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第八章 未来人VSトレジャーハンター その5

8.9 未来人VSトレジャーハンター 試合模様その四 トレジャーハンター側


 ザ・フェネクスマンを従え、ケルベロスを回収したジョー。コルトパイソンを取り出し、周囲を警戒する。


 後ろを振り返ると、ケンタウロスの姿が見えず、スミスが視界に入った瞬間、『運動エナジー停止光線銃』を食らい拘束される。


 ザ・フェネクスマンは人間を攻撃しない。しかし、守護対象である主人の身に危険が及ぶ場合、相手の重火器、刀剣類だけを破壊し無力化することは可能だ。


 翼を広げ、スミスの光線銃を狙って飛行するザ・フェネクスマン。スミスは危険を察知し、『運動エナジー停止光線銃』を解除してザ・フェネクスマンに向けた。


 拘束を解かれたジョーがコルトパイソンを取り出し発砲。『運動エナジー停止光線銃』が弾かれ、大地に転がる。


 スミスはザ・フェネクスマンを無視し、靴下に差し込み隠していた二丁目のワルサーPPKを取り出すと、地面で一回転しながら反撃。


 ジョーは身を隠す場所のない拳銃同士の接近戦は不毛と考え、モビルスケートでその場を素早く離脱する。追従するザ・フェネクスマン。主人とは5m以上離れないよう意識しているのだ。


