その玉の中には大きさの異なる七色——白、青、緑、黄、橙、赤、紫——のビー玉らしきものが多数浮遊し、自在にうごめいている。


 そのビー玉のような物体は、水滴のように柔らかく自在に変形し、かつ、移動スピードをも変えつつ、自らの意志で遊泳しているように見えるのだ。意志を持った不可思議な物体という印象だ。


 当然、七つの色は『七つの大罪』の一つひとつを象徴しているのだ。


 見た目はテニスボールサイズの大きさであるが、直接触ると固形物としての感触がない。


 しかし握って運ぼうとすると、たしかにそこに存在感があって運ぶことができる。そんな摩訶まか不思議な存在。


 そのガラス玉のように見える物体は半物質、つまりアストラル体のような存在なのだ。


 悪魔が存在する非物質界で創り、人間が存在する物質界で具現化したために半物質という存在となった。


 それゆえに、物質界の物質とは異なる不可思議で異質なオーラをまとっているのだ。


 ちなみに、魔宝玉『七つの大罪』に付属する唯一の秘宝『刀剣破壊斧』は、物質界で造られた斧に魔宝玉の悪魔力が宿っている物体であるため、物質界の物質としての存在と変わらない。



 §   §   §



10.8 帝王ガリュウザ


 銀河をべる帝王の名は、ガリュウザという。


 大会の対戦表には、本人の申し出により『魔人ガリュウザ』と表示されているが、魔人というのは嘘である。


 悪魔が物質世界に降臨した存在を『魔人』と呼んでいるのだが、彼は悪魔ではなく人型の地球外生命体、つまり異星人だからだ。


 強力な闘気を操り、強靭きょうじんな肉体と超人的パワーを持つ異星人であることから、『異星超人』と表現するのが最も適しているだろう。


 彼が支配する銀河は、アラトが存在する世界と異なるパラレルワールドの天の川銀河だ。その銀河の頂点に立つ存在であるため、帝王と呼ばれている。


 彼は、上級悪魔がはるか昔に創ったとされる魔宝玉、別名『七つの大罪』を所有していた。その驚異的な悪魔の力を使いこなすことによって、銀河の帝王として君臨することができたのだ。


 悪魔の力を行使できるがゆえに、自身を『魔人』と称してきたわけだ。


 魔宝玉を探し求め、手中に収めるのに百年の歳月がかかった。銀河を支配するのにさらに百年かかっている。


 彼は本来、この大会の優勝候補の一人だった。が、まさか本物の悪魔によって殺されるとは彼自身想像もしていなかっただろう。


 ガリュウザ帝国には銀河を支配するだけの戦力がある。それにもかかわらず単身でこの大会に乗り込んできたのには理由があった。それは何でも望みがかなうという本大会の優勝報酬を得ることだ。


 ガリュウザが望む優勝報酬は、ほかに存在するパラレルワールドの銀河を自由自在に往来する能力だ。当然、それらの銀河を全て支配することが、彼の野望だったのだ。


 しかし、本試合によって、それはついえたことになる。



【ポイント評価のお願い】

 数ある作品群から選んでいただき、そして継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。

 誠に図々しいお願いとなりますが、お手間でなければ、ポイント評価をお願い申し上げます。

 どうも有難うございました。


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