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第五章 義理子先輩の疑惑 その2

5.1 義理子先輩の疑惑 後編


 ひととおり議論を終えたのち、義理子先輩が冷たいジュースをアラトの分だけ用意してくれたので、ゆっくり飲みながら一息ついた。


「ちなみに先輩、女子高生っていったいどうやって戦うんです? あんな怪獣と戦ったら、僕とおんなじで瞬殺ですよ。瞬殺!」


「はい、わたくしの計算では、おそらく『おパンツ作戦』に出るものと思われます」


「なんか、嫌な予感しかしませんが、一応、それは何かうかがいましょう」


「はい、新人さんのように、鼻の下をすぐ伸ばす変態さんには、『おパンツ見せるから、負けて、お願い!』と、ひとこと言えば、『でへへ、仕方ないなぁ、じゃ、そのスカートをめくってもらおうか、げへげへ』なんて答えますから、そうやって負けを受け入れさせる作戦に違いありません」


「……」


「どうかされましたか、新人さん」


「せ、先輩のおパンツを見てしまった以上、何も言い返せませんが……、ただ、相手は怪獣ですよ、変態オヤジではなく」


「あら、男はみな同じってネット情報で学びました。あれはウソだったのですか」


「アレって、ドコの情報やねん! てか、そうでない男性も絶対います! 世の男性に謝ってください! 今すぐ!」


「はい、たいへん申し訳ございませんでした」


 と、深々と頭を下げ、謝罪する超絶美人先輩。


「す、素直でよろしい」


「でも困りましたわ。ネットの情報が間違っていると、せっかくIQ10,000でも意味がありませんわ」


「なんですか、そのIQ10,000て?」


「わたくしのIQですが」


「そんな、数値ありうるんですか?」


「はい、新人さんはIQ3ですから、気に病む必要はありません」


「いや、気に病むわ!」


 冗談ばかりでごまかされるので、別の行動に移そうとアラトは決心した。


 アラトはとある疑惑を抱いていた。この超絶美人先輩に対してだ。その疑惑とは、ズバリ、


『義理子先輩はロボットではないのか?』


 出会った当初、彼女はロボットかもしれないという疑念など全く抱いていなかった。


 彼女からロボットと疑わしい機械音は聞こえてこない。眼球もロボットアニメでよく見る望遠レンズのような動きをしない。呼吸音とか横隔膜の動作とか、観測できる彼女の外観や挙動が人間らしさから逸脱いつだつしていなかった。


 アラトが知る限り、こんなにも精巧なヒューマノイドロボットを製造する技術が、現時点で地球上どこにも存在するはずないのだ。


 世界中で共通する人類の常識だ。


 彼女を謎の怪しい存在と疑い始めてからは、人間あるいは人間に酷似する生物、異星人とか異世界人といった類の何かだと勝手に推測していた。


 しかしある時点から考えが変わった。


 彼女がロボットであるという疑惑に次々と直面したからだ。

 ・感情があるのかないのかわからない無表情と冷たい雰囲気。

 ・突如、フリーズを起こした。

 ・会話が噛み合わないことがある。

 ・抱擁ほうようの力加減があからさまにおかしい。

 ・飲食するところを見たことがない。


 そして最後にもう一つ。


(ひ、非常に申し上げにくいのですが、あなたの、その、お、お、お、おっぱ……、お胸がカチカチなんですぅぅぅー!

 普通はですね、美女に後ろから抱擁されたら、やれふんわりマシュマロ、だの、やれ柔らかい何かが背中に当たって気持ちいいだの、必ずポジティブな感想文が語られるものなんですよねぇー!

 でも、あなたのそれはまったく違ぁーう! 絶対おかしいぃ!)


 ゼェゼェと脳内で声を張り上げ暴れるが、義理子先輩の前では表情を崩さない。


(ぬぉぉぉー、確かめたい……。でも、おっぱい触ったら絶対セクハラでアウトだし、無理! マネキンのように硬かったあのお胸の硬さを再度確認したいだけなのにぃー。

 念のために言いますが、単なる検証ですよ、検証! 決してエロい考えを起こしているわけではありませんのでご注意ください!)


 義理子先輩と応接セットのようなテーブルをはさんでソファーに座っているので、当然手が届かない。はたまた、ガバッと覆い被さったりしたら、間違いなく犯罪者として逮捕されるだろう。


(今日のところはやっぱり無理か……)


 アラトはどうにか問題視されない確認方法を考えるが、普通に無理な話だ。仕方ないので、今日のところは諦める。


(別の方法を考えよう……)


 アラトは渋々退散することにした。


 部屋に戻ったアラトは改めて考える。どうやって検証すればいいのか。


「そういえば……」


 アラトはふと思い出した。


 ホテルの各部屋には廉価版れんかばんのお掃除ロボが常設されているのだ。


 上半身人型下半身車輪の汎用清掃マシン。


  頭部には人間の女性に模したプラスチック製の顔がある。フィギュアのようにべっぴんちゃべっぴんなんだが、決してリアルな造りではない。


 おそらく自動お掃除モードで、部屋に宿泊者がいない時間帯に勝手に掃除しているはずだ。


 アラトは壁の隙間に格納されているお掃除ロボに近寄った。


 全身は小学生くらいのサイズで、メイドのようなデザインになっている。下半身は足元までスカートのような円錐形の形状だが、車輪で移動するので足は無い。


 ホテルの部屋のように段差のない空間でしか活躍できない廉価版だ。


 お掃除ロボの胴体部分を無言で触る。


「そうなんだよ、こんな感じの硬さ。プラスチックのようなマネキンのような」


 お掃除ロボの頭頂部を撫でる。


「ヨシ! 君は今日から『リナコ』だね、クリーナーのリナコ!」


 無反応のリナコ。当たり前だが。


「そうだ、思いついた! お触り無理だからテストしよう! えーと、何だっけ? チューナーテスト? 違う。チューリングテストだ! チューリングテストのテーマを考えるぜぇ!」



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