 射撃戦を回避したスミスも、バイクを起こしまたがった。


 岩石地帯にたどり着き、岩陰に隠れるジョー。


「さぁーて、どーすっかなぁ~」


 ジョーは思考する。


 ジョーの手段はたった一つ、最恐最終兵器『パンドラの箱』——手の平サイズの小さな宝箱——しか残っていない。


 その『パンドラの箱』に封印しているのは悪霊ソウルイーター、それは危険な諸刃の剣、ジョー本人も解放を躊躇ちゅうちょする。


 悪霊ソウルイーターは霧状のアストラルボディ。ゆえにモンスターイェーガー『ザ・フェネクスマン』ですら物理的に攻撃不可能。


 人間の魂を吸収し、一瞬で死の世界へと導く。あらゆる物質、壁を透過し追いかけてくる悪霊は、まさにこの世に実在するナイトメア。


 一度放てば、ジョー自身も狙われる。そんな存在に頼りたくないが、負けたくもない。


「仕方ねぇ、奴のバックパックを奪う作戦。これで行く」


 しかし、ここで異変に気づく。


「奴のバイク音がまったくしねぇ」


 突如、ケンタウロスが背後からジョーの頭上を飛び越してきた。


「ワッタ、ヘルイズザット!」


「ジョォォォ、ゴメンねぇ~、さっきの約束は御破算、あたし自由がほしいのぉ! それにさっきの男、どこにもいなしねぇ~」


「うま子ちゃぁぁぁ~ん、ちょっとそれは非道いんじゃない? それにオレっち食べてもおいしくねぇーべ」


「別に食べないわよ! ちょっと死んでもらうだけ。あたし自由になれるでしょ!」


「さぁ、どうかなぁ~」


「えーい、問答無用!」


 剣で斬りかかるケンタウロス。しかし、待機していたザ・フェネクスマンが横からパンチの連打。百滅拳でケンタウロスをあっさり撃破する。


 ジョーはシールドカプセルに再封印されたケンタウロスを回収した。


「うま子ちゃん、甘いなぁ、フェネクスの強さ知ってるでしょ」


 背後に地響きを感じ、振り返るジョー。背後を見上げると2体のゴーレムが仁王立ちしている。


「なぬっ!」


 モビルスケートで猛ダッシュしたジョーは、その場を離れる。


「やっこさん、捉えていたあいつらを解放したのか……」


 先ほどスミスとやり合った場所に目をやると、バイクが放置してある。さらにその奥側には、スミスのバックパックさえも立てるように放置してあった。


「あんにゃろー、あからさまな罠張りやがって」


 後方からは2体のゴーレムが鈍足で追いかけてきたが、あえて無視する。いつでもザ・フェネクスマンが守ってくれるわけだ。


 右手でコルトパイソンを構えるジョー。慎重にバイクに近づき、周辺を確認。スミスはどこにもいない。さらにバックパックを拾うためゆっくり進む。


「一応、念のためだ……、あっさり使うわけにはいかないぜ」


 言いつつ『パンドラの箱』を取り出し、左手に握った。


 案の定だった。


 地面に放置してあるバックパックを拾い上げようとした瞬間、その背後に小さく折り畳んだ黄色のハンカチーフ『物体十分の一縮小ネット』が目に入る。


 ハンカチーフの下に人形でも隠しているかのように人型の盛り形状ができている。そこから小人がモゾモゾと出てきた。


 その小人が目の前で人間サイズに膨張していく。その小人とはほかでもない、『運動エナジー停止光線銃』を構えている未来人スミスだ。


 泡食ったように驚くジョー。


 元に戻るスミスの身体が密着するようにジョーにぶつかり、後退あとずさりする勢いで、思わず手放した『パンドラの箱』が宙を舞う。


 意図せずスミス目指して落ちてきた箱を、スミスは勢いよく片手で叩き落した。地面に叩きつけられた激しいショックで箱のフタが開く。


「まずい!」


 思わず叫ぶジョー。


 手の平サイズの小さな箱から、黒い霧が渦となって噴出する。黒い渦はやがて形を成し、悪霊ソウルイーターとして、その姿を空中に現した。


 奈落の底のようなドス黒い霧の塊。恐ろしく威嚇いかくする悪魔のような顔が一つ、霧の真ん中には苦悶くもんする人間の顔がいくつも重なり合い、幽閉された魂が音なき地獄の雄叫びを上げているように見える。


 ジョーがさらに距離をとって後方へジャンプすると、両足が大地に埋もれる感覚、いや、両足だけではなく、身体全体が地面へと押し付けられる感覚。


 突如、強力な重力場に捕獲され、両膝も両手も地につけ固定される。両手の自由を失い拳銃も手放す。


 スミスが事前に仕掛けておいた『重力地雷』だった。あらかじめ見えないよう埋めておいたに違いない。


 そしてタイミング悪く、2体のゴーレムがジョーの背後に迫っていた。絶体絶命のピンチ。


 ジョーが世界中の秘境で生き延びてきた最大の理由。それは生死を分かつ一瞬の判断力。


「あい、あんた、ミスター・スミス! オレの負けだ! 敗北宣言するぜ! 緊急事態だ! 今落とした小さな箱、あれをオレに投げてくれ! それと、このトラップもすぐに解除してくれ! でないと、二人とも死ぬぜ!」


 ザ・フェネクスマンが主人を守るようにストーンゴーレムを攻撃、両足を破壊して倒れたところでとどめを刺す。


 しかしその隙に、サンドゴーレムが今まさにジョーを踏み潰さんと片足を上げていた。


 間一髪、『重力地雷』の解除が間に合う。サンドゴーレムの下ろされた足を、転がるように避けるジョー。


 続けて、ザ・フェネクスマンがサンドゴーレムを撃破する。


 ユラユラとスミスに近づいてくるソウルイーター。スミスはジョーの指示どおり、『パンドラの箱』を拾ってジョーに投げ渡す。


 『パンドラの箱』をキャッチしたジョー、箱のフタをソウルイーターに向けて開ける。続けて封印の呪文。


「ゴウトゥヘル!」


 『パンドラの箱』に渦となって吸い込まれるソウルイーター。


 事なきを得て、ホッとするジョー。


 実際は呪文ではなく、ダーティスラングなのだが。


 未来人スミスは、ジョーに歩み寄ってきて手を差し出す。


 少し照れるのか、ジョーは肩をすくめてみせた。


「なんというか、もっとクールに負けたかったぜ」


「なーに、十分楽しめたさ」


「ヌフフ、違いねぇ!」


 握手する二人。最後に初めて、好敵手の笑顔を見たジョーだった。


 未来人グレート・スミス、第二回戦進出!



 §   §   §



8.10 トレジャーハンター ジョルセーヌ・ジョー


 そのトレジャーハンターの名は、ジョルセーヌ・ジョー。彼の住む世界では『ジョルジョ』という通り名で知られているらしい。本人が一生懸命広めたという噂もあるが……。


 彼もパラレルワールドの地球から参戦した参加者の一人だ。


 この試合で披露したように、彼の世界では、ほかの地球には存在しない神話、伝記に登場するようなさまざまな秘宝が実在している。彼はそれらを収集するコレクターであり商売人でもある。


 彼のどこかひょうきんな性格、それに無類の女好きは、だらしないイメージもあるが、世界中の魑魅魍魎ちみもうりょう、秘宝を守るモンスターや秘宝を狙うマフィアと命懸けで戦う凄腕の冒険家なのだ。


 拳銃射撃世界チャンピオンというのも伊達ではない。


 彼が参戦した最大の理由は、大会に参加することで、ほかの地球に眠る秘宝が入手可能になると大会運営がほのめかしたからだ。第一回戦で敗退した場合、そうとも言えないだろうが。


 ともあれ、彼のハードボイルドふうエロティック冒険譚——本人希望——はまだまだ続く。





【ポイント評価のお願い】

 数ある作品群から選んでいただき、そして継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。

 誠に図々しいお願いとなりますが、お手間でなければ、ポイント評価をお願い申し上げます。

 どうも有難うございました。


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