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第六章 戦闘メカVS宇宙生物 その2

6.3 戦闘メカVS宇宙生物 観戦模様 アラトの部屋 その二


 宇宙生物Xは、初めて目にするであろう移動式前線基地ロボ・ファクトリーと戦闘メカZをいぶかしげに観察し、敵対する存在として認識しているはず。


 一定の距離を保ちながら左右に移動を繰り返し、あからさまに警戒心を示す。虎視眈々《こしたんたん》と襲撃の好機を探っているようにも見えるが、一向に間合いを詰める様子はない。


 両者の距離は500m未満。


《ここで念のため補足するぜ。『クリミナルターミネーターZ』は国際警察・テロ制圧特殊部隊所属なんだそうだ。

 前線基地『ロボ・ファクトリー』が司令塔で、その作戦指揮AIが攻撃のGOサインを出すまでは攻撃開始しない。

 まぁ、一般的に警察といったら、むやみに発砲できないだろうし、サーペントXがなんらかの攻撃を仕掛けない限り、発砲許可も下りないといった寸法だな!》


 テレオが解説をいったん区切ったと思いきや、なにやらゴソゴソ、カタカタと情報端末の操作音が聞こえてくる。一瞬の間を置き、興奮気味に解説を継続。


《えー、続いて新データ入手! な、な、な、なんと、ロボ・ファクトリーは、内部でクリミナルターミネーターZの組立、修理が可能!

 そして、最大3機まで出撃が可能だとぉ? それじゃ、宇宙生物大ピンチじゃないのぉ~、か、勝てるのか、サーペントXゥ!》


「この解説者、新人さんに似ていませんか?」


「そんなことないですよぉ~、もう、冗談きついなぁ~、先輩はぁ~」


「そうですか、似ていると思いますが」


 と、口元に手をやり、笑いをこらえる超絶美人先輩。

 久しぶりにかわいい仕草を見て、アラトもほくそ笑んだ。


《要するにぃですねぇ、たった今もファクトリー内で2機目を組立中、およそ3分後に2機目が、続いて6分後には3機目が出撃するというお話だぁ!》


 白熱するテレオの解説とは裏腹に、宇宙生物Xも戦闘メカZも入場した場所から離れず、相手を襲撃する様子はない。


 戦闘メカZは警察機構うんぬんも含め、プログラムにより本体の前線基地を守るのが第一優先というのが妥当な線だ。警戒して前線基地から離れようとはしないのだから。さらに、2機目と3機目が出撃してくるのを待っているのだろう。


 そうこうしていると、3分経過し、2機目の戦闘メカZが出撃してきた。


 もっとも離れた位置で、キィ~、と遠吠えをする宇宙生物X。興奮している様子だが、敵との距離を維持する。


 2機揃そろった戦闘メカZ。しかし、戦況に変化は見られず。


《次なる情報ゲェ~ットォ! げげげ、マジっすかぁ~、これ聞いて失神することなかれぇ、視聴者諸君!

 なんと、このグロキモ宇宙カマキリ、5分毎に2匹に分裂するんですとぉ! なんですとぉぉぉ! 要は、5分毎に倍、倍と増えるネズミ講! それってマルチ商法?

 そうなんです、そのとおり! よって、1時間後だと、11回分裂という計算! それじゃ、60分後に、え~と、え~と、と、とにかくたくさん! これってもう、戦闘メカ、アウトじゃねぇ?》


