第六章 戦闘メカVS宇宙生物 その1
6.1 第一回戦第三試合 戦闘メカVS宇宙生物 対戦情報
観戦モニターに表示された対戦情報より。
闘技場について。
本日の闘技場はCタイプ。
第一試合のように内壁が真っ白なコンクリートの密閉空間。
直径500mのドーム型。ドームの頂点は高さ250m。障害物無し。
戦闘メカについて。
完全自律型戦闘ロボット。
名称:『クリミナルターミネーターZ』
全長:220cm
重量:1200kg
右手装備:25mmガトリングガン
左手装備:火炎放射器
右肩装備:誘導ミサイル×4
左肩装備:対生物神経麻痺毒ガス弾×2
格闘兵器:スタンハンマー
宇宙生物について。
とある未開の惑星で捕獲された未知の生物
名称:『サーペントX』
体長:210cm。尻尾の長さ含めず。
重量:250kg。
口から射出:粘着糸
尻尾先端から射出:微生物性腐食液
§ § §
6.2 戦闘メカVS宇宙生物 試合開始前 アラトの部屋
アラトは第一試合第二試合と続いて、またもや興奮していた。
第三試合もまたワクワクするような対戦カードなのだ。近未来ロボット兵器と宇宙生物の対決、SF映画の迫力ある戦闘シーンを連想させる組合せだ。
9時5分前。
アラトと義理子先輩がモニター画面を見ていると、これまでの試合中継になかった解説者の声が、いきなり耳に飛び込んできた。
《さぁ、試合中継をご覧の皆様、たいへんお待たせいたしました。本日の第三試合が、あと5分で開始されます!
わたくし、本日の解説者を担当致します『テレオ』と申します。
昨日の試合中継まで解説者はいませんでしたが、昨日の試合模様がわかり難かったと運営に苦情が入り、こうして解説を始めることと相成りました。
もし、わたくしの解説が、煩わしい、耳障り、という場合は、設定画面にて『解説無し』が選べますので、そのようにお願い申し上げます。
なお、出場選手に関するわたくしの知識は、皆様とほぼ同じですので、一部、想像と考察により解説する場合がございます。運営から情報を得る場合もございますが、どうぞご容赦願います》
ノリのいい若い男の声で、礼儀正しい芸人のような印象だ。
「このままでいいですか、先輩?」
「そうですね、せっかくですから、解説も聞きましょう」
「はい」
と、急にワクワク感が膨れ上がってくる。
口を噤み、モニターに集中した。
ドーム状閉鎖空間の両端に大きなゲートがあり、ゲートのシャッターが両方とも上昇する。
モニター画面左手のゲートから一つの檻が現れ、闘技場内に移動する。その中には、宇宙生物と思しき姿一匹が閉じ込められている。不思議とおとなしい。
一方、モニター画面右手のゲートからは、高さ5mを超えるであろう大きさの兵器らしき物体が、ギュルギュル、と音を立てながら入場して来た。
第二次世界大戦中に製造されたドイツ軍の戦車カラー、ダークイエローのボディ、脚部はキャタピラで戦車そのもの、車体の上に大きめのボックスがドンと置かれたようなルックスで、正面に人間が一人立ったまま出入りできそうなドアらしき形状がある。
ボックスのトップに、カメラ、センサー、レーダーらしきパーツ群で構成された頭部がある。左右に首を振って、周囲の状況を確認しているような挙動。いわゆる、司令塔らしい。
アームのようなパーツは見当たらない。
両者の入場を終えると、両方のシャッターが下降して閉じられた。
「あれれ、なんか、さっきの出場者解説と違う気がする。全長って、5mもありましたっけ。2mぐらいだったような」
「新人さんのおっしゃるとおりですわ。何か理由があるのでしょう」
「はぁ……」
《おっと、新しい情報ゲット、ここでお知らせだぜ。本日出場の戦闘メカ、今右手に映っている『クリミナルターミネーターZ』の前線基地が、その本体だ! 名付けて『ロボ・ファクトリー』、こいつが死なない限り、負けにならないってわけだぜ!》
解説者テレオの最初の自己紹介での口調、礼儀正しい言葉遣いは、もうどこにもなかった。
解説者とは別に、闘技場内で試合開始のアナウンスが流れる。
『シアイカイシ10ビョウマエ、9、8、7……』
§ § §
6.3 戦闘メカVS宇宙生物 観戦模様 アラトの部屋 その一
『……3、2、1、ゼロ』
ゼロと同時に檻が分解され、宇宙生物『サーペントX』が解放された。
一方、ロボ・ファクトリーの正面にあるドア形状がオープンする。ドアの底辺を軸に開かれ、ドア自体がそのままスロープとなった。その上端が地面に接地する。
クリミナルターミネーターZが1トン以上の重さで、ドスドス歩きながら出撃し姿を現した。出撃が完了すると、ドアが閉じられる。
クリミナルターミネーターZは全身がメタルシルバーの人型ロボット。両手、両肩に重火器が搭載され、アラト目線で語るとすれば近未来兵器という表現が当てはまる。
全体のシルエットは、まさしく宇宙戦争系映画やリアルロボット系アニメに登場しそうな人間サイズの自律行動式ロボット。
動作が緩慢で、関節一つ稼働させるだけで、ウィーンウィーンといったモーター音が聞こえてきそうだ。
頭部の形状は両耳が大きなセンサー系アンテナ、目鼻口を表す形状はなく、ヘルメットのバイザーらしき構造物の内部に青白いランプが点灯している。
右手の前腕部甲側にメイン武器のガトリングガン、左手側は火炎放射器をマウント。両肩というよりはむしろ、バックパックの右側に誘導ミサイル、左側に毒ガス弾を装備。
お尻の部位には、ハンマーのような接近戦用武器がマウントされている。
解放された宇宙生物は、前後左右に素早く移動して周囲を見渡す。
サーペントXの下半身は、まるでトカゲなどの爬虫類が二本足で立っているかのようだ。リザードマンという表現が最も当てはまる。尻尾の先端は、サソリの毒針のような特徴もしくはハサミのような形状。
そして、腕は4本あり、全てカマキリの鋭い鎌のようになっている。これに抱擁されたなら、肉も骨も一瞬で輪切りにされてしまうだろう。
頭部も同じくカマキリに似ていて、大きな目の形状と触覚がある。口には蟻のそれを思わせる牙があり、横方向に開閉させるように動かしている。これに咬まれると、骨まで食べ尽くされそうだ。
よく見ると、鼻の先端部分に、蛇のような黄色い目が別にある。模様なのか眼球なのかわからない。
背中にはステゴサウルスのような背びれが多数。
全体の印象は、昆虫と爬虫類とを合成したような未知の生物だが、何といっても、全身を包むどす黒く赤い皮膚の色が、そのグロテスクさを倍増させている。
さらに、俊敏な動きと静かに獲物を狙っているかのような雰囲気は、ライオンや虎、カマキリといった自然界のプレデターを彷彿させる。
アラトでなくとも、対峙したくない相手だ。
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