第八章 未来人VSトレジャーハンター その1
8.1 第一回戦第四試合 未来人VSトレジャーハンター 対戦情報
観戦モニターに表示された対戦情報より。
闘技場について。
本日の闘技場はEタイプ。
ドラゴンと恐竜が激突した屋外会場で、直径1kmの半透明なドーム状バリアで隔離された逃避不可能な空間。自然にあふれ、岩石地帯、森林地帯、湖などがある。
ドームバリアは超強力な高電圧と熱エネルギーで形成、接触すると相応のダメージを負う。
グレート・スミスについて。
未来から来た地球人男性。
武器は詳細不明の未来兵器。
トレジャーハンターについて。
地球人男性。ジョルセーヌ・ジョー。
探検家にして秘宝コレクター。世界中の秘宝を求めて、命懸けで冒険に明け暮れる毎日。
武器はこれまでに収集した世界各地の秘宝。
§ § §
8.2 未来人VSトレジャーハンター 試合開始前 アラトの部屋
《さぁ、そろそろ始まるぜ、本日の試合!
昨日に引き続き、オラっちこと、テレオが解説するぜ!
今日もなかなかの対戦カード! 未来人の武器が科学の結晶、未来兵器ならば、トレジャーハンターの武器は非人間界の神秘ときたもんだ!
バケモン同士の闘いも燃えるが、男同士の熱い闘いも、これまた燃えるぜ!》
「先輩、先輩、グレート・スミスって何者かと思ったら、未来人だそうですよ、タイムマシンでもあるんですかねぇー」
「さぁ、どうでしょうか。それよりも未来兵器に興味があります。我社が開発した戦闘兵器を上回るのかどうか」
「トレジャーハンターってのも、響きがカッコイイ!
ん? マドレーヌ? ジョゼフィーヌ? 違う。ジョ……、ジョルセーヌ? メッチャ名前のセンスえーなぁ! 好っきやわぁー、このネーミングセンス! いやぁー、くどいけど、メッチャえーぞい!」
「そうですか。それよりも世界各地の秘宝に興味があります。我社が開発した戦闘兵器を上回るのかどうか」
「先輩、仕事熱心ですね」
『シアイカイシ、3プンマエ』
闘技場内に転送されてくる二人の人影と1台のバイク。およそ200mの距離を保ち、向かい合って対峙するように現れた。
未来人グレート・スミス。
ジャケットがシルバー、トラウザーズがブラックのタキシードを着ている。ブランド物なのだろうか、あるいは着こなしている男性の本業がモデルなのだろうか、その品格も風格も申し分ない。
レンズもフレームもブラック一色のサングラス、オールバックのブロンドヘアー、端正な顔立ち。
服装とマッチしていないが、排気量1000ccを優に超えるであろうオフロード系大型バイクにまたがり、メタルシルバーでガジェットっぽいデザインのバックパックを背負っている。
見た目はスパイ映画の主人公を彷彿させるが、無口で物静かな印象もある。
トレジャーハンター、ジョルセーヌ・ジョー。
もう一人の出場者は、ブルージーンズに茶系の革ジャン。
自走式ローラーブレードを履いて、上腕部に用途不明のガジェットを装着。
世界を股にかけ、数々の冒険譚を語ってくれそうな野性味あふれる探検家。まさに男の浪漫をくすぐるカリスマ的存在。
前人未踏の秘境で、幾多の困難を切り抜けたのだろう。緊張感もなければ余裕すら感じられる。
アラト目線で語れば、両者とも『ワォ、クール!』とひとこと漏らしてしまう。本日の対戦カードもワクワク感がハンパねぇ。
『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』
§ § §
8.3 未来人VSトレジャーハンター 試合模様その一 トレジャーハンター側
「へぇ、やっこさん、バイクを駆るのか。
あれは1400cc世界最強エンデューロ系オフロードバイク、世界一苛酷なバイクレース『ユーラシアロデオ』でも3割以上のライダーが選ぶという。未来人と聞いていたが、こっちで手配したのかな。いい趣味してるぜ!
しかし……、最近のバイク乗りはタキシード着るのが流行りなのかねぇ~」
スミスを眺めながら、呆れ気味に肩をすくめるジョー。
「さてさて、どんな攻撃を仕掛けてくるのか、最初は様子見させてもらうぜ」
『……3、2、1、ゼロ』
戦闘開始の合図とともに、未来人スミスはまたがったバイクをウィリーぎみに急発進、反時計回りに大きく円を描き加速。
軽量化に適したツインボクサーエンジンのエキゾーストノートが、フルスロットルのアクセルワークと素早いギアチェンジを告げる。ノーヘルで正装した男はほんの一瞬で時速100km以上に到達。
未整備のダート上で凄まじい砂煙を巻き上げ疾走する。
「ヒュー、やるねぇ~やっこさん! さて、こっちは様子見させてもらう——」
——と、呑気に構え初動に出遅れたジョーに急接近してくるスミス。左手でタキシードの懐からセミオートマチックピストルを取り出し、ジョーに数発放った。
「なぬっ!」
ジョーは咄嗟に、左右の上腕部に装着している箱状の装置——サーカスアンカー制御装置——を起動。右腕側のサーカスアンカーを射出させ、10mほど離れた地面に突き刺した。制御装置の電動モーターでアンカーを急速に巻き取る。
同時に自走式ローラーブレード——モビルスケート——を稼働させしゃがみ込んで急発進。サーカスアンカーの牽引とモビルスケートの自走の連携動作でスミスの放った銃弾を躱す。
続けて左腕側のサーカスアンカーを射出、弾道を避けるためのジグザグ行動から右腕側のサーカスアンカーを巻き取る動作。牽引機能を交互に使うことでスムーズに方向転換と急加速を可能にする。
「今のはワルサーPPK! なんちゅう骨董品! こっちも負けちゃいないぜ!」
言い放つジョー。スミス同様、革ジャンの懐からリボルバーピストルを右手で取り出し、応戦した。
スミスはすぐさま拳銃を懐に戻し、急制動でジャックナイフ。片足で大地を踏ん張ると、バイクを寝かせ後輪をドリフトから90度ターン。再びウィリーぎみに急発進し難を逃れる。
猛烈な砂煙が煙幕となり、その場を離脱するスミス。
「へっ、今のはちょっとしたごあいさつ、様子見ってとこかな。
しかしコンパクトなセミオートマチック、ワルサーPPK。バイクを駆りながらの接近戦にピッタリか……
ふん、オレっちの愛銃はコルトパイソン4インチモデル。これでも一応、拳銃射撃世界チャンピオンでね、射撃で負けるわけにはいかないね!」
離れていくスミスのバイクを見つめるジョー。急に口角を上げ、ほくそ笑む。
「ナハハハハハ、やっこさんもなかなかのロマン好き、嫌いじゃないぜ。これはおもしろくなってきた!」
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