 両手で頭を押さえながら、スザッ、と立ち上がるアラト。悲鳴を上げるように声を出す。


「なんじゃ、そりゃぁ~」


 その場にいても立ってもいられず、義理子先輩が座るソファーの周りをグルグル回り始めた。


「2の12乗って、なんぼだぁ~」


「この場合、2の11乗では」


「どっちでもいいから、IQ10,000で、ササッと計算してください、先輩!」


「わかりました。お待ちください」


「いや、待たんでいいでしょ、IQ10,000!」


「はいはい、ふむふむ、そうですか、なるほど」


「せんぱーい、意地悪なしでお願いしゃぁース!」


 義理子先輩が意地悪なのかどうかわからないが、解説者テレオが一足早く計算結果を発表した。


《なんと、オラっちの計算によれば、1時間後は2,048倍だぜぇ!》


 何ごとも無かったかのように、義理子先輩が続ける。


「この先1匹たりとも死ななければ、60分後に、2,048匹です」


 すると、アラトとテレオのセリフが完全に被った。


《「メチャメチャ多くね? それって、もう、ここも襲われるんじゃねぇ?」》


 テレオの姿はモニター上にいっさい映っていないが、アラトと同じように両手で頭を押さえているに違いない。


「ギリ、大丈夫です、新人さん」


「わ~、その返しネタ、今ここで使うのNGっしょ、義理子先輩!」


「本当に心配性ですね、新人さん。冷静に考えれば、今2倍に増えても、5分以内に2匹とも殺せば戦闘メカの勝ちですよ。ご安心ください」


 ふいに立ち止まり、ポンと手を打つアラト。


「あ~、たしかに! 先輩、天才!」


「ですから、昨日からIQ10,000と説明しているではありませんか」


「あー、そうですね。ということは、僕はやっぱりIQ3ってことに?」


「はい、間違いありません」


「全然、嬉しくない……」


「新人さん、それより戦況を確認しましょう。宇宙生物が分裂し始めましたよ、しっかり見てください」


 義理子先輩の説明どおり、モニター画面に宇宙生物Xの様子がアップで映し出されている。


 宇宙生物Xが呻き声を上げながらよだれを撒き散らし、背中がパックリと割れた。


 分裂の工程を描写すると、宇宙生物Xを着ぐるみとし着ていた別の生物が、背中のファスナーを開いて、その背中から出て来たかのように錯覚をする。


 本体の背ビレと中身の肉とが一つの肉塊となって、本体から分離したのち、宇宙生物Xの姿にアッという間に成長し、2匹目の宇宙生物Xが誕生した。


 元となった宇宙生物Xの背ビレも生えてきて、完全な元の姿に復活する。


 つまり、出産とか、産卵とか、成長とかの過程を全て無視し、いきなり一人の大人が二人の大人になる、成虫が成虫を産むという、まるで単細胞生物の細胞分裂に近い。


 地球上の生物には存在しないであろう、驚異の繁殖力だ。


「こんなん、地球を襲ってきたら、全員即死ですよ、即死! 世界人口の半分が、心臓発作でショック死ですよ、ねぇ、先輩!」


「良い点に気づきました、新人さん。さすがは、わたくしのかわいい一番部下、さすがです。人事評価で9点を授けます。

 それと心臓発作で絶命するのは、おそらく、新人さんとあと数名、計10名ぐらいです」


「僕の能天気猛者の称号はいったいどこへ? それと、その人事評価って、まさか100点満点とかじゃないですよねぇ、先輩!」


「そんな与太話より、新人さん、戦闘メカも3機目が出撃しました。これで、攻撃を仕掛けるはずです」


「よた……あ~、僕の人事評価よぉ~、サラバァ~」


《さぁ、いよいよ、両者の攻撃態勢が整ったか》


 義理子先輩の想像どおり、戦闘メカZの3機の内1機が、正面の敵めがけて前進する。戦闘メカZの移動方法は徒歩しかなく、1トンという自重により、早く走れそうもない。


 しかし、直径500mしかないここの戦場においては、どこにいても隅々まで攻撃できそうだ。


 つい先程までは、敵を刺激したくなかったのだろう。3対2という数の上でのアドバンテージを利用し、2機は前線基地の護衛、1機が単騎で敵に切り込む作戦のようだ。


 すると、宇宙生物X側も行動を開始する。1匹が、ドームの側面をうように走り出し、前線基地方面へと向かっている。


 ヤモリは、民家の垂直な壁などを這って素早く移動することができる。


 足の裏に吸盤があるわけではなく、非常に複雑な構造の剛毛で壁に接着させるらしい。複雑な機構なので割愛するが、それと同じように、宇宙生物Xもなんらかの作用で、闘技場の壁を這って移動できるようだ。


 ドーム形状内側の側面は、上に行けば行くほど、垂直よりもきついぶら下がり状態になってしまう。それでも、時折カマキリの鎌を壁に突き刺し、むりやり側面を移動する様子もうかがえる。


 前進した戦闘メカZが、前線基地方面へと向かう宇宙生物Xを狙って、ガトリングガンを発砲した。作戦指揮AIの発砲許可は下りたようだ。


 身体をひねるように回転させながら落下し、弾道を避ける宇宙生物X。猫が高い場所から落下しても平気なように、さながら曲芸に見えた。


 驚異的な脚力、柔軟な肉体、優れた平衡感覚に咄嗟とっさの判断力を駆使し縦横無尽に駆けながら、攻撃してくる戦闘メカZに接近。その俊敏さには目を見張る。


 数発、弾丸を食らいながら4本の鋭い鎌で攻撃を仕掛ける。


 接近戦では、左手の火炎放射器を放つ戦闘メカZ。一瞬、火炎が宇宙生物Xを包むが、おかまいなしに突進、鎌が戦闘メカZの分厚い胸部を貫く。


 が、戦闘メカZの造りも頑丈で、突き刺した鎌が抜けず、自重で自滅するように腕の根元から引きちぎってしまった。


 宇宙生物Xはひるむことなく、次の攻撃。口から蜘蛛の糸のような白い粘着糸を吹き出し、戦闘メカZの足をからめ捕る。


 続けて、尻尾の先端から微生物性腐食液を発射し、戦闘メカZの胴体でもっとも細くなっている部位にヒット。腐食液で胴が溶け始め、バチバチと内部パーツから電気を漏らしながら、ボディを上下二つに分断する。


 分断された戦闘メカZの上半身が宙を舞う。


 地面に落下する瞬間までガトリングガンを放ち、宇宙生物Xのボディを捉える。近距離で数十発もの弾丸を全身に浴び、肉片が飛び散る。が、宇宙生物Xの生命力は異常に高く、なかなか絶命しない。


 息も絶え絶えに死を迎えた瞬間、最期の力を振り絞り、尻尾先端のハサミで戦闘メカZの頭部を貫く。ブゥーン、とシステムがダウンする断末魔が鳴った。


 第一ラウンドは、両者相打ちとなった。


《おっと、絶句しちまったぜ。息をもつかせぬ一瞬の攻防に目を奪われた! 第一ラウンドは、互角の勝負か!》


 わずか5分、されど5分。


 離れた場所で待機していたもう一匹の宇宙生物Xは、すでに2回目の分裂が終了していた。



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