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第四章 ドラゴンVS恐竜 その4

4.9 ドラゴンVS恐竜 試合模様その三


 金龍は今度こそ勝利したと言わんばかりに、横たわった首無し恐竜の上に着地し、恐竜が絶命したことを確かめる。ピクリともしない肉塊から降りると、雄叫びを繰り返し勝利に酔いしれた。


 金龍が勝利を噛みしめ雄叫びを上げているさなか、あり得ないことが起きた。


 地上に立っている金龍の背後で、首無し恐竜が静かに起き上がったのだ。


 聴覚を失っている金龍はそれに気づいていない。


 恐竜の尻尾の先端がゆっくりと金龍の背後から、左肩へと忍び寄る。


 金龍の左肩は、先程の戦闘で恐竜の角によりうろこがされ負傷している箇所だ。そこへ、トゲトゲの付いた尻尾の先端を勢いよく突き刺す。同時に、金龍を背後から羽交はがい絞めにする首無し恐竜。


 急な出来事に理解が追いつけない金龍。


 暴れて羽交い絞めから逃れようとするが、凄まじいパワーで押さえつけられている。


 トゲ付き尻尾の先端が、熱を帯びたように発光する。先端を突き刺した金龍の肉部分がブルブルと早い周期で振動し震え始めた。肉がゆっくりと溶け、グズグズになっていく様子がうかがえる。


 しばらくすると、絶叫しながら暴れて抵抗していた金龍の両手がダラリと下がり、戦意を失ったように静まり返った。


 両目から生気が失われ、金龍の長い首が垂れ下がる。既に絶命しているのだった。


 金龍の左肩周辺が内部から溶けて、損傷が広がっていく様子が見えた。やがて首元が全て熱で溶け、首から上が地面へと落下した。


 同時に、首無し恐竜が羽交い絞めを止めると、首無し金龍の胴体がドスーンと地面に倒れた。


 首無し恐竜、パルスザウルスは、突然変異により体内でマイクロ波を生成できるようになったわけだが、そのマイクロ波を尻尾の先端から放出できるようだ。


 その尻尾の先端、トゲトゲのある鉄球のような形状の骨の塊を、金龍の傷口から体内へ侵入させることにより、肉体内部から電子レンジの要領で金龍の首を溶かし、絶命させていたということが想像できる。


 金龍の金色の鱗がいかに頑丈で硬くとも、内部から溶かされれば防ぎようがない。


 しかしなぜ、首を失った恐竜が死して動くことができたのか。


 ステゴサウルスのような巨体をもつ恐竜は、その巨大な体躯たいくを無理なく制御するため、2つ脳があるという学説があった。現在では、否定的な意見のほうが支持されている。


 だが、その学説を肯定するかのごとく、パルスザウルスの遺伝子組換えに関わった科学者が2つ目の脳を与えていた。


 そのため、頭部を失っても腹部にある第二の脳が稼働し、さらには、腹部に隠れていた第二の目と口が活性化され、視覚も確保できるのだ。

 その腹部の目の存在で、視界を獲得し行動できた。


 そして、首無し恐竜が想像を絶する次なる行動に移る。

 モニター越しで観戦している多くの出場者がその残虐シーンを目撃し、アラトと同じように気分を悪くしたことだろう。


 首無し恐竜は、もげ落ちた金龍の頭部を拾い上げ、腹部に浮かび上がった新しい口でモシャモシャと食べ始めた。


 休みなくものすごい勢いで口に放り込み、乱暴に咀嚼そしゃくする。頭部を食べ尽くすと、首から下の胴体部分にもガブリと食らいつく。


 金龍の上半身を喰らい尽くした時点で、首無し恐竜は満腹状態にご満悦しているかのごとく、大地に座り込んだ。腹の口から、ゲプッ、と満足げな音が漏れる。


 しばらくジッとしたのち、首の切断面が変化し始める。その切断面がモゾモゾと動き出し徐々に何かが浮き上がってくる。金龍『ハイエスト』の頭部が生え始めたのだ。


 ドラゴンの頭部が首無し恐竜の切断面から誕生したかと思うと、やがて、上半身が金色に変化し、同時に背中から蝙蝠の翼が生えてきた。


 上半身が金色のドラゴン、下半身がパルスザウルスという、新種生物が誕生したのだ。全体のシルエットはむしろドラゴンに近く、背が伸びて細身になったように見える。


 突然変異の恐竜は、食した別の生物の姿と能力を取り込むことができるのか、あるいは、勝ち残った最強のドラゴンが金色に変化するという龍族の魔法によって、2頭のモンスターが合体したとも考えられる。


 この2頭のモンスターの組み合わせが、たまたま奇跡的な合体を可能にしたのかもしれない。


 融合&変身を完了した新しいモンスターは、ドラゴンのものと恐竜のものとを複合したような雄叫びを上げ、翼を使って上昇する。


 新しい合体怪獣の誕生を誇示するかのように、しばらく雄叫びは続いた。


 電磁波恐竜パルスザウルス、合体怪獣と化して第二回戦進出!



 §   §   §



4.10 ドラゴンVS恐竜 試合決着後 アラトの部屋


「なんじゃ、こりゃ!?」


 トイレから戻ってきたアラトは、タイミングよく恐竜がドラゴンの死骸に食らいつくところから、合体怪獣に変貌するまでのシーンを目撃してしまった。

 再びトイレへと駆け戻る。


 トイレへと駆け込んだアラトに向け、義理子先輩が説明を始めた。


「あれはですね、新人さん、パルスザウルスが尻尾の先端から放出されるマイクロ波を使って、ハイエストの肉体を内部から溶かして勝利しました。

 そのあと、パルスザウルスがハイエストを召し上がって、新しい姿になりました。

 聞いています? 新人さん?」


 アラトに返事する余裕はない。


「ついでに、ウンチクを申し上げます。そのまま聞いてください。

 パルスザウルスはハイエストの火炎攻撃をものともしませんでした。おそらくパルスザウルスの分厚い体表には水分が豊富に含まれていて、シワシワの皮膚が放熱性の高い組織、構造になっているでしょう。そのため体内まで熱が届きにくく守られていると考えられます。


 一方で、体内の水分含有率が高いと通電しやすく、雷攻撃のダメージがより大きくなると考えられます。

 ですが、パルスザウルスはなんと言っても、マイクロ波、つまり電磁波を体内で生成することができます。それは体内にマイクロ波を生成する真空管と高電圧変圧器に相当する臓器が存在するという証拠になります。原理は不明ですが。


 そうしますと当然、電気はマイクロ波生成に利用されるわけですから、高電圧ケーブルのような通電性の高い構造の組織と、五臓六腑を守る絶縁性の組織がそれぞれ体内に存在するとしか考えられません。


 そしてハイエストから受けた雷撃を利用し、超高音マイクロ波加熱を発動して、ドラゴンの細胞を内部から溶解させました。まるでチーズを溶かすかのように。

 雷撃を発生させるドラゴンに匹敵する、電気の扱いをもっとも得意とする生物だということがわかります。


 ご理解いただきましたか、新人さん。新人さん? 聞いてます? わたくしのドヤ顔みてほしいのですが」



【ポイント評価のお願い】

 数ある作品群から選んでいただき、そして継続して読んでいただいていることに、心から感謝申し上げます。

 誠に図々しいお願いとなりますが、お手間でなければ、ポイント評価をお願い申し上げます。

 どうも有難うございました。


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